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【3つのお題に空想のひらめきを第50回】春を待つ猫.消えかけた魔法.しゃべる木|ショートショート


タイトル:春を待つ猫と半分の魔法

森のはずれに、しゃべる木がいた。

枝は古く、
幹には小さな扉。

風が吹くたび、葉っぱが言葉になる。

「今日は東風」
「午後は昼寝向き」
「春はまだ遠い」

森のみんなは、
困ったことがあると木に相談した。

でも、最近その木は元気がない。

声が時々途切れる。

葉も少し色褪せている。

原因は明白だった。

森を守っていた魔法が、
少しずつ消えかけていたのだ。

冬が終わらない。

朝は冷たい。

花は眠ったまま。

そんな森に、一匹の猫がいた。

春を待つ猫

白い毛並み。

名前はまだない。

猫は毎日、しゃべる木の根元へ来ていた。

何をするでもない。

ただ座る。

ある日、木が聞いた。

「なぜ待つ」

猫は伸びをして答える。

「春になったらやりたいことがある」

木は笑う。

葉が小さく揺れる。

「何をする」

猫は少し考えて言った。

「……アンドーナッツを食べる」

木は沈黙した。

魔法が消える世界で、
願いがそれか。

でも猫は真剣だった。

「春のアンドーナッツは、少しあったかい」

木は何も言わなかった。

次の日。

木は最後の消えかけた魔法を使った。

葉が光る。

枝が揺れる。

すると、幹の小さな扉が開いた。

中には紙袋。

まだ温かい。

アンドーナッツがひとつ入っていた。

猫は目を丸くする。

ひと口食べる。

甘い。

少し春の味がする。

その瞬間。

遠くで、雪が溶けた。

花がひとつ咲く。

風が変わる。

木は静かに言った。

「大きな魔法は世界を変える」

葉が舞う。

「小さな魔法は、季節を呼ぶ」

猫は残り半分を木の根元へ置いた。

次の日。

森に春が来た。

しゃべる木は、もう話さなかった。

でも春風が吹くたび、
枝が少しだけ揺れる。

まるで誰かが笑っているみたいに。


おしまい


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