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【せりふ三題噺】ねぎ多めで|牛丼.金髪.デッキ|ショートショート


タイトル:備長炭ドラゴンと深夜デッキ

ねぎ多めで

金髪の青年は、
深夜の牛丼屋でそう言った。

店員は無言でうなずく。

その瞬間、
カウンターの奥で小さな火花が散った。

じゅっ、と。

備長炭が赤く脈打つ。

この街では、
炭火には精霊が宿る。

特に百年物の備長炭には、
古い竜の魂が眠っていると言われていた。

青年は、牛丼を待ちながら、
カードデッキを机に並べる。

黒いカード。
銀の縁。

描かれているのは、
炎を吐く炭竜たち。

「また負けたの?」

向かいの席の少女が笑う。

「うるせぇ」

青年は頬杖をつく。

デッキバトル。

この世界では、
魂の温度でカードが発動する。

迷いがあれば火は弱くなり、
覚悟があれば竜が目を覚ます。

でも最近、
青年の炎はうまく燃えなかった。

「足りないんだよ」

店の奥から、
店主が言う。

白髪の老人だった。

「……何が?」

「腹と、気持ち」

どん、と牛丼が置かれる。

湯気。
甘辛い香り。
山盛りのねぎ。

青年は箸を取る。

ひと口食べた瞬間、
胸の奥が熱くなる。

備長炭が、ぼうっと鳴いた。

デッキのカードが、
かすかに光る。

「……マジか」

青年がつぶやく。

カードの中の炭竜が、
ゆっくり目を開けていた。

店主は笑う。

「空っぽじゃ、火は灯らねぇよ」

深夜二時。

牛丼屋の窓の外では、
静かな雨が降っている。

でも店の中だけは、
小さな炎みたいに温かかった。

金髪の青年は、
もう一度箸を持つ。

今度は少しだけ、
前を向いた顔で。



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