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koichiakamine
【3つのお題に空想のひらめきを第41回】ひつじ雲ホテル.月うさぎのパン屋.記憶ときらめく風の通り道|ショートショート
タイトル:風の通り道で会いましょう
空の高いところに、
ひつじ雲ホテルが浮かんでいる。
ふわふわの廊下を抜けると、
記憶ときらめく風の通り道につながる。
そこでは、過去も未来も、
光の粒みたいに漂っていた。
「いらっしゃい」
角を曲がると、
月うさぎのパン屋がある。
焼きたてのパンは、
ひとくち食べると、忘れていた記憶がふわりと蘇る。
「どれにする?」
そう聞かれて、
私は少し迷った。
戻りたい記憶は、いくつもある。
でも、全部は持っていけない。
だから私は、小さなパンをひとつ選んだ。
それをポケットに入れて、
通り道の先へ進む。
そこは、透明な海だった。
空なのに、海。
私は深呼吸をして、
そのままダイビングする。
身体がふわりと沈むと、
光の粒がはじけて、音に変わる。
気づけばそこは、
コンサートホールだった。
誰もいないのに、
音だけが満ちている。
風が運んできた記憶が、
音楽になって響いていた。
私はポケットのパンを取り出す。
ひとくちかじると、
胸の奥に、小さな光が灯る。
もう戻れないけれど、
消えたわけじゃない。
風の通り道は、
いつでもここにある。
そう思えたとき、
音楽はやさしく終わった。
また来よう、とつぶやく。
ひつじ雲ホテルは、
きっと今日も、空のどこかで待っている。
おしまい

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