推し事|おぼろ、oboro、そして朧。
愛しの「おぼろ」が手元に届いてからというもの、日がな一日時間が許す限りおぼろ沼に浸かっている。それはもうずぶずぶである。
晴れた朝には共に出陣する戦友のように。
長い夜には沈んだ心を癒す薬のように。
その時々で姿形を変えながら、おぼろは心の中にしっかりと沁み込んでいる。
このままおぼろと心中したって構わない。
そんな戯言を吐いてしまうほどに、おぼろはもはや自分になくてはならない存在である。
全11曲の物語は様々な角度から心を揺さぶる。
ずっと一人で聴き続けていると想いが溢れ出して気が狂いそうなので、一旦今の率直な感想を手短にここに書き留めさせていただきたい。
本多哲郎「おぼろ」
1.サーカス
この曲が1曲目でよかったなと思える躍動感のある曲。サビではつい身体が揺れ出してしまいそうになるが、サーカスに準えたかのような歌詞の内容は意外と現実的。そのギャップが上手く混ざり合っていて、聴き手の心を鼓舞してくれる。
1日の始まりはこの曲で決まり。
2.ゆらゆら風の花
初めてライブ配信で曲の一部を聴いた時に、なんて微笑ましくて木洩れ日のように温かい曲なんだろうと思った。歌詞の書き方が男女視点で分かれていて、それがよりこちらの想像力を掻き立てる。「お風呂で詰め替え少しこぼして 水面に映ったあなたを呼ぶの」の部分が可愛くて、恋してるとこんな感じになるなる!とほっこりしながら聴き入った。恋をしたくなってしまう。
3.路地裏カレーTiki
こんなにカレーが食べたくなる歌はなかなかない。スウィング調のリズムに乗ってスキップするように歌う哲ちゃんの歌い方が印象的。声の低さもどストライクである。「悩みは幸せの途中さ」というフレーズが心をふっと軽くしてくれる。
そういえば昔新宿でバイトしていた頃に、斜向かいのカレー屋さんで働く哲ちゃん似の青年に淡い恋心を抱いていたなぁと、ふと思い出した。
ついご機嫌に口ずさんでしまう1曲。
4.日々のたもと
暮らしの中の至る所に残る去って行った人の面影が切なく響く曲。自分も似たようなほろ苦い経験あるなぁと、鳩尾の奥あたりがキュッとするのを感じながら聴いた。哲ちゃんの囁くような優しい歌い方が、受け止めざるを得ない現実を連れて静かに前に進んでいく背中をそっと押してくれる。
5.新聞紙の望遠鏡
自分の中の少年が駆け出す1曲。小学生時代にタイムスリップした気分で、歌詞が描く風景を眺めながら聴いた。歌詞もさることながら、幼い日々の青空がどこまでも広がっていくような伸びやかなメロディとまっすぐな歌声が懐かしさを誘う。
6.弓張月の雫
おぼろの収録曲の一覧が発表された時に、タイトルを見て一番楽しみにしていた曲である。歌詞もメロディも歌声もすべてが綺麗で、期待値をぐっと超えてきた絵画のように美しい1曲。田舎に帰った時に夜空を見上げながら聴いてみたいと思った。たぶん泣く。
7.消えちまえ神様
おぼろの中でもかなり尖った部類の曲だなと思った。バラードの鬼が時たま見せるこういう表情が私は大好物である。世の中の理不尽さとかやるせなさみたいなのをぶつけつつも、疾走感のあるメロディに乗せて昇華させているのはさすがだなと思う。本当に神様がいるんだったらとっとと出てきて何とかしてよ…と思うことだらけのご時世なので、モヤモヤしている時にもおすすめな曲。
8.カントリー カントリー
イントロから心を鷲掴みにされた1曲。なぜだろう。路上生活者の歌なのに、自分の遠い故郷が手招きしているような錯覚に陥る。歌詞の端々に置かれた言葉が、メロディが、心の奥に仕舞ってある郷愁を引きずり出し、気がつくと視界が滲んでいた。僭越ながら順位をつけさせていただくとするならば、現時点ではカントリーカントリーが個人的に最も心を打たれた曲である。
9.春が咲いたら
人間以外の家族を失ったことがある人はその記憶とシンクロして涙なしには聴けないだろう。自分も例に漏れず、亡くした愛犬との日々を思い出し涙。思い出の中の春が哲ちゃんの優しい歌声に乗って色鮮やかに咲く。虹の橋のたもとに行く時はこの曲を携えて行くと決めている。
10.レモネード
前々からこの曲が始まると空気がガラリと変わるなと感じていた。シンプルな歌詞でありながらも、優しさと温かさが凝縮された1曲。レモネードという言葉のチョイスがまた濃いめの甘酸っぱさを連れてくるものだからやたらとキュンとする。氷が溶けることなく永遠に続いてほしい景色。
11.ハミングバード
壮大で美しくてほんのり切なさも滲む曲。配信などでも何度か聴いたことがあったが、改めて歌詞を読んでみると「キミ」「君」「あなた」など、何人かの登場人物が出てくるのが気になった。このあたりは詳しくご本人の解説も聞いてみたい。アルバムのラストを飾るのにふさわしい曲でもあり、聴き終えた頃には心の靄がすーっと溶けて行き晴れやかな気持ちになる。
全く手短にはならなかったけれど、おぼろに対する今の自分の感想は以上。
歌詞とメロディの多様さと声色の使い分け方が絶妙で、聴くたびに新しい気づきがある一枚。
そして唄人羽が生み出す曲の寄り添い方とはまた違う、優しさと温かさと力強さが同居した、本多哲郎ならではの世界だなと思った。
お見事である。
哲ちゃんが撮った写真で出来たポストカードタイプの歌詞カードもすごく素敵で、それを眺めながら曲を聴くのもまた贅沢な時間である。
部屋に飾りたいけど、そうするとあと3枚くらいアルバム買わないといけない。豪遊するか。
自分のような新参者でさえ待ち遠しかったソロアルバムなので、長年待たれていたファンの方々はきっと言葉に出来ないほど嬉しかっただろうなとか、この一年の哲ちゃんの努力を想像すると本当によく頑張ったんだろうなとか、色々考えるととても感慨深かった。もちろん、まっさらな気持ちで踏み込む本多ワールドもとても素晴らしいので、是非ともたくさんの方に聴いてほしい。
ソロツアーもスタートし、自分がライブに参加できるのはまだまだ先にもかかわらず、早くもソワソワしている。「睡蓮と花火」の時もそうだったが、やはりCDと生歌・生演奏のギャップがすごく良くて、その曲ごとに新たな一面に触れられるのが快感なので、お近くの方は是非ライブに行って肌で感じてみてほしいなと思う。
あぁ、早くライブに行きたい。
生で聴けるその日までおぼろと共に待ち続ける。
