短編小説「パリピ女と園児」
「よっしゃー! 今日もアゲてくぞー!」
金髪ギャルの二十歳、星野レイナは、昨夜オールでクラブにいたとは思えないテンションで街を歩いていた。
しかし、その五分後。
「え、マジ? 財布ない!」
財布もスマホも落としたレイナは、公園のベンチで頭を抱えていた。
「おねえちゃん、泣いてるの?」
声をかけてきたのは、黄色い帽子をかぶった幼稚園児。
「泣いてないし! ギャルはアイラインだけじゃなくメンタルも強いし!」
「でも、目がうるうるだよ?」
「それは昨日カラコンつけたまま寝たから!」
男の子は首をかしげた。
「へんなおねえちゃん。」
「初対面でそれ言う?」
男の子は胸を張る。
「ぼく、ゆうと! ごさい!」
「レイナ! 二十歳!」
「にじゅっさいって、おとな?」
「一応ね。」
「じゃあ、おかし、かって。」
「財布ないって言ったじゃん!」
その瞬間だった。
「ママー!」
ゆうとが知らない女性に向かって走り出した。
「どちら様?」
「え?」
「え?」
気まずい空気。
レイナは思わず吹き出した。
「アハハハ! 人違いじゃん!」
ゆうとは真顔で言う。
「ママじゃないのわかってたもん!おどろかせたかっただけ」
そんな返答に
「なに強がってるの笑」
とさらに笑い出すレイナ。
今度はハトの群れが飛び立ち、ゆうとが追いかける。
「まてー!」
「待ちなさい!」
レイナも全力ダッシュ。
その途中で滑って転び、花壇に突っ込む。
「いったぁ!」
「おねえちゃん、ざこ。」
「幼稚園児に煽られた!」
やっとゆうとを捕まえた頃には、二人とも汗だくだった。
そこへ本物のお母さんが血相を変えて駆け寄ってくる。
「ゆうとー!」
「ママ!」
「どこ行ってたの!」
「パリピのおねえちゃんとあそんでた!」
レイナは苦笑いした。
「いやー、なんか成り行きで。」
母親は深々と頭を下げる。
「本当にありがとうございました。」
「全然! めっちゃ疲れたけど、超面白かったし!」
ゆうとは別れ際に小さく手を振った。
「またあそぼ!」
「おう! でも今度は迷子にならないでね!」
「うん! たぶん!」
「“たぶん”が一番信用できない!」
夕焼けの公園に、レイナのツッコミが響いた。
