もみの木のてっぺんの星|掌編小説
少年は、たったひとりで湖のほとりにある小屋に住んでいました。森の奥深くにあるその家には、誰にも近寄りません。なぜなら、夜に通りかかると、その湖の上で白い幽霊が踊る、と人々に恐れられていたから。
とある冬の夜。
湖は凍りつき、夜空を抱いているかのよう。
少年はその湖面の上に、そっと足を滑らせて踊ります。幼い頃から好きだったバレエ。けど今は…星の海を駆けていく白いその姿は、美しい一羽の白鳥のようでした。煌めく星々が音のない旋律を奏でます。いつまでも、いつまでも踊っていたい。
その時です。
森の木々の向こうに、小さな人影が見えました。少年が踊りをやめて近づくと、それは同じ年くらいの少女でした。少女は頬を真っ赤に染め、白い息を吐きながら震えています。
また、怖がらせてしまっただろうか…
少年はくるりと身を翻して帰ろうとします。
「待って!」
振り向くと、彼女はゆっくりと近づいてきました。少年はビクッとして一歩後退りをします。だって、今まで誰も近づいてくれるひとなんていなかったから。
「…いまの、なに?」
「白鳥の湖。ジークフリートがオデットに出会うところ」
少年はそう言い捨てると、顔をくしゃくしゃにして背を向け、一目散に家に駆けて行きます。まさか、まさか、人に見られてしまうなんて。どうして?誰も来ないはずだったのに..
少年は家のそばにあるもみの木に、ひとつ飾りを掛け、家に入ります。踊るたびに飾りをひとつ。すべて飾ったらきっとクリスマスプレゼントがもらえる。そう昔、お父さんに教えてもらったから。
次の日の夜。
月の光が湖面に降り注ぎ、銀色に光りだす頃、少年は今日も白い服を着て夜空を舞います。
頬を切る冷たい空気が、満天の星たちが、僕に何かを囁く。僕はここでならどこまでも飛べる。なんだか、僕は僕じゃないものにさえなれる気がするんだ…
ふと気づくと、あの少女が茂みの陰からこちらを見ていました。少女が手を振り、少年は吸い寄せられるように近づきます。
「これ、よかったら…」
少女は少年に籠を渡すと、くるりと背を向けて走り去ります。少年はそれを持って家に帰りました。
籠の中には、まだ焼きたての香りがするパンと、クリスマスオーナメント。少年はそれを丁寧にもみの木に飾ります。そんなやりとりを数日続けたある日、もみの木はオーナメントでいっぱいになりました。
その夜、森の湖の上に本物の星が舞い降りて銀の海となりました。月の奏でるセレナーデを浴びながら、少年は少女の手を取って踊ります。少年の家のもみの木のてっぺんで、本物の星がふたりを照らしていました。

《1060字》
|ω・)ドキドキ..
クリスマスは…
クリスマスだけは、ハズせません…!
というわけで、クリスマスにひょっこり帰還です(`・ω・´)ノ
みわさん、歩行者bさん、素敵なアドベント企画ありがとうございます💫よろしくお願いします♫
留守の間、人知れずこんなお話を書いてました。noteでお知らせしてないから、星つながりで置いときます。
なかなか進んでないけど、次の話も書いてます。このショートストーリーは、その舞台でもあります。
