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前世|詩

ー夢を見たんだ。


夢の中で、私は木だった。


人間など決して足を踏み入れないような、
とても静かな森の中で、私は一本の大樹だった。


陽の光が当たれば、枝をそよがせ
小鳥が肩に止まれば、葉で木陰をつくる
風が通りかかれば、森の香りを吹きかける

ただそこにいるだけで
命のすべてが成り立つ世界



なにもかも明るく照らす太陽よりも、
私は月が好きだった。


わけなく泣きたい衝動に駆られるときも
何かを表したいのに手足がぴくとも動かない時も
月は、闇を闇のままで受け入れてくれた


そんな月が好きだった。


あるとき、月がいなくなった。


私は星空を見上げて、
思いきり手を、枝を伸ばして、葉を揺らした。

すぐそこに見えるのに
届かない
届かない
どうして私は木なのだろう
どうしてここから一歩も動けぬのだろう


あんなにそばにある星ひとつ
つかむことさえできないなんて
あんなに好きだった月ひとつ
触れることさえできないなんて

私は動かなかった
いや動けなかった
だから、じっと待っていた
彼がまた姿を現すことを

何度目かの秋時雨に打たれ
葉が赤く色を染まりだすと
彼は姿を現した

つるんとしたまんまるの月
優しい光がゆらゆらと夜を包む

綺麗だな…

私はつぶやく

私はいつか
こんなにも美しい夜を
忘れてしまうのだろうか

だって、

🌙


そこで夢は終わる。

人間の私はカーテンを開けて、
すこし欠けた月を見つける。


ああ、ずっとそこにいたんだ


私はなんだか苦しくなって
ことばにならない衝動が抑えられず
声を上げて泣いた
涙が一粒ずつ頬をつたい
月がゆらゆら揺らめいた
まるで、水の中にいるかのように


そうだ。


私はまた思い出す。


月の光が差し込む海の
ずっとずっと底のほうで
私は昔小さな魚だったことを




昨日こちらの朗読に刺激されました
「前世」のテーマをお借りしました

朗読で、すべての歌がひとつの物語になる
そんなLIVEです

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