月と春|短編小説
とある星明かりの夜、一匹の猫が小さな月を拾いました。

「あれれ、こんなところに、お月さま?」
猫は思わず空を見上げます。
そこにはいつもの月の姿はありません。
「どうしたの?お空から落ちちゃったの?」
月はしくしくと泣き出しました。
「わたし、お月さまっていう名前なの?」
どうやら月は、自分の名前を忘れてしまったようでした。
「こんなに綺麗で、まんまるで、ぴかぴかしてて、あなたはきっとお月さまに違いないわ。だけど…」
猫は辺りを見回して、首をかしげました。
ここには夜空まで届くようなハシゴも、空まで乗せて飛んでくれるような鳥さんもいないようです。
猫は、小さな月を籠に入れると高いところを目指しました。もっと、もっと、あの空まで届くところまで。けれど、どの屋根に登っても、どの山まで駆け上っても、猫の体ではあの空まで届きません。
駆け回った猫はくたくたになって、近くのベンチに腰を下ろしました。そこは、星降る広場と名付けれられた、空一面に星空が見渡せる大きな公園。
ふぅ、とため息をつくと、籠の中の小さな月もやっぱり、ふぅ、とため息をつきます。二人は顔を見合わせて笑いました。
「猫さん、ごめんなさい。わたしなんかのために、こんなに駆けずり回って疲れさせてしまって。あとは自分でなんとかするので、どうぞ家に帰って休んでください」
「だめだよ、まだお月さまのおうち、見つけてないもん」
どこか寂しそうな月に、猫もちょっぴり悲しくなりました。でも、でも、もうすぐ夜が明けてしまう。そうしたら、お月さまは帰れなくなっちゃうのかな…
「泣かないでください」
「ま、まだ泣いてないよ」
月がふわりと浮かんで、猫の真ん前に立ちます。
「あれ、お月さま、浮かんでるよ?」
「あれれ、ほんとうだ」
月はくるくると回りだし、猫は尻尾をぶんぶん振り回ります。よかった、これで帰れるね。でも…
「今度こそ、泣かないでくださいね」
「な、泣いてないかないもん。それより、お別れなら、ひとつ欲しいものがあるんだ」
「私があげられるものなら」
「私、名前がないの。だからお月さまが付けてくれたらうれしい」
猫はそういうと、月に向かってにっこり微笑みます。
「わかりました。では、小春、はどうでしょう。あなたのそばにいるとあたたかくて、春のようでした」
「うん、素敵だね。ありがとう、お月さま」
こうして月は空に帰り、小春は夜になるといつも空を見上げるようになりました。
見上げればいつでも会えるから。
私に名付けてくれたあなたがいれば、私は私でいられるから。
小春の胸は月を見上げるたびにぽかぽかとやさしい気持ちになれるのでした。
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月と猫ときたら、書かないわけにはいきません(`・ω・´)ゞ✨ よろしくお願いいたします🐈♫
