第15話 「肩に舞い降りた再会」
私の指が奥様の冷え切った足裏、ちょうど「腎臓」の反射区に深く沈み込んだその時、彼女の肩が小さく震えた。
「ご主人が亡くなられてから、不思議なことが続いたと仰っていましたね」
私の静かな問いかけに、堰を切ったように彼女の目から大粒の涙が溢れ出した。
それはカリフォルニアから運んできた、何十年分もの孤独と郷愁が溶け出したかのようだった。
「ええ……主人がね、いつもテラスで肩に小鳥を乗せて笑っていたの。あの人が逝ってから一度も見かけなかったその鳥が、日本へ発つ日の朝、突然私の肩に舞い降りてきたのよ」
奥様の声は震えていたが、
その瞳には確かな温もりが宿り始めていた。
足裏に感じていた石のような硬結が、
掌の中でゆっくりと、柔らかい体温へと変わっていく。
一万キロを旅してきた彼女の足は故郷の土を踏み、
私の指先を通してようやく「安らぎ」を思い出したのだ。
「ご主人が、奥様を沖縄へ連れて帰ってきてくれたのかもしれませんね」
私の言葉に彼女は深く頷き、溢れる涙を拭おうともせず微笑んだ。
冷え切っていた足先は、
施術を終える頃には桜色に染まり、
差し出したハーブティーの湯気が彼女の表情を優しく包み込んでいた。
(第16話へ続く)
