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息子の一大決心から学んだこと

「おれ、先行くね」

そう言って小5の姉より先に家を出ようとした小2の息子。この日の娘は風邪気味で朝からダルそうで、支度もスローペース。順調に準備を進めた息子の方が先に家を出る支度が整った。

いつもなら、姉の準備を待って一緒に家を出る息子だけど、この日は先に行くと言ったので驚いた。

「もうすぐ〇〇も準備できるけど、風邪気味だし車で送るから一緒に行こう」と、言ったら、「いや、おれはいい…」と息子は返した。正直、ここでも驚いた。いつもなら、「やったー!!」って喜ぶのに…。



息子は小さい頃から慎重で、新しい環境に慣れるまでかなりの時間が必要。毎日のルーティンは崩したくないタイプで、イレギュラーなことがあると、すぐには受け入れられない。予定は把握しておきたい方で、いつも確認してくる。毎日のペースを大事にしているから、急に友達から遊びのお誘いを受けると迷ってしまうことがある。

そんな息子が産まれたときから、3歳上の娘はいつも息子を気にかけてくれていた。特に息子が小学校に入ったときは、登校から面倒を見てくれていたので、親としても助かった。きっと息子も心強かっただろう。

入学してから毎日姉と登校しているから、姉が休んだ時は通学路が別の近所に住む従兄弟と行ったり、私が近くまで送るなどしていたから、家から1人で行くことは今まで一度もなかった。

登校にも慣れた1年生の終盤、息子がなかなか起きれず、準備が遅れて、友達と待ち合わせている姉に「ゆっくり進んでるね」と言われた時、息子の顔がフッと曇った。いつもなら待っていてくれるのに、先に行くと言われたもんだから、ちょっとむつけていた。何も返事をしない息子に「大丈夫、ゆっくり進むって言ってくれてるから」と声をかけた。いそいそと歯磨きを済ませ、移動ポーチを付けて、帽子を被り、ランドセルを背負って、水筒を肩にかけた。

靴に踵を仕舞い込む前に、勢いよく玄関の扉を開けて、こちらを振り返ることも忘れて、「いってきます!」と、走って家を出た。気になった私は息子を追いかけ、道路まで出て様子を見ていた。視線の先には娘が友達と緩やかな坂を登り切って右に曲がるところだった。

息子は、小さな体に乗った重たいランドセルをカチャカチャ鳴らしながら、必死で姉を追いかける。決して、体力がある方じゃない。むしろ、走るのは苦手だ。途中で何度か後ろを振り返って、こっちに向かって大きく手を振る。私も両手をブンブン振って応える。「がんばれ…!」思わず口に出た。もう目の前に姉の姿はない。必死で姉に追いつこうとする息子の姿は、3歳年上の姉を超えたいって言っているようにも見えた。


いつも、息子の側には娘がいてくれた。そんな息子が、とうとう姉より先に家を出るという選択をした。…にも関わらず、姉の体調不良を理由に車で送るという提案を、私はしてしまったのだ。息子は「大丈夫」と言って先に家を出た。体調を心配して近くまで送るよと娘に言ったけど、「大丈夫そうだから朝は歩いて行ける」と返ってきた。

玄関から見送ると、娘の足がいつもより足早だった。いつも自分の後をついてくる弟が、初めて先に家を出ると言ったことに、娘も驚いたんだと思う。足早な理由はたぶん、弟を気にかけたからだ。

子どもたちが出払ったあと、残りの洗い物に取り掛かると、なんだか心にモヤがかかっていることに気付く。「1人で先に行く」と言った息子の顔が、不安そうで少し自信がなさそうな、本心じゃない気がしたから。それに気づいたから「一緒に乗って行く?」と提案したのだ。でも、返ってきた答えはNO。

何度言っても、NOと言う息子はきっと、初めて決断したことを貫きたかったのかもしれない。不安そうに見えた表情の裏には固い決意があったのだ。

モヤモヤした理由は、息子の決断を素直に応援できなかったからだ。たぶん息子にも伝わってしまった。いつもなら振り返って手を振るのに、この日は下を向いて足早に前へ進んでいたから。

小さい頃から1人でテキパキとこなす娘とは真逆で、周りに頼ることが多い息子に、必要以上に手を貸してしまっていたのだと気付く。

息子が生まれてから、娘には早く1人でなんでもできるようになってほしいと、勝手に願い、息子に対しては、この子が最後の子だからと、自分都合で勝手に子育てを噛み締めるような感覚を持ってしまっていた。

完全に、矢印が自分にしか向いていなかった。

息子が「先に行くね」と言ったとき、心配することよりも、笑顔で送り出してあげればよかった。1人で行くと決めたその勇気を「すごいね!!」って認めてあげればよかった。

子ども成長は嬉しい。母乳を卒業し、ハイハイを卒業し、抱っこを卒業して、泣いて意思を伝えることを卒業してきた。“小さな卒業”を積み重ねて、1人で何でもできるようになってきた子どもたちが、自分の手から離れていく実感が湧いたら、急に寂しくなったのだ。

息子の勇気も、姉を頼らないという小さな卒業だった。


子どもの手が掛からなくなったら楽だろうな〜、なんてお気楽に考えていたけど、その時がくるのはそう遠くないと感じたら、子育てが終わったら自分に残るものは何だろう、と考えることが増えた。先のことをあれこれ考えてもどうしようもないことはわかってるけどね。

反抗期に片足を突っ込み始めた娘も、最近ちょっとカッコつけて強がるようになった息子も、いつか私たちの手から離れる。帰る家がこの家じゃなくなるときが来る。

それでもここはあなたたちの家だと伝えたい。うまくいかない時も、不安な時も、ここに帰ってくれば、なんか大丈夫な気がするって思える場でありたい。

大体のことを経験してきた私が子どもにしてあげられるのは、あったかいご飯を作ること、フカフカの布団を用意すること、子どもの話を聞いてあげるくらいかもしれない。立派なお母さんではないけど、子どもの好きなものくらいは作れるし、子どもの話を聞くのは大好きだから。

今からでも遅くない。ここから先は子どもの小さな卒業にワクワクして、大人になるその時を一番近くで見ていたい。

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