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自分のために五穀米を炊く。

家族と暮らしている今、自分一人のためにごはんを炊くなんてことはめったにない。朝はパン派の子どもたち、朝食を摂らずに出社する夫、ごはん派の私。家族のスタイルがバラバラな中で、せめて自分が望む朝ごはんを食べたいと思うから、冷凍しておいたごはんをチンして食べる。とりあえず。

ごはんを多めに炊いて冷凍しておくこと自体は、どこの家庭でもあるだろう。我が家もずっとそうしてきた。なんなら今でもそうしている。でも、チンしたあとのべちゃっとした食感がどうしても好きになれなかった。だから、朝ごはんは空腹を満たす、1日の始まりのエネルギーチャージのためだけが目的になっていた。

今の家に引っ越してきて、「朝もおいしいごはんが食べたい」と思うようになった。当時35歳。だんだんと食に対しての意識が変わり始めたころだ。そこで、導入したのが「おひつ」。陶器製で2合分のごはんが入り、お米の水分量を調節してくれて、冷えたごはんも美味しく食べれる優れもの。レンジで温めたら炊きたてのようなふっくらしたごはんになるから、あのべちゃべちゃ感とはしばらく無縁だ。

おひつを迎えたことによって、我が家で冷凍ごはんの出番は大きく減った。毎日、夕飯のときに3合を炊き、2合をおひつに移す。帰りが遅い夫の夕飯は、そのおひつからごはんをよそう。おひつのおかげで水分量が調節されたごはんは夫にも好評。今だに部活帰りの高校生並の量を食べる。(嬉しいことだけど、年齢的にも食べる時間的にも、もう少し加減してほしいものだけど…)

家族全員の夕食が終わったときには、おひつの中には1合くらいのごはんが残っている。その残りは、翌日の私の朝ごはんになる。おひつのままレンジで温めれば、ふっくら炊きたてのようなごはんを味わうことができるようになった。


今年は、40歳になる節目の年で、最近は健康面もだいぶ気にするようになった。39歳を迎えた頃から、少し先を生きる人生の先輩方の音声配信をよく聞くようになった。40代からの健康・美容・暮らし・仕事のことが知りたくて。以前なら、収納とかインテリアとか、子育てグッズとかが知りたいことのメインだったのに、ここ1年くらいはすっかり、これからの自分の生き方に繋がるような発信を追うようになった。

ヨガを始めたのも、ムーンクリアリングを始めたのも、すべて自分のため。子どもが産まれてからは、ほぼ9割が家族のための行動だったけど、1日、1ヶ月、半年、1年…と年月を重ねるごとに、ちょっとずつ、ちょっとずつ、子どもが私たちの手から離れるようになった。そうしたら、自分に目が向くようになった。40代を目の前にしたとき、母として・妻としてではない、一人の女性としてどう生きたいかと考えるようになった。

家事がしやすい・動きやすい服装から、自分の好みのおしゃれも楽しみたいし、健康維持のために体のメンテナンスもしたい。自分が食べたいと思うものを食べたい。これまでそうできなかったのは、決して家族のせいではなく、家族を優先にしてきた自分の選択だ

子どもや夫が喜ぶことはこれからも続けていく。プラスして、ここからは自分も喜ぶこともしていきたい。その手始めにやったことが、五穀米を炊くことだった。忙しい毎日の中で、ほんの少しでも体にいいものを摂りたいと思ったのはいいけど、当然家族は白米推しだ。大好きなおかずが出た日には、3合炊いたごはんはあっという間に消える。それくらい夫も子どもも白米好き。五穀米を炊く隙もない。(笑)

いつか炊こうとしていた五穀米が、ずっと収納の中でその時が来るのを待っていた。



「今炊こう!」

午前中に買い出しから帰ってきて、食材を冷蔵庫に入れているときにふと思いついた。早炊きにすれば、30分くらいで炊ける。食材を片付けて、なんやかんやしていたらお昼に食べられる!

いそいそと米を2合研ぎ、五穀米を混ぜ込んで炊飯器のスイッチを押す。表示された炊きあがりの時間は35分後。買い物袋の中に入っている食材たちを所定の位置に片付けて、先日息子の胃腸炎でサヨナラした敷パッドの代替品を新調したから、今のうちに水通ししよう。今日は暑いからすぐ乾くはず。

あれこれ動いている間に、炊飯器の音が響き、ごはんの香りが漂い始めた。日中の、誰もいない時間に炊飯器の稼働…。なんとも不思議な光景。でも、ワクワクが止まらなかった。自分のために五穀米を炊くことを、人生で初めて実行しているのだから。


食材をしまい込んだあと、新調した敷パッドをバルコニーに干し、炊きあがり時間をチラチラ見ながら、お昼の準備をする。前日多めに作った冷しゃぶサラダ、自家製のかぶの浅漬けが冷蔵庫にある。1泊2日の野外活動に出発する娘のお弁当を作るときに、一緒に用意した卵のかきたまスープもあった。ここに炊きたての五穀米。十分すぎるお昼ごはんだ。

冷しゃぶサラダにドレッシングをちょっと回しかけ、保存袋に入ったかぶの浅漬けを小鉢に盛り、かきたまスープを温め直す。そうしている間に炊飯器の音が鳴った。パカっと炊飯器を開けると真っ白い湯気と共に、うっすらピンク色に染まった五穀米がお目見え。綺麗に炊けている。しゃもじでさくっとすくい上げ、蒸気を逃がす。見るからにもっちりした五穀米を自分の茶碗に盛ると、なんとも言えない幸福感でいっぱいになった。

炊きたくても炊こうとしなかった。自分だけのために炊くなんて贅沢な気がして。いつか…いつか…炊けるときがあるだろう。そんな風に思っていたけど、炊いた試しがなかった。

自分のために炊いたっていいじゃないか。だって自分が食べたいんだもの。自分に許可を出したらワクワクして、嬉しくて、心が満たされた。炊きたての五穀米と同じくらい自分の心もホカホカした。


自分のために五穀米を炊くという、小さくも大きな一歩に踏み切った私の次なる目標は、五穀米専用のおひつを買うこと。(笑)おひつは現時点で白米専用だ。残念ながら、最初に炊いた2合分の五穀米は、ラップに包まれて冷凍庫で眠っている。明日の朝、この五穀米をチンしたら、どんな状態かはなんとなく想像はつく。

でも今のところ、五穀米を食べれるってだけで気分はまずまず。あとは、今後どのタイミングで五穀米を炊くか、炊いたあとの五穀米をいかにおいしく保ち、食べるかが課題。もはやその課題を解決するためにあれこれ考えることも、楽しくて仕方ない。

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