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私のすぐそばにいる、ライターの話

カバンの中身は大体いつも同じだ。

財布、スマホ、タバコ、そしてライター。
当たり前のような顔をして、今日も私に連れまわされている。

ライターの仕事より長くお世話になっているのが、火をつけるライターだ。

喫煙歴2〇年。もはや相棒といっても差し支えない。「なくした!」と思ったら、引き出しの奥や服のポケットからひょっこり出てきたりする、不思議な存在。

大学時代、「ライター貸して」は、あいさつみたいなものだった。おはようの後には、その言葉が飛び交っていた。

当時の私たちにとって、たばこは携帯の次にかかせないもの。「500円あったらたばこ?めし?」「たばこっしょ」そんな会話も、していたような気がする。

火を借りるという行為は、話しかけるきっかけ作りにぴったりだ。だから私は、好きな人にわざと「ライター貸して」と言っていた。

小さな口実。ずいぶんまわりくどい恋をしていたものだ。

フリーターだった頃も、仕事終わり、一番に手が伸びたのはライターだった。カチッという音とともに、一日の区切りがつく。

地べたに座り、一緒に煙をゆらせていたあの子たちは今何をしてるのだろう。仕事の愚痴から恋の話まで、缶コーヒー片手に夜遅くまで話していた。

コンビニに行けばいつでも買えるし、100円ショップに行けばパック売りもされている。なくしてもすぐに変わりは見つかる。だけど、お気に入りは昔から変わることはない。

一回り小さな、ビビッドカラーのライター。楕円形のフォルムと赤い着火ボタンと控えめな「Bic」の文字。レアカラーや柄物なんか見つけた日には、即財布を開く。

何かを始めるときも、何かを終わらせる時も、必ず火をつけていた。うれしい時も悲しい時も、めちゃくちゃ落ち込んだ時も、そこには小さなオレンジの光があった。

考えて見ればずいぶん長い間、この小さな道具に気持ちを預けてきたものだ。

「ライター貸して」と言わなくなって久しい。それでも、カチッという音を聞くたびに、ほこり臭い音楽サークルの部室や、シャッターが閉まった大須の商店街や、昔の恋人のはにかんだような笑顔がふっとよみがえる。

これからも私は、小さな炎とともに思い出を重ねていくのだろう。

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