母の告白が教えてくれた、不器用な愛情
「お母さんは育てられた経験がないから、子どもの育て方がわからなかった」
母親から言われたこの一言は、15年以上たった今でも忘れられない。
私の母は、能登半島の小さな町で生まれた。
母親である祖母は、同居する義母との折り合いが悪く、幼い弟だけを連れて実家によく帰っていたらしい。
義母に懐いてた娘が、かわいくもなかったのだろう。時には母だけを置いて、数日間家を留守にすることもあったそうだ。
中学まで地元で過ごした母は卒業を期に名古屋へ。高校に通いながら看護師の資格を取り、市内の病院で働き始めた。
その後、先輩の紹介で父親と結婚し、私と2つ下の弟が誕生。幼い頃のアルバムには、幸せそうな顔で私を抱く母の姿が映っている。
しかし、私の記憶にある母は、怒っているか泣いている姿しか思い浮かばない。
私が幼い頃、母はとても教育熱心だった。
月曜日から土曜日まで、習い事は日替わり。遠方の送り迎えも、練習の相手も熱心にしてくれた。
少しでも私を「できる子」に育てたかったのかもしれない。だからこそ、結果にはとても厳しかった。
テストで悪い点を取った時、ピアノの練習をさぼった時、母は理由を聞くこともなく、イライラした声で私を責めた。
そんな母を私は疎ましく思うようになっていった。
それから数年後、高校生になった私は数々の問題行動で、学校から呼び出されるような生徒になった。
校則違反は当たり前、無断欠席も何度もしたし、喫煙で停学処分になったこともある。
かつて怒りの表情を向けていた母は、その頃には泣き顔ばかりを見せるようになった。
「なんでそんなことしたの」「なんでそんなふうになっちゃったの」
「あんたのせいだ」その一言が言えたらどんなに良かっただろう。泣きじゃくる彼女を、私は黙って睨みつけるしかできなかった。
そんな私も息子が生まれたことで母との関係が少しずつ変わり、実家に帰れば昔話も話すようになった。
そんな中で言われたのが、冒頭のセリフだ。
「お母さんは育てられた経験がないから、子どもの育て方がわからなかった」
母も母なりに、精一杯の子育てをしていたのだろう。
怒ったり泣いたりしていたのは、それだけ余裕がなかったのかもしれない。
母の告白は、彼女の無器用な愛情に気づかせてくれた。
もっと早く、その愛情に気づけていたらと思う。
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