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東大をぶった切る報告書⇒どうなる第三幕|<破廉恥な接待>汚職@#8生きた教科書を読む

 
 リスクコラム中井です。
 
 いきなりですが、女と男のお話から。
 
 相手が、いろいろな意味で“イケナイ事”をした場合、相手に伝えない人はざっくり2つのパターンに分かれますね。

関心ないよ型:何かしでかしても、黙って放っておく
好きだから型:何かしでかしても、見なかったことにする
 
 不祥事でも同じ。この「関心ないよ型」が組織に蔓延していたらどうなるかを考えます。
 
 東京大学大学院の皮膚科教授が汚職の罪に問われた件。後手に回り続けた東大の対応を、容赦なくぶった切る報告書が出ました。あまりに切れ味が鋭く、驚きました。 
 

■スローモーな塩対応


 大学の事案対応をチェックする第三者のプロセス検証委員会(山口利昭委員長)が公表した報告書です(2026年3月31日付、☞欄外①)。
 
 事実関係を押さえておきます。

 東大大学院の教授とその下にいた特任准教授が、共同研究相手の一般社団法人から<破廉恥な接待>(183万円分と196万円分)を受けて、汚職事件になりました。
 
 一番の問題は、東京大学のスローモーさでした。

 2024年9月に証拠の写真や録音データとともに内部通報を受け、メディアで報道されたにもかかわらず、対応本部を立ち上げる2025年6月まで、内部調査を事実上停止していたのです。
 
 内部通報者はメディア取材にも応じていました。それなのに、教授らへの聞き取りを控えるよう警察に要請されたこと(2024年11月)を主な理由にして、大学としての調査を行わず、取材依頼にもノーコメントを続けたのです。
 
 社会常識ではありえない塩対応でした。(☞欄外②)
 

■<自浄作用の放棄>


 警察の要請があったら、学内調査しなくても仕方なくない?――という疑問がわくかもしれません。確かに、警察の罪作りな面も否めません。
 
 でも報告書は、警察要請に法令上の強制力はないうえ、代替案について警察との間で協議した形跡もないことなどから、鋭く切り返します。
 
P42<大学としての主体的な真相究明を外部機関に委ねる姿勢は、大学の自浄作用の放棄に留まらず、「大学の自治」そのものを自ら棄損する危うさをはらんでいる>
 
 言いなりになって座視してないで、自分らで考えて動きなさいよ! 

 そんな檄を飛ばしているんだな、と私は読み取りました。ここで東大に欠けていたのは、タフな交渉力だったと言い換えることが出来るかもしれません。

■<相互に干渉しない文化>


 そして、冒頭のたとえ話に戻るのですが、学内が「関心ないよ型」に染まっていたことが、長期間放置の背景にあったというのです。(☞欄外②)
 
 報告書の表現を引用すると、こうです。
 
P59<「自らの研究領域さえ脅かされなければ、他者の倫理違反やコンプライアンス違反に対しても口を出さない(黙認する)」という、相互に干渉しない文化が根付いており、組織としての自浄作用が極めて働きにくい風土が存在していることを示唆している>
 

■危機意識の欠如、プロセス軽視、無謬性の思想


 さらに、<根本原因>として報告書は、厳しい評価を浴びせ続けます。
  
・P58 総長に対しては<東京大学のトップとして具備すべき危機意識が、不十分であったことは否定できない>

・P59 一連の対応の問題は、重要会議(懲戒委員会など)で議事録が作成されていないなど、大学運営上の<プロセス軽視の組織風土>に起因するところが大きい

・P61 誤りを犯さないという思想<「無謬性」の思想>が浸透している組織では、<「不正を不正と認めたくない」、「不正の疑いは隠す」>といった意識が強い
 
 これまで、企業の不祥事報告書はかなり読んできましたが、ここまで木っ端微塵に断ち割る記述はあまり記憶にありません。 

 しかもそれが、エリートと呼ばれる人たちを輩出する赤門内の実態評価なんだと考えると、やっぱり衝撃です。
 

■第三幕にはお金の臭い


 無関心はやめて、タフに生きるーーというのが今回読み取った教訓なんですが、まだ続きがあります。

 破廉恥な汚職が第一幕、このぶった切り報告書が第二幕で、いまはトイレ休憩の幕間みたいな感じ。第三幕は「東大の再生(仮)」です。
 
 報告書の評価に対しては学内で異論反論が想定されますし、それこそ大学の自治が大切ならば報告書に全て従う必要もないでしょう。
 
 まっとうな組織の在り方を大学が考えて努力し、その姿を社会がどう評価するかだと思います(☞欄外④=私の提案)。
 
 ただし、舞台の向こうからお金の臭いが漂ってきます。

 「国際卓越研究大学」として政府の10兆円規模の巨額研究助成に食い込むため、東大は、早急にガバナンスの立て直しが必要とされているのです。

 これだけ、ぶった切られた後です。「助成金欲しさに慌てて形だけを整えた」。そんな批判を避けながら、大団円を目指す台本作りは、飛び切り難しいと思います。

 そして、高い税金や社会保険料を納める私たちとしては、この第三幕こそしっかり目を凝らす必要があると思うのですが、どうでしょうか。

            ◆  ◆  ◆
 
 読んでいただき、本当にありがとうございました。次の世代に後ろ指をさされないよう、また頑張ります。<了>

【欄外①】公表版を参照しました⇒プロセス検証委員会報告書について | 東京大学

【欄外②】報告書公表版の時系列抜粋P33
2024年 9月18日=内部通報受付/9月30日=オンラインメディア記事掲載/12月6日=週刊現代WEB版に記事掲載
2025年 3月6日=週刊文春に記事掲載/5月8日=報道ステーションで報道/5月16日=通報者が記者会見/6月7日=附属病院で警察の捜索差押/6月9日=東大が対応本部設置&弁護士調査チームが調査開始
2026年 1月24日=教授が収賄容疑逮捕/1月26日=総長が教授の懲戒解雇発令/1月28日=総長ら記者会見

【欄外③】「好きだから型」の伏線回収。2025年なら、サイバーエージェント子会社の不正経理報告書が印象的です。調査委員会に対して、「Bさん(注:過大計上していた取締役)のことが嫌いだったら告発できたかもしれない」と述べた人がいました。

【欄外④】別の不祥事があす起こるかもしれません。すぐに強力な広報組織を作ることだと思います。どんな情報発信が必要かが分かれば、発信のために内部で何をすれば良いのかも自然に分かります。広報コンサル会社の専門家が協力してあげたらどうでしょう。 
 
*ロクの祈り「あした天気になあれ」

 「お金の臭い……品のない終わり方でスイマセン」


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