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5歳男児を社会の「油断」が……|北海道スキー場事故@#1生きた教科書を読む

 リスクコラム中井です。
 
北海道のスキー場で、冬休みに家族と来ていた5歳の男児が亡くなりました。

駐車場から休憩施設までの坂道を「スノーエスカレーター」に乗って、降り口付近で転倒し、右腕を機械に挟まれた事故によってです。
 
運営会社は警察の捜査とは別に、外部の弁護士と専門家に調査を依頼して、事故から約4か月後の2026年4月30日、その調査報告書を公表しました。(☞欄外①)
 
私はスキーができないので、「スノーエスカレーター」を知りませんでした。読んでみると、こんなに「油断」がいくつも重なるものなのかと驚きました。
 
■空白地帯
現場に安全管理のスタッフがいなかったことが、マスコミにも報道されています。(☞欄外②)
 
リフトなら鉄道事業法、エスカレーターなら建築基準法で縛られていますが、「スノーエスカレーター」はいずれの法規制も受けないのだそうです。複数のスキー場に設置され、広く利用されているというのにです。
 
なので、報告書は<国や索道協会による一律の監視員配置基準が存在しない「法的な空白地帯」に置かれていた>と解説しています。
 
消費者庁の消費者安全調査委員会も3月に調査を開始しており、その議事概要には<当該設備に適用される法令、業界団体による自主基準等は確認できておらず>と記されています。

この<確認できておらず>という、とても曖昧な表現が、行政に実態把握されてこなかった現状を示しています。
 
「怠慢」と断定する材料は持ち合わせていませんが、少なくとも「油断」は行政にあったと思います。
 
■死角 
法規制がないことの負の影響は、安全管理スタッフ不在にとどまりません。
 
報告書は事実関係をさまざま記載して、<「緊急時対応マニュアル」が存在せず、有効な救命措置を迅速に実施することができなかった>と分析しています。
 
そのうえで、組織としての危機管理の枠組みはあったものの、<従業員に対する教育訓練は、法規制のあるリフトに偏重しており、本件設備は安全管理の死角となっていた>と述べているのです。ここにも、「油断」が隠れていました。
 
やはり、法規制のない設備の安全は後回しになってしまう。そんな現実を示唆しています。
 
■ブラックボックス
この設備は、2019年に導入されています。
 
外国製の設備を日本の正規代理店を通さずに現地から直輸入しています。<高額な仲介手数料>を考えたコスト抑制策だったそうです。
 
スキー場の技術者が研修を受けに渡航したのですが、<運用情報や詳細な図面はメーカー側から機密情報にあたるとして非開示>とされ、<撮影制限や通訳の質の低さもあり、十分な情報を得られなかった>といいます。
 
機材が輸入された際、付属の取扱説明書は現地語のみで、日本語の公式取扱説明書やメンテナンスを担当する外部の業者のない状態だったそうです。
 
報告書は<いわゆるブラックボックスの状態で現場に引き渡され、運用が開始>されたと指摘しています。
 
私も少しビル管理を経験していますが、こんな状態の設備を導入して、「安全に運用して」と現場スタッフに丸投げする“勇気”はありません。メーカーに再度掛け合うなど、何か手を打てなかったでしょうか。
 
今回事故では背景事情にとどまるのかも知れませんが、安全運用に対する会社側の「油断」が垣間見えます。
 
■安全装置
大雪による雪詰まりでセンサーが頻繁に誤作動するため、いくつかある安全装置を無効化する現場判断があったといいます。こうした運用自体、現場の「油断」を示しています。
 
しかし、今回事故に直結する安全装置に関して担当者は、解除していなかったと説明していることから、なぜ安全装置が働かなかったのかは警察の捜査に委ねられた形になっています。
 
安全装置が働いていれば……と誰しも考えるので、この点が最大の焦点になるのかなと思います。
 
報告書は個別の担当者に関して少し踏み込んで分析していますが、設備の不具合など別要因も考えられるので、やはり警察の捜査結果を待つべきだろうと判断して深追いしません。
 
■潜む「油断」
スキーシーズンはすぐやって来るので、対策や準備はもう待ったなしのはずです。また、スキー場「スノーエスカレーター」に限らず、世の中には、危ない「油断」がたくさん潜んでいるんだろうなと思いながら、報告書を読み終えました。
 
不幸は防げなかったのだろうかと、改めて考えます。
 
2025年12月28日午前10時ごろ、家族一緒に楽しいはずのスキー場で、利用者には全く見えない多くの「油断」がクラッシュを起こし、5歳の男の子を巻き込んでしまったーー。
 
報告書を読まれただろうご家族のお気持ちを考えると、言葉が上手く出てきません。   <了>
 
                         
 【欄外①】捜査の進展等を理由に説明責任を避ける組織に比べれば、第三者の調査を受けて結果を公表する姿勢は、評価できると思います。社会が教訓を早く共有できるからです。
【欄外②】安全管理のスタッフ常駐せず 5歳児死亡のスキー場エスカレーター [北海道]:朝日新聞

*ロクの祈り「あした天気になあれ」
 

「GIGIにも、同じ5歳男児の孫がいます」