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〜第3章〜 アルバム全曲解説 (5)B面-1 Robery, Assault and Battery

歌詞はこちら


【日本語訳とその内容】

B面1曲目を飾る、ちょっと変わったタイトルのこの曲は、トニー・バンクスとフィル・コリンズの共作とクレジットされています。そのため、この歌詞はフィル作と思う人が多いようですが、これもトニーの歌詞です。ここでは、Mad Man Moonとはうってかわって、わかりやすい言葉で歌詞が書かれています。ちなみに、タイトルの Assault and Batteryは、「暴行」と「傷害」なのですが、英語の法律用語としては、ほぼ常にセットで使われる言葉とのことですので、日本語としては「暴行・傷害」としてみました。


強盗、暴行・傷害

[Verse 1]
警察は警告されていたが、通りは閑散としていた
彼らはその電話をデマだと思っていた
そわそわと視線を送り、小走りに飛び跳ねる
若者は警備員の不意をついた
二人の間をすり抜けたとき、気付くべきだった
目撃者がすぐ近くにいたことに
懐中電灯で照らしながら、彼は夜の中を進み
金庫のある部屋にたどりついた

冒頭は、泥棒が警察の怠慢をついて建物に侵入するシーンですね。ただ、警備員には見つかってしまうわけです。


[Pre-Chorus]
「やあ若いの、楽しんでるようだなあ」
「人違いですよ旦那、わたしはただの掃除夫なんです」
その瞬間彼は発砲し、相手は死にゆく際にこう言った 
「何てことをするんだ」 またいつも、いつも同じことの繰り返し

次は警備員と泥棒の会話ですが、泥棒は躊躇せずに警備員を射殺するわけです。とんでもない悪党ですね。


[Chorus]
強盗、暴行・傷害
重罪人とその犯罪 
強盗、暴行・傷害
重罪人とその犯罪
 

そして、コーラスで曲のタイトルが繰り返されます。


[Verse 2]
ダイヤモンドと札束を拾い上げ
それらを袋の中深くに押し込んだ
しかし警報が鳴り響き、完全に包囲されていたが 
彼にはまだ秘策がいくつか残されていた

札束(bundles of fivers)は、イギリスの5ポンド紙幣の束という意味のスラングで、思いっきりイギリス英語が使われています。


[Pre-Chorus]
「両手を高く上げて外に出ろ」
「オレを生きて捕まえるのは無理さ、約束するぜ、旦那」
その瞬間彼は発砲し、相手は死にゆく際にこう言った 
「何てことをするんだ」 またいつも、いつも同じことの繰り返し

泥棒は包囲されるわけですが、また殺人を犯して逃げるわけです。かなりの凶悪犯ですね。


[Chorus]
強盗、暴行・傷害
重罪人とその犯罪 
強盗、暴行・傷害
重罪人とその犯罪
 

[Bridge]
「奴は屋根から逃げた、クソ野郎が逃げた
どうして神はいつも悪い奴の味方をするんだ
悪い奴の、悪い奴の、悪い奴の」

そして、ブリッジの歌詞は、泥棒を取り逃した、警備員か警察の捨て台詞ですね。


[Verse 3]
オレは逃げおおせたが、またいつか戻ってくる
組み合わせが変わっただけさ
いつかヤツらに捕まって、クサリにつながれる日が来る
その日まで、ありふれた犯罪の波に乗るのさ

次は、逃げ延びた泥棒の独り言のようなセリフが歌われます。そのうち捕まるのは、覚悟の上だという感じですね。


[Pre-Chorus]
もしヤツらがオレを拘束して裁判に引っ張り出したら
保釈金を払ってムショから出るさ
そして裁判でこう言うんだ
「何てことをするんだ、またいつも、いつも同じことの繰り返しさ」

でも、捕まったって何とかなるさ。という感じですね。裁判でお前らと同じセリフを言ってやるというようなエンディングとなるわけです。


[Outro]
何てことをするんだ、いつも同じことの繰り返し、何てことをするんだ
いつも同じことの繰り返し、何てことをするんだ、いつも同じことの繰り返し
何てことをするんだ、いつも同じことの繰り返し、何てことをするんだ
いつも同じことの繰り返し、何てことをするんだ、いつも同じことの繰り返し
何てことをするんだ、いつも同じことの繰り返し、何てことをするんだ
いつも同じことの繰り返し、何てことをするんだ、いつも同じことの繰り返し


B面に入った途端に、かなり簡単でわかりやすい歌詞になったわけです。この歌詞について、トニーはこう語ります。

Banks: "English things... I wrote a cops and robbers lyric on that because it had this very fast instrumental in the middle in a very strange time signature which keeps sliding from one place to another. It sounded to me like a sort of wild chase scene, you know, a Keystone Cops thing. So, you know, the idea of it being a chase of cops and robbers seemed quite amusing."
バンクス:「イギリス的なもの…あの曲では警官と泥棒の歌詞を書いたんだ。というのも、曲の途中にすごく速いインスト部分があって、しかもとても奇妙な拍子で、どんどんと別の場所に滑っていくような感じなんだ。それが僕には、まるでドタバタの追跡劇、ほら、キーストン・コップスみたいなやつに聞こえたんだよ。だから、警官と泥棒の追いかけっこというアイデアは面白そうだと思ったんだ」

GENESIS 1975 to 2025: The Phil Collins Years /Mario Giammetti

つまり、完全に曲が出来上がった後に、そのインストゥルメンタルのパートの印象から、この歌詞を思いついたということなのです。そして、ここにフィル・コリンズのアイデアがつけ加わるのです。

Then Phil had this idea of doing it in a kind of Artful Dodger accent throughout, which was quite fun and gave it character. He was able to do something with it that Peter wouldn't have done. The lyric is tongue in cheek, it wasn't supposed to be very serious, and he got a little of that humour across with it. I thought he did a really good job with the vocal on it.
その後、フィルが全体を通して アートフル・ドジャー のようなアクセントで歌うというアイデアを思いついたんだ。それはとても楽しくてね、曲に個性をもたらしたね。彼はピーターがやらないようなことを実現できたんだ。歌詞は皮肉を交えたもので、真剣なものじゃないよ。彼はそのユーモアを少し表現できたと思うね。彼のボーカルは本当に素晴らしい仕事だったんだ。

GENESIS 1975 to 2025: The Phil Collins Years /Mario Giammetti

アートフル・ドジャーとは、フィル・コリンズが10代の頃に舞台で演じた、オリバー!のキャラクターで、役柄はスリなんですよね。警察と泥棒の歌を、フィルがかつて演じた役を思わせるアクセントで歌うというアイデアと合わさって、成立した歌詞なのです。


【サウンド解説】

曲の大半は、トニー・バンクス作のようで、中間部のソロパートのリズムがフィル・コリンズの作なのです。トニーはこう言います。

Phil wrote the drum pattern the solo is based on. He wrote this rhythm in a fiendish time signature: a bar of 7 followed by a bar of 6, in 13/8 in other words. We liked the feel it had so l wrote this solo on top of that rhythm. It was a nightmare to play as you have to play the first part against the rhythm, then you get bits where I break it up into more bite-sized chunks, so you get 3 bars of 4 or 1 bar of 4 and 1 of 5 to make it a bit easier to do.
ソロの元になったドラムパターンはフィルが書いたんだよ。彼が作ったリズムはとんでもない変拍子でね。7拍子の小節の後に6拍子の小節が続く、つまり13/8拍子というわけだ。その感触が気に入ったから、そのリズムの上にこのソロを書いたんだ。でも演奏するのは悪夢だったね。リズムに逆らって最初の部分を演奏しなければならないし、その後には、もっと扱いやすい小さなまとまりに分解する部分もある。だから、4拍の小節を3つ続けたり、4拍の小節1つと、5拍の小節ひとつを組み合わせたりたりして、少しでも演奏しやすくしてるんだ。

GENESIS 1975 to 2025: The Phil Collins Years /Mario Giammetti

彼らの歴史の中でも、おそらく最も複雑な拍子の上でトニーはソロを弾いたのでしょう。トニーは、後のインタビューでもたびたび、「もう二度と弾きたくない」と語るくらいなのです。


【プロモーションビデオの制作】

このとき、彼らはバンドの歴史上はじめて、曲のプロモーションビデオを制作します。MTV開局(1981年)のだいぶ以前、しかも家庭用VTRハードなど、まだほとんど普及していないこの時代に、どれだけのプロモーション効果があったのかはわかりませんが、先駆的な取り組みをしています。そしてこの動画に、メンバー全員が出演することになるわけです。もちろん主役の泥棒役はフィル・コリンズです。

さすがに今見ると、「学芸会レベル」感が否めない作品ですがw、実際にロンドンのシェパートンスタジオのオリバー!のセットで撮影されたと言うことですし、76年ということを考えればかなり頑張っているのではないかと思います。

フィルはこう回想します。

“Robbery, Assault and Battery” is a stand-out and works really well from the off— I add a bit of my Artful Dodger into the vocal delivery. Slowly, I'm showing that I can not only sing these songs but bring in something else. A bit of character, in every sense of the word. I can inhabit them, without resorting to Peter’s visual accessories.
Robbery, Assault and Battery は際立った曲で、最初からすごく手応えがあったね。ボーカルの歌い回しには、僕なりのアートフル・ドジャー的な要素を少し加えているんだ。そうやって、単に曲を歌いこなすだけじゃなく、何か新しいものを持ち込めるんだということを、徐々に証明しつつあったと思うよ。いろんな意味で、ちょっとしたキャラクターを加えているんだ。ピーターが使っていたようなビジュアルな小道具に頼らなくても、僕は曲の世界になりきることができるんだよ。

Not Dead Yet / Phil Collins

このビデオの影響かどうかはわかりませんが、後のツアーステージで、フィルはピーター・ガブリエル風のコスチュームや被り物は一切継承しなかったのに、この曲のときだけ、「フラットキャップ」と「エドワーディアンコート」を身につけて歌ったのでした。

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