【エッセイ】 ふく
ドラマみたいな出来事がありました。
以前、上大岡へ仕事の研修に行った時に出会った、ある女性とのお話です。
滞りなく研修を終え、帰路につく前にひと休みと、本を片手に休憩スペースに腰かけました。
2〜3人がけのテーブルが10ほど並べてあったのですが、かなりの混雑状態。
ゆっくり読書をしていると、大荷物を抱えた女性が、席を探すように視線をさまよわせながら歩いてくるのが、目の端にちらりと映りました。
「よかったら、相席どうぞ」と迷わず声をかけると、「あら、ありがとうね」とその女性。
80歳を超えるというその方と、テーブルを挟んで座り、30分ほどおしゃべりしました。
初対面とは思えないほど会話が弾んだのですが、ひとつ「あれ?」と感じることがありました。
言葉を交わしている間、目は合っているのに、両手がずっとカバンの中で、ごそごそと動いているのです。
探しものかと、あまり気に留めないようにはしたものの、やはりどこか引っかかりました。
その違和感の正体が分かったのは、女性が帰り支度をしながら立ち上がったときです。
「今日はあなたに“福”をもらったわ」と、そんなことを言うのです。
続けて差し出されたのは、綺麗に“服”の形に折られた千円札。
カバンの中で手を動かしていたのは、それを作っていたからだったのです。
断りましたが、女性は「どうかお守りにして。あなたも誰かに“福”をもらったら、ぜひ返してあげてちょうだいね」とにっこり。
“服”を私の手に握らせて、背筋を伸ばして去っていきました。
“服”は、今でも財布の中に大切に仕舞ってあります。“福”をもらったら、返す。とても素敵な考えではないでしょうか。
日々の生活では家族や友人から、生活支援員としての仕事では利用者さんや一緒に働く仲間たちから、色々な形で“福”を受け取っています。
どうやったらその“福”を返せるかと、財布の“服”を見る度、そっと周りの人たちに思いを巡らせるのです。

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「不運だけど不幸じゃない」をテーマに、頭の中の考えや記憶、気持ちなどをぽこぽこと形にしています。ひとりじゃないんだなと思っていただけたら嬉しいです!