どうでもいいけど、読んでたのしい(#創作大賞感想)
極論、エッセイや漫画は、なくても生きていける。
娯楽の類に入るものはすべてそうである、と言っても過言ではない。
しかし、「心の栄養」という概念を手に入れた我々には、そんな一見どうでもいいことに強く惹かれてしまうのではないか。
彩野リィさんの『どうでもいいけど、やり切りたい』は、どうでもいいことの数々を綴った作品だ。程よくゆるっとした文体とタッチで、気軽に楽しめるコミックエッセイとなっている。
全7話あるが、どれもさらっと読めるので、ちょっとしたパーティーで手持無沙汰になったときにも重宝すること請け合いだ。
エピソード0:座右の銘
なるほど、すべてはこの座右の銘から始まったのか。
「つまらない大人にならない方法」はわからないけれど、とにかくなんでもやってみる。どうでもいいことに全力を尽くし、あるいは真剣に考える。
とても素敵な羅針盤ではないか。
ちなみに、アルロンの座右の銘は「無理をしない」である。
エピソード1:「8」をかわいく書きたい
エピソード1からいきなりクセがすごい。
でもその気持ちはなんだかわかる気がする。僕はあまり字のかわいらしさを追求しない(読めて伝わればそれでいい)タイプなので、「8」のかわいい書き方は考えたこともなかったが、「こうすればもっといい感じに見えるのに!」というのはある。習字をやっていた名残なのかもしれない。
で、これを読んだら自分でも書いてみるのが、つまらなくない大人だ。
「8」だけだと変に緊張して日頃の練習の成果を発揮できない恐れがあるので、すべての数字を書いてみることに。


あー、かわいくないですねーーー
エピソード2:ロリータになる
好きな服装をするのって、意外と勇気がいることだと思う。
いくら多様性の時代になったといっても、少なからず抵抗がある人もいるのではないだろうか。
アフタヌーンティーを楽しむために、店の雰囲気に合った服装を目指す。この時点で拍手喝采である。しかも服を買うために有休取得までしているのだから、もはやスタンディング・オベーションものである。
着るものひとつで気分はアガるもんなあ。まさに、全力で楽しむ大人の姿だ。
エピソード3:ナンプラーの使い道
ちょっと待ってくださいね。今、頭の中で「ナンプラー、てんぷら」と踊っているジョイマン高木を追い出しますから。
専門性の高い調味料って、使いきることが絶対にできないのにどうして買っちゃうんだろう。僕も「瀬戸内レモンつゆ」みたいなのを買って、3回くらいそうめんの味変に使った後、冷蔵庫の隅っこに追いやったことがある。
そんなエスニックな調味料代表・ナンプラーを活用した料理をつくるリィさんだが、思わぬ落とし穴が。ここには書かないのでぜひ読んでみてほしい。「そっちかーい」とツッコみたくなる。
あと、節約のためにお弁当を持参しているのはえらすぎる。
お弁当をじさーん、でんぢゃらすじーさん。
エピソード4:何もしないをする
これね、何気なく書いてあるけれど、すっごく大切なことだと思う。
趣味にだって体力は必要だし、楽しいからといって疲れないわけではない。
機会損失を気にしすぎて休まずにいたら、心身を壊してより一層の機会損失になってしまう。
思いきって「何もしない」ができるのは、素晴らしいことだ。
図らずも真面目な感想になってしまった。
そしてこれまた図らずもエピソード0で発表した「無理をしない」の伏線を回収してしまった。
エピソード5、6:ちょっとしたパーティーをする
「ちょっとしたパーティーに着ていく服を買う」
のではなく
「ちょっとしたパーティーに着ていく服を着るためにちょっとしたパーティーを開催する」
のか。すごい。発想の逆転。
そしてふたりの友人がこのちょっとなにいってるかわかんないアイデアに乗っかってくる。すごい。
さらには、パーティーに必要なアイテムをかき集め、あまりのボリュームにキャリーケースを召喚するという本気っぷり。いい。とてもいい。
後編に入り、「ちょっとしたパーティー」は開催された。
設置型ミラーボール的なアイテム、お手製のお面(邪魔なのですぐに武装解除される)、BGMを探している途中でなぜか見始めた実況動画。
格好や雰囲気はたしかにちょっとしたパーティー。あとは放課後の教室、あるいは宅飲みのような安心感。この予定通りにいかない感じもまた楽しくて、どこか胸を打つものがある。
大人がこういうふうに楽しむのって、いい。とてもいい。
おまけ:創作大賞ファンアート
彩野リィさんは、昨年に引き続き、創作大賞の感想としてファンアートを描かれています。
アルロンのエッセイにも描いてくださいました。
素敵なイラストをありがとうございます!
(おしまい)
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