冴えないおっさんに嫉妬するなんて(#創作大賞感想)
おもしろかった。読まなきゃよかった。
仕事の休憩時間に何気なく読み始めたのがよくない。
なんだこれは。読むのが止まらない。
ひとつの文章が長すぎないからか。軽妙な語り口でハードルを下げているからか。
くやしいくらい、読んでしまう。
どんどんどんどん、進んでしまう。
あと比喩。
「男はどうでもいい一言をポケットに入れて持ち帰り、あとで勝手に育てる生き物である」て。
「心というやつは住民票を見ない」て。
「人生はときどき、化粧水から始まる」て。
なんなん。なんなんこれ。
わくわくさせてくれるなよ。
エッセイ。エッセイだこれは。
何気なく書いてあるけれど、日記のようで日記でない。
テンポよく進む導線。
着地が計算されている構成。
映像と思考のバランス。
エッセイを読まされているのだ。
僕はスキンケアを10年くらい続けている。
市販のオールインワンジェルではあるが、毎日の入浴後に顔にぬりぬり。
女の子に「お肌めっちゃきれいだね!」と言われたことも一度や二度ではない。
なのに、なんで! どうして!
ボディソープで顔を洗うようなおっさんに!
嫉妬しているのだ!
今日から毎日、顔をキレイキレイで洗おうか。
それでガッスガスになった肌を美容部員に見せつけようか。
そんでもってきれいになったトゥルットゥルの肌を奥さんに見せびらかそうか。
ダメだ、独身だった。終わった。
そっちは昔はモテてたらしいがな。
こっちは昔も今もモテない。
こっちの方がほんとは冴えないのに!
そっちの方がドラマになっている!
恋愛格差!
もうモテないでくれ。
もうスキやコメントをもらわないでくれ。
なんですか466スキて。
なんですかコメント105て。
キムタクか。
モテる男の代名詞か。
ヤスさん。いや、ヤス。
僕は。いや、おれは。
こういうエッセイが書きたかった。
こういうエッセイが書きたかった!
こういうエッセイが読みたかった。
こういうエッセイが読みたくなかった!
何やってんだ!
ふざけんな!
こっちは楽しく小説書いてたのに!
仕事中もプロット考えたりしてたのに!
このエッセイのことばっかり考えてしまう!
ちょ待てよ!
「妻に煽られ、女子大生に刺され、美容部員に救われる」だと?
フーーーン!
読みたくなるだろ!
読んじまっただろ!
いいかげんにしろ!
妻も。女子大生も。美容部員も。
いいキャラしてるんだよ!
なんでだよ!
ヤスさん。いや、ヤス。
「蓮見、やめてくれ」じゃあない。
「ヤス、やめてくれ」なんだよ。
「ヤス! やめてくれ!」なんだよ!
才能という都合のよすぎる言葉なんかで評価したくない!
文章に誠実なのを知っている!
書くことが大好きなのを知っている!
毎日まいにち努力していることを知っている!
やめんな。やっぱりやめんな。
「ヤス、やめんな」なんだよ。
おもしろい文章を書き続けてくれ。
おれのライバルであってくれ。
読みたいんだ。その文章を。
書きたいんだ。その感想を。
交わしたいんだ。握手を。
授賞式で。
(おしまい)
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