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たこパ中に知らない人が来たので警察を呼んだ話

持つべきものは友である。

先日、5人の友人に会った。その5人とは、札幌のローカルアイドルつながりで知り合った、いわゆるドルオタアイドルオタク仲間だ。推してたアイドルグループは4年くらい前に解散してしまったが、その後も友人たちとは定期的な交流がある。

その日も年に一度の会合だった。会合といっても、マンションタイプのホテルを借り、たこ焼き・焼き肉・焼きそばパーティーをしながら談笑するという、とてもフランクなもの。みんなすっかりおじさんになっているが(いや、出会ったときからおじさんだったかもしれない)、学生時分のような気楽さがある。気楽すぎて、集合時間になっても半分しか集まってなかったけれど。でも、それは今となってはどうでもいい。なぜかって?


借りた部屋が散らかっていたから。


ぐちゃぐちゃのベッドメイク。散乱したゴミ。前の滞在者のものであろう荷物。リビングのハンガーラックには、女性ものの衣類が干してある。散らかっていたというよりも、生活感そのままだった。

一体全体どういうことなのか。ホテルを予約した幹事の友人・シンヤが管理人に連絡を試みても、ぜんっぜん応答がない。電話番号の記載がなく、連絡手段はチャット形式のみなのに、質問に対するレスポンスが数日前から皆無だという。本当にどういうことなのか。

考えられる原因は3つ。
一つ目は、単純に利用後の清掃がなされていない場合。荷物の中にはスーツケースまであったのだが、スーツケースを置き去りにする観光客がいると最近ニュースで見た。もしこのパターンなら、ホテル側の責任となる。
二つ目は、不法滞在。過去に同じ部屋を利用したことのある悪い客が、予約をせずに勝手に使っちゃってる可能性もなくはない。マンションタイプだから、キーボックスや部屋の暗証番号が変わっていなかったら何度も使えてしまう。もしこのパターンなら、不法に滞在している側が悪い。
三つ目は……可能性の高さとしてはこれが一番なのだが、めんどくささも一番なので考えないようにしていた。


集合時間を20分ほど過ぎてからようやく全員が集合し、買い出しへ。しかし、なにをどこでどのくらい買うのかだれも考えていなかった。こういうときにテキパキと決められないのは僕らの悪いところだ。しかも、車を移動させる関係で僕が一時離脱し戻ってくるまでの30分、ほかの連中はホテル近くのローソンで酒を買って飲んでた。なにしとんねん。

10分ほど歩いてショッピングセンターまで行き、地下にあるスーパーでようやく買い出し開始。しかしそこでも自由な人たち。「調味料、別の店の方が安いからそっちで買ってくるわ」とだけ言い残し、6人のうち最もおつかいに向いていない奔放な2人が消えていった。結局、電話してどっちでなにを買うかすり合わせた。時間を返せ。

僕はイライラしていた。部屋はぐちゃぐちゃ、プランはぐだぐだ、友人はへらへら。もう帰りたい。いや本当に帰ろうかと思った。だれだよ「持つべきものは友である」なんて言ったの。

僕は「やな奴!」と連呼する月島雫みたいな顔をしながら、友人らとともにホテルへ戻った。
意外にも、パーティーが始まってしまえば、僕のイライラも収まっていった。それはたこ焼きを焼くのに集中したり、焼き肉を焼くのに集中したり、焼きそばを焼くのに集中したりしていたからかもしれない。奉行気質が功を奏した。

ただ、ここに宿泊する気などまったくない。だから飲酒はせずに、ある程度の時間になったら帰宅するつもりだった。片道3時間くらいかかるけれど、まあ大丈夫だろ。

パーティーが始まって2時間が過ぎた頃だったろうか。そろそろ帰ろうと思い、僕は友人らに別れを告げた。そして、玄関の方へ向いたそのとき――


ガチャガチャガチャ


玄関のドアノブが、ひとりでに動いた。


「今、ドアノブが動いたっ……!」


文字ではなかなか伝わらないが、このときの僕はめちゃくちゃビビり散らかしていた。「イヤ!!!」とプルプルふるえるちいかわの方が、強い意思表示をしてる分まだ勇敢だったと思う。

ドアスコープを覗き込むと、見知らぬ女性が立っていた。イヤ!!!

直後、ピンポーンとチャイムが鳴る。(ビビッてなにもできない僕に代わり)シンヤがインターホンに出ると、日本語でも英語でもないアジア系の言語を話している模様。どうしようもないので通話を切ったシンヤは、ダメ元で管理人に連絡を試みる。しかし依然として応答はない。その間もピンポンは鳴りやまず、ドンドンとドアを叩く音までしてきた。

これはまずい。僕らはたしかにこの部屋を予約した。日程も部屋番号も間違っていないし、領収書もちゃんとある。でもドアの向こうの人にしてみれば、こちらが侵入者である。その上、言葉も通じないとなれば、ドアを開けた瞬間に大乱闘が始まること必至だ。ファルコンパンチでぶっ飛ばされる未来しか見えない。

ドアを叩く音が次第に強くなっていく。その音量に比例して、僕はへなへなと縮んでいった。帰りたい。でも帰るにはドアを開けなければならない。万事休す、四面楚歌、袋の鼠である。

このままでは埒が明かないということで、僕らは警察を呼ぶことにした。シンヤが110番通報し、お巡りさんがやってくるのをじっと待つ。
すると、シンヤの元に一本の電話がかかってきた。ホテルの管理人からだ。管理人と話しているシンヤの語気がだんだんと強くなっていったのは、理由を知れば当然のことだった。


ダブルブッキングだった。


つまり、僕らは本来なら別の部屋を案内してもらうはずが、ホテル側のミスですでに宿泊中の部屋を通された、というわけだ。

僕らは、恐れていた第三の可能性を引いてしまったのだ。こんなところで不憫を発揮すな。

キレるシンヤ。謝ってはいるものの電話対応がずさんな管理人。さらにキレるシンヤ。隣でふるえる僕。

通報から数十分後、お巡りさんがやってきた。あと管理人も来てた。
まずはお巡りさんに事情を説明。その後、僕ら、お巡りさん、管理人の三者で話をするということになり、管理人を召喚した。
僕らは怒り心頭だった。管理人は謝ってはいるが、なんかちょっと引っかかる言い方をするもんだから、怒りの炎はさらに燃え上がる。シンヤともう一人が前線で管理人と戦っている間、僕は「マジでふざけんなよ」という態度を取り繕いながら後ろの方でビクビクしていた。

警察を介入させたのがナイス判断だったようで、犯罪者も怪我人も出さず事態は収束した。僕らはその場で全額返金してもらい、本来の部屋には行かずホテルを出た。だれもが「こんなとこ二度と来るか!」と思っていたので当然である。

ただ、観光客の多い昨今のホテル事情では、当日に6人もの予約は見込めない。なので、返金されたホテル料金を分配した後、僕らは解散した。僕と同様に帰宅を選んだ人以外は、頭にエルオーブイイーが付く方のホテルを借りようとしていた。

ぐったりした心と体で車に戻る。もう運転する気力も体力もなかったので、その日は車中泊をすることに。蒸し暑かったけれど、なんとなく肌寒さを感じる夜だった。


それにしても、買い出しのときはあんなにイライラしていた僕は、解散する頃には頼もしい友人のありがたみを感じていた。ホテルを出てからもふるえていた僕に「君が気づいてくれなかったら、ダブルブッキングの相手と鉢合わせしてもっと大事になっていたかもしれない。ありがとう」と友人たち。やはり持つべきものは友である。

一つだけ懸念があるとすれば、僕のヘタレっぷりに愛想を尽かしたシンヤが、来年以降は誘ってくれない可能性があることだ。それはイヤ!!!


(おしまい)

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