業界レポート 食料品製造業
今回は弊社独自で行っている業界レポート「食料品製造業」を取り上げたいと思います♪
業界レポートとは、リスクモンスターの心臓部であり、格付などの与信指標を生産・保守を行う「データ工場」が集計・分析しており、業界ごとの市場概要や業界動向、与信管理のポイントなどをまとめたレポートです。
こんにちは、佐々木正人です!
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(1)市場概要
① 営業種目
‣畜産食料品製造業 水産食料品製造業 野菜缶詰・果実缶詰・農産保存食料品製造業
‣調味料製造業 糖類製造業 精穀・製粉業
‣パン・菓子製造業 動植物油脂製造業 その他の食料品製造業
② 業界規模
総売上高63 兆 8,484 億円
上場企業数89 社
非上場企業数42,575 社
③ 業界サマリー
食料品製造業の取扱製品は多種多様であり、 製造方法は素材や加工方法によって大きく異なる。 製造形態は、「素材型」と「加工型」の2つに大別され、企業数の約 90 %、総売上高の約 80 %は 、乳製品、パン、菓子、冷凍食品、惣菜など、そのまま消費される食料品を製造する「加工型」が占めて いる。
‣「素材型」調味料、糖類、製粉、動植物油脂などを原料として加工・調理部門へ供給する。
‣「加工型」畜産食料品、水産食料品、パン・菓子、野菜缶詰・果実缶詰・農産保存食料品、その他の食料品などの製品を直接需要者へ供給する。
(業界の特徴)
‣食料品は 、 健康に影響を及ぼすため 、 製造、保管、輸送における全て の工程において、 徹底した品質管理が求められる。近年の「食の安心・安全」に対する社会的関心の高まりから、衛生管理設備への投資は必要不可欠である。
‣食料品製造業者は 、 食品特有の鮮度維持や消費期限等の理由から、 過剰生産による廃棄ロス発生を最小限に留める必要がある一方 、 受注量を事前に予測した見込み生産であるため、 高水準の受注予測や生産管理体制の構築が必要となる。
‣消費者の嗜好やニーズは変化しやすく、製品のライフサイクルは短いため、食料品製造業者にとって、 消費者ニーズを意識した新製品開発が事業継続のために欠かせない要素となる。
(2) ビジネスモデル
食料品製造業における一般的な商流は、国内外の原材料メーカー、卸売業者からの仕入れ、卸売業者を通した外食業者、小売業者、給食業者への製品の販売である。
食料品は、販売価格の上昇が販売数の減少やシェアの低下に繋がりやすく、特に乳製品やパンなど、一般消費者の購買頻度が高い食料品は、その傾向が強いため原材料価格の上昇を販売価格に転嫁することが難しい。
食料品製造業者が安定的に収益を確保するには、原材料の安定した仕入れが不可欠である。
取引慣行上、スーパーマーケットなどの小売業者は、発注予定数量を事前に提示することはほとんどなく、食料品製造業者は、見込み生産により受注に対応する必要がある。
受注予測を誤ると、過剰生産となり、廃棄ロスが発生したり、欠品が生じることとなる。特に欠品に対しては、食料品業界内で厳しい商慣習があり、取引停止などのペナルティが生じることもあるため、精緻な受注予測、生産管理体制を構築する必要がある。
実態として、食料品製造業者は、欠品ペナルティを回避するため、実際の受注予測数量を上回る生産を行う傾向がある。
製品の流通においては、一般的に卸売業者を介し小売業者へ供給する。特に、中小規模の食料品製造業者は、営業力・交渉力が十分でないことから、小売業者と直接取引しないケースが多い。小売業者も過剰な在庫を抱えることを嫌うため、卸売業者を仲介した取引が好まれる傾向にある。
また、食料品業界には、卸売業者や小売業者に対してリベート(報奨金)や協賛金を支払う取引慣行があり、販売促進費用の負担が重荷となるケースがある。さらに、食料品業界特有の取引慣行として、「3分の1ルール」が挙げられる。
これは、食料品の賞味期間の3分の1を経過するまでに小売業者へ納品を行うものとし、賞味期間が残り3分の1を切った時点で、食料品製造業者に返品が可能となるという取引慣行である。
どちらの取引慣行も食料品製造業者にとって不利であり、取引における食料品製造業者の立場が弱いことが表れている。

(3) 業界動向
食料品製造業の出荷額は、東日本大震災が発生した2011 年を底に増加に転じると、2014 年から2015 年にかけては、原材料価格の高騰を背景に大幅に上昇し、足元では増加基調が続いている。
一方、2018 年12 月に締結されたTPP11(環太平洋パートナーシップ協定)により、海外食品製造業者との競争が加速しているほか、中長期的には、日本国内の少子高齢化に伴う人口減少によって、市場の縮小が予想されており、事業環境は厳しさを増している。
また、食料品製造業者の取り巻く環境の変化として、2019 年10 月に施行された「食品ロス削減推進法」が挙げられる。
同法には、廃棄ロスの要因となっていた「欠品ペナルティ」、「3分の1 ルール」、「賞味期限表示」などの是正が盛り込まれており、斯業種と小売業者との関係に変化が生じることが見込まれる。
2020 年に入り感染が拡大した新型コロナウイルスの影響により、食料品業界の川下に位置する外食事業者や給食事業者に悪影響が生じている。
一方、外出を控える消費者が多いことから、冷凍食品、レトルト食品、パスタ類等の消費が拡大するなど、今後の新型コロナウイルスの感染状況、消費者行動の変化には十分に注視する必要がある。

(4)財務指標分析
(安全性分析)
自己資本比率、流動比率などの安全性指標は、概ね良好な水準にある。一方、食料品製造業は、原材料や製品の保管、製造、輸送のすべての工程において徹底した品質管理が求められ、安全管理用の設備投資が必要となることから、固定資産が膨らみやすく、 固定比率は製造業全体と比べて17.2ポイント高い水準となっている。
(収益性分析)
食料品は、価格競争が厳しく、製造業全体と比べ収益性が低い傾向にある。さらに、卸売業者や小売業者に対しリベートを支払う取引慣行もあるため、販売促進費負担により、営業費用が膨らみやすいことも低収益の一因となっている。
(効率性分析)
食料品には消費期限があり、製造から販売までのリードタイムが短いことから、棚卸資産回転期間や売掛債権回転期間は製造業全体に比べて短くなっている。
また、食料品は季節性が強く、設備を通年で稼働するのが難しいケースがあることが、設備投資効率が70.5%と製造業全体と比べて低い水準にある原因と考えられる。

(5)与信限度額の考え方
■与信限度額の設定方法
与信限度額とは、取引において自社が許容する信用供与の最大額であり、いかなる時点でも超過してはならないものである。与信限度額は、「必要かつ安全な範囲内」で設定する必要がある。必要な限度額は、取引実態を基に算出し、安全な限度額は、自社の財務体力や取引先の信用力(格付)を基に算出する。
●与信金額(必要な限度額)
実際の取引において、必要となる与信金額。食料品製造業に対して発生する与信取引としては、原材料や生産機器の販売等での「売買取引」が挙げられ、継続取引における必要な与信金額は、以下のとおり算出される。
与信金額 月間の取引金額 × 回収サイト
取引を行う際には、自社の取引条件が斯業界の平均水準から大きく乖離していないか、確認すべきである。買掛債務回転期間の業界標準値が「斯業界の平均的な支払サイト」を表しているため、「月間の取引金額×買掛債務回転期間の業界標準値」によって、与信金額の基準とすることができる。
食料品製造業に対する平均的な与信金額 月間の取引金額 × 1. 0 か月
●基本許容金額(安全な限度額)
基本許容金額は、自社の財政がどの程度の貸倒れまで耐えうるかを予め計ることで、自社の体力を超える取引に対する牽制機能を働かせるものであり、自社の財務体力と取引先の信用力を考慮して算出する。一例として、自社の自己資本額に対して、取引先の信用力(格付)に応じた割合を安全な限度額とする方法がある。
基本許容金額 自社の自己資本額 × 信用力に応じた割合
(例 : A格10%、B格5%、C格3%、D格0.5%、E格0.3%、F格0%)
●売込限度額(安全な限度額)
販売先において、自社との取引シェアが高くなり過ぎると、自社が取引から撤退することが困難となる恐れがある。そのため、取引先の信用力(格付)に応じて取引シェアに上限を設けるべく、取引先が抱える買掛債務額の一定割合を売込限度額として設定する方法が考えられる。
売込限度額 買掛債務額 × 信用力に応じた割合
(例 : A格30%、B格20%、C格15%、D格10%、E格6%、F格0%)
仮に、取引先の売上高情報しかなく、買掛債務額が不明な場合であっても、業界標準値を用いて売上高総利益率(26.5%)と買掛債務回転期間(1.0か月)から、以下のように買掛債務額を推定することができる。
買掛債務額 売上高 / 月商 ] × 1 0.2 65 原価率 ] × 1. 0 (か月 買掛債務回転期間=売上高 × 0. 0613
(例:売上高100億円・A格の場合:100億円×0.0613[買掛債務額]×30%[信用力に応じた割合]=1.84億円)
(6)与信管理のポイント
食料品製造業は、他の製造業と異なり製品の消費期限が短く、見込み生産が中心であることから、過剰生産による在庫・廃棄リスクが高い業種である。取引の際には、収益性に関わる生産管理がきちんと行われているかを確認する必要がある。
また、「食の安心・安全」に対する関心の高まりから、食中毒や異物混入などの事故が大幅な業績悪化につながるケースも少なくない。
社会的な影響が大きい場合には、倒産に直結する可能性もあるため、厚生労働省が推進する衛生管理手法「HACCP(ハサップ)」の導入など、衛生管理がきちんと行われているかも重要なチェックポイントである。
食料品流通経路の変化から、食料品製造業者と小売業者との取引関係はより密接なものとなっている。
小売業者が持つ消費者情報の活用や流通ルートの利用により、生産や流通面で効率化を図ることができる一方で、直接取引の拡大により、特定の取引先への依存度が高まれば、相手の業況に自社の業績が大きく左右されてしまう。特定の小売業者への販売割合が高い場合には、販売先の業績を確認しておく必要がある。
食料品製造業の決算書分析を行う上では、棚卸資産の状況に留意すべきである。食料品は、鮮度や消費期限等の理由から保存性に乏しいため、棚卸資産は膨らみにくく、棚卸資産が過大に計上されている場合は、不良在庫などが損失計上されていない可能性がある。
取引先の決算書を複数年度比較し、棚卸資産が正常値にあるか確認すべきである。
人口減少・少子高齢化により、長期的には国内市場は縮小傾向にある。海外展開の難しい中小規模の食品メーカーにとっては、より一層厳しい競争にさらされることが予想される。
以上から、与信管理を行う上では、短期的な事業継続性を確認するだけでなく、人口減少時代を勝ち残れる成長戦略を持ち合わせているか等に注目し、長期的な事業継続性について確認すべきである。
【参考資料】
財務省:「平成30年度法人企業統計調査」
中小企業庁:「平成30年度中小企業実態基本調査」
総務省統計局:「平成30年経済センサス」
農林水産省:「平成28年度 食品製造業におけるHACCPの導入状況実態調査(食料需給表)」
経済産業省:「工業統計調査」、「商業動態統計」
業種別審査事典(一般社団法人 金融財政事情研究会)
本日の内容は以上になります。
次回もお楽しみに!では!
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個人と法人営業も経験して見込客に接点を持たないと何も始まらない。知らない人に飛び込む勇気は想像以上に大変だし、テレアポは断られる度に仕事を全否定されてる気がしてた。成約だけを讃えるのでなく、陰で一番貢献している縁の下の力持ちである彼ら彼女らに日頃の感謝をする。今晩はご馳走じゃー🍻
— 佐々木正人|格付会社の営業部長【人生は楽しんだ者が勝ち】 (@rismon_sasaki) August 24, 2022
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