パールズのゲシュタルト療法に驚愕した!(4)
前回の記事では、グロリアが感情を発露し、また、本音(本当の自分は他人から尊重をされたいと思っている)を引き出すところまで進み、また、涙ぐむところまで対話が進みました。この記事ではセッションの最後までを書き起こします。
二つの存在の指摘
パールズとしてはセッションを締めくくりにかかっており、グロリアの中に二つの自己があることについて言及をしていきます。
グロリア: いいえ、確かではありませんが。
フレデリック・パールズ: あなたが泣いたら、私に何をしてほしいですか?
グロリア: 私は...(笑顔で)
フレデリック・パールズ: 笑顔ですね...何か笑顔になることがありましたね...
グロリア: ええ、二つの気持ちがあったからです。私はあなたに好きになってほしい、抱きしめてほしい、友達になってほしいと言おうとしましたが、でも違うと思いました。そうしたくありません。
フレデリック・パールズ: 何が怖いんですか?
グロリア: あなたと近づきすぎるのが怖いです。
フレデリック・パールズ: さて、何か分かってきました。最初はあなたは私と近づきたがっていて、今は近づきすぎるのが怖い。この矛盾に気付きましたか?
グロリア: それが私の言っていることです。
フレデリック・パールズ: 今や存在の二つの部分があります。
グロリア: でもそれは二つの違う感情です。もちろん、感情的にはそうですが、物理的にではありません。
フレデリック・パールズ: 存在の二つの部分。遠く隅っこにいるか、他の人と一緒に走れるほど近くにいるか...二つの極端の間の永遠の旅。
グロリアは、「隅っこにいて誰かが助けに来てほしい」部分もあれば、「他の人と抱き合うくらいの距離感にいたい」部分もあるということをパールズは指摘し、その二つを行き来しながら生きてきたことを語っています。
セッションの終わり
グロリアが二つの自己を認識できたであろうことを確認し、パールズはセッションをクローズに導いていきます。
グロリア: そうです。知っていますか、私は考えています。本当に傷ついて、本当に何かについて動揺している時、私を愛してほしい時、私の女友達がよくそうするように、抱きしめに来てくれます。でも私は...欲しくないんです。
フレデリック・パールズ: その通りです。これが私が話していることです。あなたは接触を維持できない。分かりました...女友達があなたを抱きしめることを許し、あまりにも近づきすぎたら何が起こりますか?
グロリア: 私が気付いているのは、汗をかくと恥ずかしいということです。彼女が私の体を近くに感じるのが恥ずかしくて、分からないんです...
フレデリック・パールズ: 近さに対して嫌悪感のようなものを感じているんですね...
グロリア: はい、そうです。(嫌悪感を示す表情とうめき声を出す)
フレデリック・パールズ: もっとそれをしてください。
グロリア: ただ気持ち悪いんです。(嫌悪感の表情とうめき声を繰り返す)
フレデリック・パールズ: もう一度。
グロリア: それが何なのか感じることができます...好きではありません。
フレデリック・パールズ: 私に言えますか...フレデリック・パールズ博士、あなたは気持ち悪いですと?
グロリア: いいえ。
フレデリック・パールズ: いいえ。何が難しいんですか?
グロリア: もし本当に信じられたら、あなたの気持ちを傷つけることになるからです。
フレデリック・パールズ: ああ、あなたは私の気持ちを大切にしなければならないんですね。
グロリア: ええ。
フレデリック・パールズ: 私があまりにも無関心で何も触れないと思っていたのに、今突然私に触れる方法を見つけましたね?
グロリア: ええ、知っていますか? 私は信じています。あなたは私のような種類の人です...気持ちを傷つけられないふりをしますが、本当は傷つくんです。リラックスして、強いけれど、中は柔らかくて傷つきやすい...あなたの気持ちも傷つくと思います。でも簡単には見せないでしょう。
フレデリック・パールズ: 見てください、私は何をしているでしょう? どうやって私の気持ちを見せられるでしょう?
グロリア: 私に返すことで。「さて、グロリア、あなたはそれから何を得ましたか?」と言って、全てを私に返してしまい、あなた自身を見せることはしません。
フレデリック・パールズ: では、これを言ってください - 「パールズ、あなたはこれから何を得ましたか?」...私に言ってください。
グロリア: 何から得たんですか?
フレデリック・パールズ: 今言ったこと...この気持ち悪さから。
グロリア: もちろん、あなたが何を得るか分かっています...もし私が「パールズ、あなたはこれから何を得ましたか?」と言ったら、あなたは「何も、私は影響を受けていない、それはあなたがしたことだ」と言うでしょう。でもまだ傷ついているとは見せないでしょう。でも本当の気持ちを話せば、傷つきを見せたくないので、私が隅っこにいる時と同じように隠すんだと分かっています。
フレデリック・パールズ: もし私が...もし私が泣いたら、あなたは私をどうしますか?
グロリア: あなたは...そんなに優れた存在ではなくなります。もっと傷つきやすくなって、私があなたを慰めて気分を良くしてあげられます。
フレデリック・パールズ: あなたは私を慰められる。
グロリア: はい。
フレデリック・パールズ: 私が赤ちゃんになれる。
グロリア: はい、そうしたいです...あなたが私と同じレベルになる...私はそんなに見下される必要がなくなります。
フレデリック・パールズ: 逆に、あなたが私の赤ちゃんにならなければならない。彼女が泣いて、赤ちゃんを演じて、慰められて抱きしめられて...かわいそうな子...
グロリア: ええ、私もそれが好きです。
フレデリック・パールズ: 何か言わせてください。私たちはいい締めくくりに来たと思います。少し理解し合えました。この状況を終えましょう。どうですか?
グロリア: はい。ありがとうございます。
セッション全体を通じて、グロリアからパールズへの投影は自分にも返ってくることをパールズは指摘しています。
グロリアは、自分は愚かにみられていると恐れていますが、他の人たちも自分と同じくらい愚かでいてくれたら安心できるのに、と思っています。
そして、自分が愚かゆえに相手を尊重しないといけないと考えつつ、自分も同じくらい尊重して欲しいと願っています。
グロリアは、自分自身がとても傷つきやすいということを理解しながら、相手もそうであればお互いに抱き合ってでも慰め会いたい。でも、あまりにも至近距離に人が近づくと嫌悪感すら覚えるという、二つの矛盾した自己を抱えています。
・・・こう見ると、パールズはグロリアの非言語(足をバタバタ、手を振る、怖いといいながら笑顔)についての解釈はしていませんが、そこから出てきたグロリアの言葉に対しては積極的にカウンセラーとしての解釈をしていますね。また、その解釈に対して今後の取り組みについては一切話をしていません。
パールズ自身の振り返り
セッション後にパールズ自身の振り返りもありました。パールズとしては、グロリアが本音に反するような取り繕いの振る舞いをしてきたことに気が付いたはず。また、泣くくらい感情を発露したことで本音で求めている人間関係に気が付いたはず、ということがセッションの価値と考えているようです、私の読み方が間違っていなければ。
このデモンストレーションは、私の理論的な見解と一致して、かなり成功したと考えています。グロリアの本物の出会いの回避は、3つの方法で現れました:
まず、患者は笑顔で洗練された偽りの仮面をかぶることで状況をコントロールしていました。怖がっているふりをしながら、同時に私のことを理解しているという振る舞いの間を行き来し、そうすることで状況を完全にコントロールできていると信じていました。
第二に、彼女は隅っこに隠れることを空想することで、引きこもっていました。
第三に、彼女は泣くことによる本当の感情的な出会いの融合をブロックしていました。これこそが、この面接の本当の感情的な意味となっていたはずです。
患者は、私に投影していたいくつかの空想を自分のものとして認識することができました。これは特に、最初の「尊重される必要性」の否定に関して顕著でした。環境的サポートの必要性が、尊重を得る必要性とともに表面化し始めました。
私は最初の涙が現れ始めた時点でセッションを中断しました。彼女は孤独な子供の役割を演じ始め、明らかに抱きしめられて慰められることを望んでいました。彼女の投影の同化への取り組みが機能し始め、彼女は私を赤ちゃんのように抱きしめる体験を始めていました。
いくつかの投影において、主要な治療的要因は、言語的・非言語的行動の矛盾を示すことでした。例えば、怖がっていると言いながら同時に笑顔を見せるというようなことです。怖がっている人は笑いません。私はそれが恥ずかしさの方向に向かっていたと感じています。この恥ずかしさは、厚かましさと怒りによって守られていました。彼女の実存的な恥ずかしさに到達するためには、偽物性を取り除く作業が必要でした。つまり、特定の状況で必要とされる役割を表面的に簡単に演じてしまう傾向のことです。この擬似適応が、彼女の人生への対処方法なのです。これが、この会話から私が得たものについてのおおよその内容です。
セッションの構造と技法
最後に、セッション全体の構造と技法についてまとめて終わりにします。私自身がこういった対話を誰かとしようとは全く思いませんが、自己理解を進めるうえで参考になるところは多々あったかと思います。
まず、セッションの流れを図示しました。非言語について理由を尋ねられるという、日常会話の中ではあまり発生しないギャップをわざと発生させることで、グロリアを怒らせて、本音を語らせて、また、涙を出すくらい感情発露をさせています。
最後にはグロリアの防衛的態度もやわらぎ、(ちょっと言葉は乱暴ですが)、「パールズも自分と同じくらい人間味があって愚かであれば、子供のように抱きしめてあげるのに。でも、それくらい近距離に他人に接するのが嫌な自分もいる。」という気づきを得ています。

セッションで使われた主な技法は、以下のようです。
矛盾の指摘
場面:「怖いと言いながら笑顔ですね。どうして同時に怖がって笑えるのか理解できません」
目的:言語的・非言語的コミュニケーションの不一致を指摘し、クライアントの気づきを促す
今ここでの気づきの促進
場面:「足で何をしていますか?」「目に涙が浮かんでいることに気付いていますか?」
目的:現在の身体感覚や行動への注意を向けさせる
誇張技法
場面:「もっとそれをしてください」(嫌悪感の表情とうめき声に対して)
目的:曖昧な感情や表現を増幅させ、より明確にする
まとめ
最初に動画を見た時の動転感も、記事にまとめていくことで理解できたこともあったりしましたので、自分自身にとっては良い学びになったと思います。
一方で、ここまで感情や本音にアクセスをしても良いものかどうかについては、議論は分かれるとは思います。カウンセラーが解釈を提供しないことや、「今、ここ」だけを扱う事で、勘違いや思い込み、過去のトラウマを開けてしまう事は防がれていますが(現に、一瞬父親への投影が出てきていますが、パールズはさらっと流していますので)、話の方向が誘導的になってしまうとクライアントは混乱してしまいそうです。
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