【映画鑑賞】「タンク(Der Tiger)」(2025年製作)
Amazon Prime Videoで配信されている映画『タンク』(原題:Der Tiger・2025年製作ドイツ)を観ました。しかしこの手の映画にはB級・低予算のママゴト戦争映画などもあり、邦題がストレートに「タンク」というのも「いかにも」という香りがしてきましたが、ドイツ製作の映画ということに期待をかけて鑑賞しました。
監督及びキャストは全く知りません。ゴメンナサイ、ネタバレにならないように登場兵器中心のレビューをー
舞台は1943年の東部戦線。スターリングラード敗北後のドイツ軍は苦境に立たされています。始まりから撤退する友軍の援護の為に橋を守ってティーガー戦車(Tiger I)が登場します。橋の爆破時刻が迫る中、ソ連軍を足止めすべく1台のティーガー戦車が奮戦します。ギリギリまで射撃をして橋を渡り撤退を開始します・・・橋の爆破時刻、そこにソ連軍のイリューシン(攻撃機)も現れて橋と戦車に攻撃を仕掛けます・・・
場面が変わると(無事に死地を脱したということか?映画ではエンディングにいたる伏線が散りばめられています)新しい任務の命令書が届きます。敵陣深くに潜入して行方不明の将校を救出すること。しかし燃料・弾薬の限界、荒涼とした無人地帯、敵の脅威、そして戦車長を含めた5人のクルー自身の内面的な葛藤が彼らを追い詰めていきます(その過程でそれぞれのクルーたちの過去や生い立ちが描かれていきます)
撤退したはずの村落で親衛隊による住民の虐殺ー当たり前のようにその行為を見ているクルーたち(そこにも伏線と戦争の狂気があります)
「メタンフェタミン」というドイツ軍が使用していた精神向上剤を飲みながら無理やり覚醒しながら進軍していく描写が、狂気と絶望(違和感)を強調しています。
戦車内部の閉塞感とリアルな再現、戦車vs戦車の戦闘シーンは迫力がありますが、近年の戦車映画で話題になったブラッド・ピット主演の「フューリー」ほどの激しい戦闘描写ではなく心理描写や幻想的、ミステリー色が強く、途中から「これは本当に現実否か?」と疑問を抱かせます。
題名となっている主人公?「ティーガー戦車(Tiger I)」の再現度と描写についてー再現車両は旧ソ連のT-55をベースに改造したものらしいです。キューポラの形状(前期型寄り、細部は映画なのでガマン)、車輪のディテール、スモークディスチャージャー発射シーン(戦闘であんなに使用していたのかな?)戦車内部の狭さ、硝煙や油や汗の匂いが漂うような閉塞感、エンジン音や履帯の軋みなど、リアル志向なのは製作者のこだわりでしょう。
特に印象的だったのは、敵から逃れるために水中潜行シーン。実際には水中走行装置は装備されていません(試作段階で廃止)映画ではこれを活用!
57トンの重量がある戦車が川底に入る緊張感(車重で沈まないのかな?)これらは実装されていたら「あり得たかもしれない」限界ギリギリの演出として観るべきでしょう。
水中の深さは違えどその閉塞感は「Uボート(Das Boot)」を思い出しました。
他に見所だったのは、所属部隊が503重戦車大隊の第3中隊第1小隊長車輌と砲塔に明記され、マーキングも含めて史実に基づき「ソレっぽく」なっています。ティーガー以外の登場車両「Ⅲ号戦車(火炎放射型)」「オペルブリッツ(兵員輸送トラック)」、「キューベルワーゲン(小型車両)」、ソ連側の戦車T-34やSU-100ーただしSU-100の登場は1945年になってからですが・・・これもティーガー(そしてクルー達)を狙う悪魔のような象徴としての存在としての演出として理解しましょう。
あと、この任務の不可解なところー燃費が悪く機動力のない重戦車を敵中に1両の派遣(将校を連れ帰ってくるのだから歩兵随伴のハーフトラックとかも必要でしょう)、燃料・弾薬の補充の問題は・・・などとツッコミどころがあります(それも映画のストーリに絡め捕られてた伏線、とラストでわかりました)
その結末は・・・彼らが目標としていた将校がいるとされる掩体塹の中に入っていく時に何となく結末は分りましたが、見る方によっては「あっけない」とか「肩透かし」と感じるかも知れません。
ティーガーが荒涼とした大地を進む映像は儚さ、寂寥感があり良かったです(この雰囲気が映画全体にあります)ドイツが製作した映画であるのでヒーローは登場しません。1台の戦車が並み居る敵をバッタバッタと撃破するアクションとは正反対です。一般市民が兵士となり戦地に赴き戦禍(戦火)の因果応報、加害者としての意識、自己反省のメッセージが伝わってきました。


