ただそこに…Mr.BIG①
去年、東京のフェアウエルツアーを見に行った。
…Mr.BIGだ。
私はこの日、どれだけ涙を流したかわからない。
同じ経験をした人は少なくないと思う。
【スーパーバンドの呼び声】
大きな前評判とともに、鳴り物入りで登場したMr.BIG。
そりゃそうだ。
RACER XのポールギルバートとTalasのビリーシーンがバンドを組む…と言うのだ。
話題性がない訳がない。
如何にも技巧派!と想像できるのに、何が出てくるかは想像できない。
そこに安定感抜群のパットと、明るいがソウルフルなエリックが加わる…
一体どうなるんだ?
エリックが加わるならキャッチーさも出るのでは?
そんな妄想で頭は一杯だった。まるっきり未知の期待だった。
【そして衝撃】
やがてファーストアルバムがリリースされた。
ファーストコンタクトはあの1曲目…Addicted To That Rush。
そんなの、ビビるに決まってる!
歯切れの良いハイハットでビートを刻むドラムに、ベースの「ライトハンド」でのトリルが絡む。
いきなりビリーここにあり!だ。
するとポールのコレまた歯切れ良いギターが始まる!
しかもスポットライトをよこせ!と言わんばかりのピックスクラッチから始まる。
そこは全然テクニカルではないが、ポールが来るぞ!の意味合いは大きい!
カントリーをハードロック的にアレンジしたハイブリッドピッキングはセンス抜群!
からの…ライトハンドのユニゾン!
ダメだ…鼻血が止まらん…
そこにパットの6連フィルが入り、エリックのシャウトでイントロのメインリフが始まる!
…どうせえっちゅーねん…
そんなもん、気絶してしまうがな!
シンプルだが歴史モノなメインリフが終わると、そのメインリフをパームミュートでトーンを僅かに下げたAメロのリフが演奏される。そして…歌だ!
When I was a young boy
…モウダメダ…トウサン、カアサン…先立ツ不孝ヲオ許シクダサ…
そんなレベルのインパクトだった!
キャッチー!テクニカル!ソウルフル!
メンバー全員が「我ココにあり!」的なフレーズの応酬!
もうAメロが始まった時点で既に疲労困憊だ。
そして、Whoa-oh!と叫ぶBメロ。
たったこの一言だけでも頭にこびり付く!
更にサビ!
I'm addicted to that rush
Every time we touch
Never get enough
'Cause I'm addicted to that rush, yeow!
この…この時の歌といい…バックの演奏といい…
なぜサビで少し落とす!?グルーヴ感、最高じゃないか!
この段階で頭に上り過ぎた血が下りて来ないのに、そこから更にギターソロだ!
演奏の過半数はライトハンド!
いや、それ自体珍しい訳ではないが…その切れ味のハンパなさがハンパない!
そしてアウトロへ向かってガンガンに盛り上がる!
惚れてまうやろ~!!
…と、曲の凄さ、アーティストの凄さを書いたつもりだが…
実はまだある…
今書いた聴きどころ、誰でも知っている。
つまり、誰もが聴けたのだ。
コレだけの聴かせどころを一曲に詰め込むこと自体はできるが、それらを全てクリアな音像で聴かせるのは至難の業だ。
だが、このアルバムではキッチリ全てを滞りなく聴かせてくれる。
コレも相当に凄い!
しかも当時の機材でコレか!
アーティストも規格外ならエンジニアも規格外だ!
【アルバム全体の印象】
アルバム全体て見ると、ファーストアルバムは勢いと曲のバラエティに富んでいる。
ハードロック、バラード、ブルージー。
そして全ての曲の共通点はキャッチー。
どこを切っても最高な楽曲ばかりだ。
しかし…前評判から更なるハードかつテクニカル路線を期待したハードロックファンも少なくはなかった。
彼らにとっては少しトーンダウンした印象を受けたのかもしれない。
特にポール・ギルバートとビリー・シーンの技巧派達と一緒に歌うエリック・マーティンに対して、やや過小評価気味であったと私は思う。
二人の間に入って歌うのは可哀想…という声すらあった。
確かにもっとハイトーンなボーカリストはいる。
もっと激しいボーカリストもいる。
だが、こんなにもソウルフルで、かつ明るい声とキャラクターを持つボーカリストは少ない。
技巧派バンドと呼ばれがちなスタイルに、見事な表現力を付けている。
私はパット・トーピーの事はMr.BIGで初めてその存在を知った。
だからファーストアルバムを聴いて心底驚いた。
手数は多いしグルーヴ感バッチリだしパワフル!
その中で驚くのはグルーヴ感だ。
冒頭のAddicted To That Rushでもサビのタイム感が冴える!
I'm addicted to that rush ……タン!
と入るスネアの一発…痺れる!
このnoteではあまりテクニカルな話題は触れないが、やはりポール・ギルバートのギターに関しては言いたい…ライトハンド、スキッピング、激フェイザーによるベンディング…
で、私が驚いたのはTake A Walkだ。
途中から、変わったペンタ?変わったペンタ風?
よくわからないフレーズが飛び出す!
よくよく見てみたら、これはメジャーペンタとマイナーペンタを混ぜて弾いているのだ!
混ぜる事自体はブルースでもよくあるが、メカニカルに混ぜたのは恐らくポール・ギルバートが初めてではないか?
構造的にはメジャーペンタのポジションにマイナー3rdをところどころ混ぜているのだが…
まぁ…アイデアが凄い…
視覚的に弾ける上に聴感上はスリリング!だけどブルージー!
ユーモラスなポール・ギルバートならではだ。
ワンギターなハードロックバンドとは異なるアンサンブルも魅力だ。
そこはポール・ギルバートのボイシングの影響もあるが、ビリー・シーンの弾き方による影響も大きい。
クリーンと歪みを分けて出力し、要所でブーストさせる。
だから例えばギターソロでもバックが薄くならない。
更に音を重ねて弾く事も多い。
だからコード感が増してアンサンブルに厚みが出る。
ここで不思議なのが、ベースでそれをやるとバギ〜ン!と強い音になり過ぎるのだが、ビリー・シーンがやるとそうはならず、アンサンブルの厚みとして広がる。
【歳月】
張ってある動画を観てほしい。
ライブでの彼ら…私には3〜4年くらい前の映像に見えてしまう。
それはさすがにファン目線過ぎるだろう。
今の20代の皆さんからは古い映像に見えるかもしれない。
でも私には数年前だ。なんなら昨日だ。
それくらい、このライブビデオを私は穴の空く程見まくった。
今観ても、あまり懐かしいとは思えない。
最後のツアーも彼らだが、この当時の姿も私の中では彼ら。
我々ファンの間では、ずっと彼らだ。
(続く)
