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装置屋の生き残り加算術―100点の呪縛からの解放

ある部署に所属していた頃、
常に100点の品質を求められていました。
当然かと思います。
ものづくりは妥協したら終わる世界だからです。

だけれども、だけれどもです!
大きな落とし穴があります。
例えばこんな話。

50点、まだまだかな。
70点、あと少し。
80点、いいとこまできた。
90点、100点目指すぞ!
92点、このペースならいける!
95点、もう少しでゴールだ!
96、97、98、99、99.5、99.6、99.7……

これ、結構マジな話です。
90点を超えたあたりから
本当のゴールが見えなくなっている。

傍から見たら進んでいないように見える。
だけれども本人は必死に取り組んでいる。
だから誰も「100点の呪縛」に陥っている状態とは思わない。

気づいた時には、
「人かプロジェクトのどちらかが潰れている」
笑い話みたいなホラーです。

今日は、その呪縛から抜けて
「生き残る」
ための仕事のコツを書きます。

装置屋の話が中心ですが、考え方は広く応用できると思ったのでまとめてみました。

ポイントは3つです。

  • 最初から100点を狙わない。まずは80点でもリリースしてやり切る。

  • 点数は「成果物そのもの」だけで稼ぐ必要はない。

  • 仕事は連続。成果は足していい。

これは80点で妥協しようといった生温い話ではありません。むしろ、100点に近づくためにはどうしたらよいのか、私の経験をベースに、泥臭い試行錯誤の結果をまとめたものです。
本題だけで100点を取りにいくから辛くなる、そんな気づきを基に書きました。
私の経験が少しでも皆様のお役に立てればうれしいです。


1.   「100点」は人や会社で定義が違う

最初の気づきです。
100点の完璧主義が地獄になる理由は単純で、
「100点」
の定義が人や会社で違うからです。
経験上、ほぼ間違いなく違います。

だからこそ、スタートから100点を狙うと、
かなりの確率で破綻します。
最初に目指すのは「100点」ではなく、
「最低条件(合格ライン)越え」です。
合格ラインを満たしたら出す。
出してから磨き上げる。
これがゴールへの近道です。

ただし、100点の定義が違っても、
目指す方向、つまり目的と優先順位は必ず、すり合わせましょう。
逆向きに走り出したら目も当てられませんからね。


2.   「80点」は、雑に出すことではない。ボーダーを決めること。

大事なことを言います。
「80点で出す = 雑に出す」
ではありません。
そうです、
「80点は雑でOK、ではない!」
大事なことなので2回言いました。笑

この発想は大切です。間違えるとただの痛い人です。
そして何より、初回アウトプット50点はやめた方がいい。
それは改善余地ではなく、信用を落としやすい状態だからです。

私の事例を挙げて考えてみます。

まず、装置としての80点ボーダー、
つまり設計者が実現すべきプロの最低ラインを、
私はこう置きます。

  • 目的(仕様)通りに製品が作れる

  • 誰が操作しても、安全に、繰り返し再現できる

生産設備でここが崩れているのは、
改善の余地ではなく未完成です。
まずはこのボーダーを越えることを目指します。
そこから先が回して育てればいい領域です。

大事な例外があります。
安全・法規・重大品質などの部分です。
あとから取り返せない領域は明確な対象外です。
ここは最初から100点かそれ以上を取りにいきます。
仮にも自分の作った装置で、人がケガでもしたら嫌ですからね。


3.   80点でもリリースする意味。出さない完璧主義は0点。

ゴールに近づくには、80点でも一度出します。
そこから100点に近づければいい。
仮に80点でも目的が達成されたら、それは間違いなくひとつのゴールです。

この感覚が達成感を生みます。
そして、それは結果的に高評価に繋がります。
なぜなら、何も出力しなかった場合は0点だからです。
あなたの努力や頑張りは
表に出さないと評価にすらたどり着きません。

ここで大事なのは、80点で出したら終わりではないということです。80点は100点へ近づくための通過点です。
特に装置開発では、実績のないことに取り組むのが常です。だからこそ、少しでも早く実物で確かめる必要があります。ゴールへの最短ルートとして80点で出すことを選ぶのです。
この感覚は、他の仕事でも同じかと思います。


4.   発想の転換。仕事は連続、「足していい」─80点+気づきで120点!

意外と見落としがちな視点があります。
仕事も評価も、だいたい連続で途切れなく続くものです。
だから点数は
「その回で完結」
させなくていいのです。
皆さん単発で考えていませんか?

80点で一度「初期版」を出すと、現場から情報が返ってきます。
そこから改善できたら、80点に追加点が乗せられます。
仮に40点分の改善ができたなら、
80+40で120点です!
40点が仮に
「100点満点中の40点」
程度の評価でも、
80点の成果に足してしまえばいいのです。

具体例:イベント運営は、ほぼ「ぶっつけ本番」です

昔、イベント運営会社のバイトをやっていた頃の話です。

イベントというのは、その場限りだったり、
前例のないパターンが多いものです。
ぶっつけ本番がほとんどでした。
だから「完璧に固めてから開始」なんて現実的にできません。
とりあえず始めて、回しながら改善することが普通でした。

例えば、人の導線づくりひとつ取っても、
やってみないと分からないことがたくさんあります。

  • ブースAとブースBの人気が想定と違って、人の列がクロスする

  • 時間帯で人の波が変わる

  • 一箇所の詰まりが全体の渋滞に波及する

そこで、どう振る舞うかです。
ただ言われた通りに黙って交通整理をするか、
状況を把握して「列の並びをこう変えた方がいい」と提案するか。
誘導しながら、気の利いた一言を添えて混乱を減らせるか。

もうお分かりですね。
小さな結果や成果の積み重ねで、仕事の評価は上がります。

「イベントそのもの」はその場限りでも、
運営する人たちの仕事は継続的です。
今の私(装置屋)も同じです。
仕事は連続だからこそ、足し算でどんどん伸ばしましょう。


5.   点数の付け方(装置屋版)

ここで、私の「点数の定義」を置いておきます。

80点ボーダー(プロの最低ライン)

  • 目的(仕様)通りに製品が作れる

  • 誰が操作しても安全に再現できる

100点レベル(通常)

  • タクト、不良率、作業性に問題がない
    →現場が普通に回る安定状態ができている

120点レベル(上振れ)

  • 要求を超える精度・品質、処理能力の達成など。
    →作る側は気持ちいいが、コストも時間も飲まれやすいハイリスクゾーン


6.  100点を超えるには? ここが加算の本質です!

意外かもしれませんが、
点数は装置(成果物)だけで稼がなくてよいのです。
装置性能を99.6点から頑張って100点へ詰めるのも大事ですが、私はもっと違うところにリソースを使って得点を稼いでいました。

それは大きく3つに分類できます。
具体例でお伝えしましょう。

A:先回りの加点(地雷潰し)

相手にとって有益な知見を提供することなどが挙げられます。
例えば装置に直接関係なくても、お客様が分からない部分で、失敗しそうなリスクに自分たちが気づいていれば、その内容や改善策を先に伝えます。
ただ装置を提供するのではなく、お客様の目的に寄り添うパートナーであると認識してもらえればかなり高得点です。もちろん、本当にその気持ちがないとダメです。うわべだけの話は、むしろ逆効果なので注意しましょう。

B:復旧の加点(トラブル対応)

これは意外かもしれません。
トラブルこそチャンスです。どんなに自信があってもトラブルはつきまとうものです。起こってしまったことは仕方ありません。そんな時こそ、どう振る舞うかであなたの誠意が伝わります。
一生懸命にリカバリーしようとする姿勢が伝われば、それは、今後どんなトラブルが待ち受けていたとしても、あなたに仕事を任せる安心へと繋がります。
装置屋の例としては、例えば装置が止まってしまった時。原因特定、状況の切り分け、暫定対応までをどれだけスピーディーにこなすかにかかっています。トラブル時はお客様も焦っています。いかに冷静に、最大限の優先度で対応できるかが勝負です。
ここで大事なのは、相手に都度、こちらの進捗状況を伝えることです。どんなに素早い対応をしていても、それが伝わっていないと相手は不安になります。
今、何を調べて、どんな対策を打とうとしているか積極的に伝えましょう。

C:関係の加点(チーム化)

これは先に挙げた内容とも深く関係します。
簡単に言うと、売り手と買い手という関係を越えることです。例えば、守備範囲外での協力、情報提供や外部紹介などを積極的におこなったり、困った時に助けてくれた相手へ積極的に感謝を伝えることです。
特に「感謝を伝える」は大切です。お互い仕事だから当たり前ではなく、気持ちのある人間同士です。これは自分が売り手の場合だけでなく、買い手の場合も同じです。仕事をする時は常に双方向に意識を向けましょう。


さて、このA~C、実は得点がデカいです。
しかも装置より加算しやすいです。
本題で完璧を追い求める前に、まずここで点数を稼ぐ。
泥臭いですが、これが生き残り加算術の本質です。

お気づきかもしれませんが、
A~Cの中身は実は特段変わったネタではないです。
これらを本題と合わせて積み重ねるだけで
100点を越えてウルトラC評価になります。

(ここは内緒にしておくべきか……
あ、これは記事をウルトラC評価してもらえる?!)


付録:80点リリースチェッカー(装置屋版)

以下は、私の「80点で出してよいか?」判定表です。
※あなたの実務に置き換えて使ってみて下さい。

【リリースするのに必須の内容】

  • 安全に動く
    → 想定される操作・作業の範囲で、安全に扱えること。

  • 製品が作れる
    → 最低限の条件下で、目的の製品が作れる状態。

  • 最終的にこの装置でうまく動くイメージがあるか。
    →脳内に無いものは具現化できない。
     ふわっとしていても具現化できるイメージは必要。

【チェックの数で判断する内容】

  • 冗長性、拡張余地がある
    →100点へ進めるための下地。

  • 2の手・3の手案がある
    →代替手順/手動/バイパス/段階運用など。

  • 次の改善日程が決まっている
    →「いつか直す」をやり続けて呪われないため。

  • 全体納期と出戻り費用のバランスが見えている
    →言われた納期だけに囚われてリリース判断をしないため。

  • 頼れる人、使えるリソースはあるか
    →ひとりで抱え込んで詰まないため。

  • 心身ともに正常か?
    →間違った判断を避けるため。

※8/9なら出してOK。7/9は要相談。
※例外:安全・法規・重大品質は妥協しない


7.   80点で出す「真の意味」─装置はツール。でも、あなたは道具じゃない。

装置屋が言うのも何ですが、
機械は目的を達成するためのツール、つまり道具です。
お客様は装置そのものが欲しいわけではないです。
課題を解決したいのです。

・新製品を量産したい。
・不良が多いから良品率を上げたい。
・人が足りないから作業を楽にしたい。

我々は「装置」という道具で、
その目的を一緒に達成する手助けをしています。
この姿勢が伝わると、80点で一度出してから
育てる判断は、失礼でも逃げでもなくなります。
むしろ「目的達成に最短で近づく」選択になります。

……と、ここまでは綺麗な話。
(もちろん本音だし嘘はありませんよ!)

しかしながら世の中には、
様々な考え方と立ち位置があるのも事実です。
「目的達成」という言葉が便利に使われすぎていませんか?
いつの間にか当初の目的がすり替わり、
さらに気づけば、無理難題によって人がすり減る。
それでもなぜか「うまく回っている」ように見える。
またもやホラーです。

くれぐれも自分たちが「道具」にならないように。(笑)
自身でしっかりと目的をもって仕事に取り組みましょう。


編集後記─100点の呪縛は、いつのまにか訪れる

私、自己紹介を除くと
実はこの内容がnoteの初投稿で、だいぶ慎重になっていました。
この記事の初稿は数時間で書けたのに、
寝かせては、いじって……を繰り返し、
気づけば1か月以上経っていました。

ふと、いつものように内容を見直していると、
とんでもないことに気づきました。
私自身が今、100点の呪縛にかかっているではありませんか!

その瞬間、肩の力が抜けて、笑いが止まらなくなりました。
ミイラ取りがミイラになる。まさにこのことです。

逆にこの気づきが、投稿ボタンを押すきっかけになりました。

もしあなたが、
今の仕事を完璧に仕上げて出そうとしているのなら。
金縛りのように動けなくなっているのなら。
この投稿が、あなたの背中を優しく押せることを
願っています。


読んでいただきありがとうございます。

本記事は、創作大賞の応募に向けて内容を再構成したものです。応援してもらえたらうれしいです。

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