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四国四端を制覇するツーリング(中編):こんなところにいられるか! 最西端と豪雨の愛媛県編。

前編の続きです。
四国四端を原付二種スクーターで巡った旅の記録です。

動画もアップしています。

こちら、最果て研究所。

ツーリングも三日目。
愛媛県に入る。
愛媛県と言えば、夏目漱石の『坊ちゃん』の舞台である。

松山市内には坊ちゃん列車なんかも走り、観光資源として大いに活かされているが、読んだことがある人は少ないのではないかしら。
実際読んだうえでのことなら、なかなか厚顔無恥である。

『坊ちゃん』は要するに、東京からやってきた青年が地方で散々な目にあった末、「こんなところにいられるか」と言って東京に帰るお話である。
四国は坊ちゃんにとって試練の地。

わたしにとっても愛媛県は辛いことの多い地であった。
でも、そこをぐっとこらえて四国を巡ってみよう。
必ず仏のような微笑を浮かべてくれるはずである。

ポルコ・ロッソが住んでいそうな高茂岬に感動。


三日目の朝、まずは絶景と名高い(ツーリングマップルの受け売り)高茂岬に行ってみる。
このあたりは海岸線が入り組んだ、いわゆるリアス式海岸と言われる地形である。
ぐねぐねとした海沿いの道を進んでいくと突然に景色が開ける。

鬱蒼とした周囲の風景に不釣り合いなほど整備された駐車場にバイクを停め、歩いていくと、圧倒的な絶景が広がる。
スコットランドとかニュージーランドとか、ああいう大パノラマを誇る国々の岬だと言われても信じてしまう風景である。
岬にはだれもおらず、完璧なまでの朝の空と相まって、気分爽快。

映画の中のワンシーンみたいな景色をくるくる回ったりしながらご機嫌に歩いていく。
角砂糖のようなかわいらしい灯台があり、さらに遠くのほうにポルコ・ロッソ(紅の豚の主人公)が隠れ家にしていたみたいな島を見つける。

しばし、風に吹かれてみるのもよい。
自分に酔いしれるのもよい。
ぜひ行かれてみてはいかが?

高茂岬。特に朝はおすすめ。夕方もいいらしいです。


長い長い海岸線の果てに、、、


高茂岬をあとにしてこの旅では因縁の地となる宇和島を抜け、海沿いをひたすら北上する。

引き続きリアス式海岸の複雑な海岸線。
みかん畑と鄙びた漁村が点在する中を延々走る。
海は驚くほどに澄んでおり、絶景である。
が、いかんせん道が狭く、意外と交通量も多い。
油断したらあの世に転生すること請け合いである。

宇和海を望む。真っ青な海とブラインドコーナー。


そんな死線を潜り抜けた者にはさらなる絶景が待っている。
佐田岬半島である。

「日本一細長い」として有名な佐田岬半島。
巨大な風車が林立する中、整備された道を爽快に走り抜ける。
どんどん景色がすぼまっていって、どん詰まりに向かっている感をひしひし感じる。
しかも、その最果てまで集落が点在し、どれもが寂寥とした雰囲気をまとう。
半島好き垂涎の的である。

きれいな駐車場にバイクを停め、佐田岬灯台、つまり四国最西端を目指して歩いていく。
ただし、この道は長く険しい。
足腰が弱い人にはちょっとお勧めできない。

ジャングルみたいな森を延々下っていくと、突然景色が開ける。
四国はいつも突然である。
険しい岩礁に砕け散る波しぶき。
強い風が吹いている。
力強くも、爽やかである。
が、ここが最果てではない。
さらにもう一山登らねばならないのだ。

もう、疲れたよ。
と、テンションはジェットコースターのごとく、乱高下する。

運動不足の体にムチ打ちながら登っていく。
すると、また景色が開け、謎の港に下る道と公衆トイレがある。
こんなところに何故?
と、思ったが、実は旧日本軍の砲台の跡があるらしい。
こんな僻地でむっつりと砲台にこもるのはさぞ大変だろう。
それも気のいい奴と一緒だったらいいけれど、性格のひねくれた上司と一緒にずーっとひきこもらされたら、たまったものではない。

最果てはあくまで自主的に来るからいいのである。

そんなことを考えていると、目の前に階段があり、その上に灯台が見える。
最後のひと踏ん張り。
ようやく四国最西端、佐田岬灯台に立つ。

眼前には九州がはっきりと見える。
ここより西に四国はない。

未開の大地(個人的に)九州があるだけである。

(と言いつつも、本当はもうちょっと先が見えていた。岩礁かもしれない。行くことができるかもしれないけれど、キャスト・アウェイみたいに取り残される可能性もある。怖いので行くのはやめました。)


佐田岬灯台からの眺め。九州が見えます。

悲劇への序章:明日にかかるのは?


さて、ふごふごと息を切らしながらようやく駐車場に戻ってきた。

後は一路、本日の宿泊地松山を目指すのみである。
ここから2時間ちょっととのこと。
意外と近い。

しかも、待ち受けるのは絶景ロードとして名高い「ゆうやけこやけライン」である。
知らない方もおられようから補足する。
ゆうやけこやけラインとは伊予灘の穏やかな風景を眺めながら、ずーっと海沿いを走ることができるという、日本屈指のシーサイドロードである。
市街地はほとんどなく、ゆえに信号もない。
海の見える駅として名高い下灘駅も道中にある。

さらにさらに。
これから夕暮れの時間となっていく。
ゆうやけこやけラインの愛称が示す通り、この道を走りながら望む日没は絶景であるらしい。

疲労は最大値までたまっているが、否応なしにテンションは上がる。
勝利を約束された凱旋である。
くねくねとした道を、鼻歌交じりに走っていく。

佐田岬半島を抜けると、行く手には黒雲がかかっている気がする。
だけれども、当時のわたしは絶好調。
ちょっとした不安、違和感は脳裏によぎりつつも、天気予報など見る気もなく、余裕で走っていた。
それが何を意味するか、、、?
すぐに身をもって知ることになる。


長い長いトンネルを抜ければ、ゲリラとの戦い


さて、国道378号線は八幡浜市から長浜町に入る中で一山こえていく。
長い長いトンネルがある。

あんまりにも長すぎて外界の様子はわからない。
正直ちょっと違和感はあった。
急に風が冷たくなって、にわかに暗くなり、やたら雲がもこもこしていた。
だから、何だというのだろう?

朝、天気予報を確認した時点ではずっと晴れ。
現に、ほんの一時間前まで、暑い暑いというくらいの晴天であった。
雨が降るなんてことがあるだろうか?
いやあ、ないね。ないない。

そして、トンネルを抜けた。
始まりはいつも突然である。
四国はいつも突然なのだ。

ぽつり、、、と雨粒が顔にあたる。
あれ? と思う間もなく、あっという間に大雨である。

これが世に聞く、ゲリラ豪雨である。
完全に奇襲。

バツん! バツん! と、驚くほどの勢いで雨粒が体を打擲する。
マゾヒストならば大歓喜かもしれないし、中にはそういった領域に到達したライダーもいると聞く。
だが、残念ながらわたしはそこまでの神髄に達することはできない。

うわー! と、叫びながら、急いで路肩にバイクを停め、慌てて雨具をリュックから引っ張り出す。
雨に降られるなんて考えてもいなかったので、雨具はリュックの底である。

この準備の悪さが、さらなる悲劇を引き起こすのであるが、それは後程。


急いでレインコートを取り出す。

とにかく、レインコートを体に巻き付けて、走り出す。
その場にとどまって雨が小降りになるまで待つという選択肢も、今考えるとありえたかもしれない。

しかし、当時のわたしにそんなことを考える余裕もなく。
走り出すと、何たる辛さだろう。
雨に濡れた体は冷える、視界も悪い、対向車からは容赦ない水しぶき。
おまけにアクションカメラはコートの中。

しかも、絶景ロード「夕やけこやけライン」が容赦なく牙をむく。
仏のように穏やかだと言われていた伊予灘は、黒雲の下で渦を巻き、鬼のようにどしゃばしゃと雨風を叩きつけてくる。
しかも、ずっと海沿い、快走路。
ということは休憩する場所もなければ、止まれる場所もない。
子羊のようにぷるぷる震えながら走り続けるしかないのだ。

そうなると、出てくるのは世間への恨みつらみばかりである。
わたしが何をしたというのか。
ただ、最果てを目指して、一人ぽっちで旅をしていただけなのに。
まじで、なんなん、これ、、、。

そして、走ること数十分。
ようやく道の駅ふたみにたどり着いたころには、雨は小降りになっていたのでした。
伊予灘は再び穏やかな顔を取り戻し、海上には天気の境目が見えていました。

日は暮れ。
帰宅ラッシュの渋滞の中を命からがら松山市内のホテルにたどり着く。
外食する気力もないので近所のスーパーでお総菜を買ってきて夕食とする。

一息ついて、ようやく今日の走行映像でも確認しておくか、、、
と、思ったところで、あれ? と、首をひねる……


泣きっ面に蜂。第二の悲劇、落とし物。


ツーリング四日目。

ところで、夏目漱石の『坊ちゃん』には、迷子の迷子の三太郎という唄が出てくる。
江戸時代には迷子を捜すときに、この唄を太鼓や鉦を鳴らしながら歩いたらしい。

できることなら、もう一度、迷子の迷子の三太郎を歌ってほしい。
わたしのために。

というわけで、落とし物をしました。
昨日の夜、荷物をひっくり返してみた。
しかし、ないのだ。
アクションカメラの充電器とSDカードがない。

このままではアクションカメラは充電できず、これまでの旅の記録は消え失せ、これからの旅の記憶はわたしの脳内にのみ存在することになる。
だが、手がないわけではない。

落とした場所に心当たりがある。
昨日、慌てて雨具を取り出した山中である。
というわけで、朝から落とし物回収に出かけます。

まあ、実際、落としたポーチを見つけたところで雨でびしょびしょなわけですが、、、
空は曇天。
精神面と相まって、何もかもが灰色に見える。

松山市内を抜け、夕やけこやけラインを再び走る。
このころには天気が回復し、絶景路が本気を出す。
だけれども、落とし物をしているのでそれどころではない。

夕やけこやけライン。苦い思い出。

なんにもない山道の脇をひとりうろうろする、わたし。
さぞ奇妙に映ったことでしょう。
しかし、ない。どこにもない。
数十分探してみたけれど、どこにもない。
それにしても、ゴミ多いね。

もう、最悪だ。

というわけで、とぼとぼ松山市内に戻りました。
あ、絶景駅の下灘駅も一応寄った。
観光客、いっぱい。

憂鬱な気分でバイクに乗る気にもなれない。
松山市内を観光する。
ホテルの裏手には松山城がそびえ、観光地には事欠かない。

でも、灰色の気分で観光する松山はどこまでも灰色である。
正岡子規大先生も真っ白である(石膏像)。

坂の上の雲ミュージアムでクリームソーダを飲んで、ため息をつく。
はあ。
昭和の甘みが脳に染み渡る。
すると、一つの考えが浮かんでくる。

そういえば、昨日、宇和島市内でSDカード交換したなあ。
一応、あのコンビニに電話をかけてみるか、、、。
でも、駐車場だったしなあ。
捨てられるか、盗まれるか、踏みつぶされるか、しているだろうなあ。

 電話中……

「もしもし、昨日落とし物しちゃったものなんですが」
「はあ」
「赤いポーチなんて、届いてませんよね、、、」
「ちょっと見てみますね、、、ああ、ありますよ。ポーチ。駐車場に落ちてたんで、拾っておきました」
「!!」

こうして天照大神はほほえみ、世界に色が戻ったのでした。
いやあ、ほんとうに宇和島の人は優しい。
心から、ありがとうございました。


やさしさに包まれたなら~宇和島観光


ツーリング五日目。

天気はいまいち。
でも、昨日、人のやさしさに触れて、今日はだいぶ機嫌がいい。

四国は最高の土地である。

とりあえず、松山から宇和島まで一昨日来た道を戻る。
そして、件のコンビニへ。
仏のような微笑みを浮かべた店員さんが落とし物を渡してくれる。

ありがとう、ありがとう。
世界のすべてに感謝を。

アイスコーヒーとメロンパンを買いました。

その後、最高の町、宇和島を観光する。
宇和島城も、よかった。
法華津峠も、よかった。
鯛めしも、たいへんよかった。

ビバ、四国!
万歳、宇和島!

というわけで、その日は松山の南、大洲に一泊して、明日からツーリング後半戦頑張ろう、と思って幸せな眠りについたのであった。




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