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広告費と研究費を最も使っている会社

[要旨]

公認会計士の金子智朗さんによれば、トヨ夕自動車は、売上高と当期純利益の両方において、何度も日本で1位になっている会社ですが、同時に、広告宣伝費と研究開発費を最も使っている会社でもあり、厳格なコスト管理だけでなく、積極的なコストのかけ方も、売上や利益を伸ばす要因になっているということです。

[本文]

今回も、前回に引き続き公認会計士の金子智朗さんのご著書、「同じモノを売っているのに、儲かっている会社、儲かっていない会社」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、金子さんは、売上に貢献するコストを「善玉コスト」、売上に貢献しないコストを「悪玉コスト」と言っているそうですが、重要なことは、善玉コストと悪玉コストを見極めて、悪玉コストだけを削減し、善玉コストを増やすことによって売上をさらに増やすことであるということであるということについて説明しました。

これに続いて、金子さんは、トヨタ自動車は戦略的にコストを支出しているということについて述べておられます。「日本企業の中で、広告宣伝費を最も使っている会社はどこだと思いますか?また、研究開発費を最も使っている会社はどこだと思いますか?答えは、両方ともトヨタ自動です。トヨ夕自動車は、売上高と当期純利益の両方において、何度も日本で1位になっている会社です。

リーマン・ショックで少々状況が変わりましたが、リーマン・ショック以前のトヨタ自動車は、連結売上高は20兆円を超え、連結当期純利益(税引後の最終利益)は1兆円を超えていました。1兆円といえば売上高でも達成するのは大変な金額です。売上高が1兆円を超えるのは、約4000社ある上場企業のトップ100社ぐらいだけです。全日本空輸、東京急行電鉄、花王などが大体売上高1兆円です。ユニクロを展開するファーストリテイリングでさえ、2009年度にやっと8000億円を超えたところです。

トヨタ白動車は、これらの会社一つ分の売上を純利益で稼いでしまう会社なのです。トヨタ自動車は、売上高(約20兆円)でも首位を争う会社ですから、利益が大きいのはある意味当然かもしれません。しかし、毎年、売上高で首位を争っている日本電信電話(NTT)の連結当期純利益はトヨタ自動車の約半分しかありません。このことから、トヨタ自動車の利益が1兆円を超える理由は、売上規模の大きさ以外にもあることが分かります。トヨ夕自動車といえば、まず思い浮かぶのは厳しいコスト管理です。

一般的に製造業は、以前から激しい国際競争にさらされていることもあって、どこも厳しいコスト管理をしていますが、そんな中でもトヨタ自動車は、乾いた雑巾をさらに絞るとも形容されるほど、徹底した原価低減をしています。そのような厳しいコスト管理が高い利益水準を支えていることは言うまでもありません。ただ、その一方で、広告宣伝費や研究開発費を日本で最も使っているのもトヨタ自動車なのです。広告宣伝費や研究開発費が善玉コストかどうかは難しいところです。

これらのコストは、投入額と売上との間の因果関係が不明確なコストの代表例だからです。これらのコストは、かけたからといって売上に直結するものではなく、効果的な広告を打ち、意味のある研究開発をしなければ、売上には貢献しません。しかし、少なくとも何でもかんでもコストを削減しているのではなく、必要と考えるコストは惜しげもなく使っているということだけは言えます。徹底したコスト削減のイメージが強いトヨタ自動車ですが、実は使うコストは思い切り使うという一面もあるのです」(101ページ)

金子さんのご著書は2011年に出版されたものなので、引用部分のデータとしては古いものになっていると思いますが、トヨタが、広告や研究開発に積極的にコストをかけているということに変わりはないと思います。そして、これも金子さんがご指摘しておられるように、広告や研究開発が売上との連関が不明確であることから、最終的には経営者の判断による支出だと思いますが、少なくとも、きちんとした目的の下に支出していることは間違いなく、こうした強い意図をもって行われた支出は、その後、仮に売上との関連が薄かったとしても、すぐに習性され、より効果的なコストに支出されていくことになるでしょう。

ところで、こうした積極的な支出で思い出す事例は、サントリーのビール部門です。同社のビール部門に関するデータは見つからなかったのですが、日経情報ストラテジーの記事によれば、1963年に参入してから45年間赤字が続き、2008年に初めて営業利益30億円を計上したそうです。サントリーが、45年間もビール部門が赤字であったことは、同社の主力商品のウィスキーだけでは、将来、顧客の嗜好が変わったときに対応できないという危機感があったからのようです。

結果として、消費者の嗜好がかわり、ビールの需要が増えたところで、サントリーはプレミアムモルツというブランドでそれに応え、ビール部門を黒字化することができたようです。もし、サントリーがビールに参入していなければ、同社は消費者の授業を掴むことができず、業績を下げていたかもしれないということを考えると、45年間の赤字は、「善玉コスト」だったと言えるでしょう。

もう1社、私が注目している会社は、AbemaTVです。同社はインターネットテレビ局として、2016年に番組の配信を開始しましたが、赤字額の大きいことでも知られています。詳細な業績は把握してませんが、同社の2024年9月期の累積損失は1,300億円以上あるようです。

その一方で、同社は広告収入を増やしてきており、今季には単年度黒字を実現するかもしれません。そして遠くない将来、累積赤字も解消するのではないかと、私も考えています。2社の事例から言えることは、善玉コストは、ある程度、期間をおかないと明確に善玉コストであると言えないことだと思います。しかし、時間がかかってでもコストを善玉コストにしていくことに、経営者の醍醐味があると私は考えています。

2026/6/16 No.3471

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