雑記043:アメコミ邦訳本でおもうこと
(この記事は僕の憶測を含んでます)
90年代から長年アメコミの邦訳を出版し続けてきた小学館集英社プロダクション(以下小プロ)が、MARVELとの独占契約終了でMARVELのアメコミ邦訳を販売終了(電子を含め)することになったのですよ。
ただまぁ、90年代から邦訳本を追っかけて、ほぼほぼ購入してきた身としては、結構モヤモヤしていて印象は悪いです。
と言うのも、映画MCUのインフィニティサーガでMARVELがイケイケの時、MARVEL関連、特にアベンジャーズの邦訳を出していたのはライバル会社のヴィレッジブックスだったのです。
まだMCUでアベンジャーズが結成されてない頃からアベンジャーズシリーズをガンガン邦訳。MARVELの大型クロスオーバー「シビルウォー」を通販限定でも関連コミックを出版したりしていました。MCU人気の上昇とともに、邦訳本でも結構な売り上げを出していたと思います。
多分、小プロはあまり快く思っていなかったのでしょう。「エンドゲーム」でMCUのインフィニティ・サーガが終了したあとの2020年、小プロは突然MARVELと邦訳出版の独占契約を結びます。
2021年1月の新規契約分より、マーベルのアメリカンコミックスの邦訳版はすべて小学館集英社プロダクションが展開する出版レーベル「ShoPro Books」より刊行致します。
どうですか、この勝ち誇ったプレスの文言。
割を食ったのはヴィレッジブックスです。看板コンテンツを取られ、2022年の「ソー:ゴッデス・オブ・サンダー」「トランスフォーマー:ダーク・サイバトロン」邦訳を最後に、ヴィレッジブックスはアメコミ邦訳本どころか出版事業から撤退します。
小プロがライバルのヴィレッジブックスを「潰した」状態になったわけです。
さぁこれでライバルも居なくなり、小プロの天下だぜ!となるはずでしたが、様々状況の変化が小プロを襲います。
ひとつはMCUの頭打ち。マルチバースサーガが思った以上に伸び悩み、MARVEL自体の需要が減っていきます。
もうひとつは円安。契約料がドルベースだと同じなのに、円ベースだと約1.5倍(2020年だと1ドル105円前後。2025年は150円超)に跳ね上がったわけですから、独占だと多分億単位だと思うので、かなり厳しかったと思います。
そんなこんなでたった5年で独占契約は終了し、MARVELの邦訳出版は終了し、再販さえもできない状況に陥ってしまったのです。
MARVELの邦訳に関してはペンペン草も残らない状況にしてしまったのは、意図してなかったかもしれないとは言え、小プロは罪深いなぁ、とモヤモヤしてしまいます。
契約終了発表前に、ヴィレッジブックスの過去邦訳作をひと月数十冊ペースで電子書籍を刊行していたのは罪滅ぼしなのかな、と思ったり。
小プロは今後MARVEL以外の出版社(DCとか)の「再販は」刊行を続けるようですが、多分、アメコミ邦訳自体から撤退かな、と僕は思っています。
ただ、状況の理解が難しいな、と思う点が2つあります。
ひとつは、小プロがMARVEL作品の再販や電子書籍販売まで終了する、という点です。
DC作品のように再販できるようにすればいいのに、それすらしない、となると、MARVEL側からの要請と考えるのが妥当でしょう。そこまでするとなると、結構小プロとMARVELに溝があるのかな、と感じています。
もうひとつがアシェットの「マーベル グラフィックノベル・コレクション」シリーズの存在です。独占契約を結んだ、たった2年後の2022年に別会社からMARVELの邦訳本が出たのは結構腑に落ちません。
アシェットのコレクションは元々米国で280冊くらい出版されていたらしいので、独占契約前の契約なのかな、と思いますが、このシリーズが落とした影響は少なくはないのかな、と思っています。
もう風前の灯火に近いアメコミ邦訳本界隈ですが、明るい動きもあります。
フェーズシックス社がDCタイトルの邦訳を本格的に始めたようです。
元々「ソニック」や「ゴジラ」などの日本のコンテンツのアメコミや、「プレデター」などの二大出版社以外のアメコミを細々と出版していた会社です。
本国で評価の高い「アブソリュート・バットマン」シリーズが刊行されるのは嬉しいですね。映画「スーパーガール」に合わせて原作の「ウーマン・オブ・トゥモロー」も刊行してくれるようでありがたいですね。
残る会社は「サンドマン」を全部刊行する勢いのインターブックス社、「プロビデンス」などのアラン・ムーア作品を刊行する国書刊行会くらいでしょうか。
2度目のアメコミ邦訳本冬の時代が来たわけですが(1度目は90年代アメトイブームが去った2000年頃)、細々でもよいので出続けて欲しいです。僕も買い続けます。
