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創作大賞小説部門応募作 『山の民 サンカ』 その9 日本にはサンカと呼ばれ蔑まれた山の民が居た。彼らを書き残したい。 


最終章 現在地

 現在、私は五十五歳になる。人生も晩年に入っている。小学生の時に読んでいた愛読書の週刊少年キングはすでになくなり、その代表作だった『銀河鉄道999』の作者の松本零士さん『超人ロック』の作者聖悠紀さんも亡くなった。
 おじいさんもおばあさんも九十歳を超える天寿を全うし亡くなった。おじいさんが亡くなる時は、おばあさんを枕元に呼び、
「手を握っといてくれ」と言って、
「握ったよ」とおじいさんの手をギュッと握ると、更に、
「もっと強く握ってくれ」と言って、
「はいよ、こうか」と言ってきつく握ると、
「離すなよ。ずっと握っとけよ」と言ってそのままおじいさんは亡くなった。その二年後にはおばあさんも亡くなった。
 淡路島には僕の子供の頃にはなかった明石海峡大橋が架かり、純粋な島ではなくなった。その後開発が進み、農村と漁村の素朴な島から関西を代表する観光地になった。その変わりようは凄まじく、山の人たちの住処だったと思われる場所があった山は、その山そのものがなくなっている。他にもいくつもの山がなくなり、観光施設や高速道路やその駐車場になった。
 サンカの残したものはなにもない。私の中におじいさんとおばあさんの思い出とともに残るだけである。
 時は過ぎ去るのみである。
 スマホ一台で世界と繋がることができる現代の超近代文明の中で生きる私たちから見れば、彼らの暮らしは同じ人間ではありつつも獣の暮らしに近い。しかし彼らは獣かと言えば、決してそうではない。
 やはり彼らは人間だ。
 自然とともに生き、獣とともに生き、僕の大好きなおじいさんとおばあさんに宝物のような幸せな時間をプレゼントしてくれた。
 彼らは幸せとは何かを知っていたのだろう。
 彼らの人生を思う時、決して自分が彼らのように生きれるとは思えないし、そう生きたいとも思わないが、彼らの人生を羨ましく感じる時もある。今でも山を見れば、彼らが山河を駆け巡っているのではないかと思ってしまう。
 彼らはこの国、日本にいて絶滅したのである。

終わり

#創作大賞2024

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神石直樹 チップありがとうございます。めっちゃ励みになります。ホントに嬉しいです。