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note創作大賞 恋愛部門応募作。『50代からの生き方、恋愛についてのあれこれ』その3。家庭からの独立宣言。自分の人生を歩み始める。


独立宣言

 今日、同窓会がある。
 同窓会はこれまでにも何回もあったけれど、今回の同窓会は違う。孝太が来る。
 孝太は私の高校時代の恋人。最も熱く生命力が爆発的に溢れていた高校時代の三年間をほぼ一緒に過ごした人。青春の思い出と言えば、それは文化祭でも試験勉強でも部活でもない孝太だ。青春時代のすべては孝太で埋め尽くされている。
 孝太に会いたい。ずっとそう思ってきた。でも、実際に会うのは怖かった。自分の気持ちがどうなるのか分からなかった。もしお互いにあの時のような気持ちになってしまったら、制御できるとは思えなかった。
 孝太が私に会いたがっていると人づてに聞いたことがあった。地元に帰ってきた時に、高校時代の友人たちと呑み、一緒に居た友人が教えてくれた。私は居ても立っても居られずに会おうとした。しかし、その話は、私の高校時代からの友人の悦子にも伝わり、悦子は会えば家庭を壊してしまうと、反対して会わせてくれなかった。今になれば感謝している。
 私は今年の夏に五十歳になった。息子も無事大学を卒業し就職した。最初はちゃんと朝起きられるだろうか、働くことできるのだろうかと心配していたけど、なんとか弱音も吐かずに毎日家を出ていく。夏も過ぎ秋になる頃、息子の顔にも余裕が見えてきた。その顔を見て、あぁ子育てが終わったと実感した。肩の荷が降り、気持ちが急に楽になった。
 それで私は、家庭内で独立宣言をした。
 家事はもう自分のためにしかしない。
 自分の人生を生きる。
 家庭を大事にする。でも、その前に自分をもっと大事にする。
 昔は人生五十年と言われていたけど、今は人生百年時代と言われている。
 女性の平均寿命は九十歳に近づいている。
 子育てが終わっても、後、私の人生は三十年も四十年もある。
 とことん人生を楽しもう。
 夫は夫で人生を楽しめばいい。協力すべきところは協力しながら生きていけばいい。
 夫はパートナーであり私の子供ではない。私が世話をする義務はない。それに我が家では、私もフルタイムで働き、経済的に自立している。正直私のほうが収入は多い。対等の立場で生きるパートナーで生きたいという私の希望は何も間違っていない。
 夫は理解してくれた。そりゃ理解してくれるだろう。
 仕事終わりに同僚と呑んで帰って来る夫を見て、どれだけ私が羨ましいと思ったことか。仕事終わりにすぐ帰り、家事をする。休日は雑用の嵐で一日終わる。子育ても終わった。
 子育ては終わった。
 もう十分だろう。

 私は家庭を持ちながら独立した一人の人間として五十代からの後半の人生を生き始めた。
 


#創作大賞2024 #恋愛小説部門

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神石直樹 チップありがとうございます。めっちゃ励みになります。ホントに嬉しいです。