また一つ、浪費をしてしまった。
また一つ、浪費をしてしまった。
今回買ったのは、
小さいエアーブラシと、
真光陽オリエントジャパン
「真・黒色無双」
という塗料である。
名前からして強い。
ただの黒ではない。
真・黒色無双。
もう塗料の名前というより、
必殺技である。
そもそも、なぜこんなものを買ったのか。
理由は一応ちゃんとしている。
水槽動画を撮りたいからだ。
大きな水槽をスマホで正面から撮ると、
ガラスにいろいろ映り込む。
撮影者。
部屋。
三脚。
スマホ。
このへんがうっすら出てくる。
そこでまず、
背景を黒い布で隠した。
三脚も使う。
CPLフィルターも持っている。
撮影側をなるべく暗くして、
ガラスへの反射を減らす。
ここまでは、
普通の撮影対策である。
問題はここからだ。
最後に残ったスマホの映り込みを見て、
「スマホケースを異常に黒くすればいいのでは」
と思った。
そして普通のつや消し黒ではなく、
真・黒色無双
を買った。
なぜそこまで黒くする必要があるのか。
たぶんない。
黒い布でもいい。
普通の黒いケースでもいい。
遮光フードでもいい。
もっと言えば、
撮影角度を工夫すればいい。
でも、
私はあの黒を使ってみたかった。
たぶんこれが真相である。
しかも塗るために、
小さいエアーブラシまで買った。
スマホケース一個のために。
この時点で、
水槽撮影の改善という話から少し離れている。
いや、
だいぶ離れている。
でも買ってしまった瞬間から、
急に世界の見え方が変わった。
家の中を見ながら、
「これ、黒色無双にしたらどうなるんだろう」
が始まった。
まず、
3Dプリンターで出した鉢。
これはやる。
植物の緑だけ浮いたら、
かなりかっこいい。
次に、
Ronji人形。
これもやる。
顔も服も全部、
光を吸う黒。
もう人形というより、
小型の異変である。
ディフューザーも気になる。
イヤホンケースもいい。
ポスターフレームもいい。
今まで作ったポスターの黒い部分だけ、
黒色無双で塗り直すのも面白そうだ。
デジタルで作った黒に、
物理的な黒を上書きする。
過去作品に、
闇のレイヤーを追加する感じである。
さらに、
ヴィンテージ屋に行って、
よくわからない昔の安い置物や、
謎の陶器や、
古いガラス物なんかを買ってきて、
全部真っ黒にするのもいい。
500円ぐらいのガラクタが、
急に
「何かを封印している物」
になるかもしれない。
3Dプリンターで動物を出して、
全部黒色無双にするのもやりたい。
猫。
鹿。
フクロウ。
熊。
題して、
「光を吸う動物園」
である。
まったく必要ない。
でもかなり見たい。
キャップの正面に、
星形のステンシルを作って、
そこだけ黒色無双を吹くのもやりたい。
普通の黒い星ではない。
そこだけ光を返さない星。
たぶん、
ものすごくかっこいいか、
ものすごく失敗する。
どちらでもいい。
被害は大きい方が楽しい。
これは大事である。
安全に試す。
失敗しないようにやる。
もちろん正しい。
でも遊びとしては、
ちょっと失敗した方が長持ちする。
私は昔、
スマホゲームを三年くらいやっていた。
ずっと一人で。
なぜ続いたのか。
たぶん下手だったからだ。
上手かったら、
もっと早く終わっていた気がする。
下手だから、
毎回少し課題が残る。
うまくいかないから、
次もやる。
だから今回も、
エアーブラシを極めるつもりはない。
模型塗装の達人になる予定もない。
色彩理論も、
たぶん深くはやらない。
少し吹ける。
ちょっとムラになる。
たまに失敗する。
でも、
「これ塗ったらどうなるんだろう」
が続けばそれでいい。
Ronji式では、
極めないくらいがちょうどいい。
専門家にはならない。
でもなぜか道具だけ増える。
そして今回の道具は、
小型エアーブラシと、
異常に黒い塗料だった。
ちなみに本当は、
Vantablackが欲しかった。
でもあれは、
普通に買って家で吹いて遊ぶようなものではない。
残念である。
もし普通に買えていたら、
鉢が消え、
人形が消え、
キャップの星が消え、
最後にはスマホそのものを見失っていたかもしれない。
そう考えると、
真・黒色無双くらいでちょうどいい。
そもそも最初の目的は、
水槽動画のスマホ映り込み対策
だった。
なのに今では、
「何を黒くするか」
しか考えていない。
必要だから買ったのか。
使いたいから必要だったことにしたのか。
もうよくわからない。
たぶん今回は、
必要経費に擬態した遊興費
である。
水槽撮影の改善という、
立派な建前を背負った浪費。
でもこういう浪費は、
買った瞬間に遊びが増える。
何かを作る。
ではない。
何を闇に落とすか。
しばらく、
そんな遊びをしてみようと思う。
また一つ浪費をしてしまったぜ。
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