見出し画像

通訳なのに、感情が出てしまった日



通訳は、自分の意見を言う仕事ではありません。

私はいつも、「話した人の言葉を、そのまま相手に届けること」を一番大切にしています。

だから、自分の感情はできるだけ表に出さない。どちらかの味方にもならない。どんな場面でも中立でいる。それが通訳としての役目です。

でも先日、その一線を越えてしまいました。

その日は社内での会議でした。

参加者は普段から一緒に仕事をしている人たちで、お互いの性格や考え方もある程度分かっているメンバーでした。

会議が進むにつれて、同じ説明や言い訳が何度も繰り返されました。

私はそれを何度も訳し続けながら、「本当にこのままでいいのだろうか」と感じていました。

通訳は、相手の言葉をそのまま伝える仕事です。

でも、人間です。

何時間も同じ内容を聞き続け、現場の苦労も知っているからこそ、感情が少しずつ積み重なっていきました。

そして気づけば、私は通訳だけではなく、自分の意見まで口にしていました。

会議が終わってから、「しまった」と思いました。

言った内容が正しかったかどうかではありません。

通訳として、自分の立場を越えてしまったことが問題だったのです。

幸い、その場は社内会議で、普段から一緒に仕事をしているメンバーばかりでした。

だからこそ、「〇〇さんだから」「気持ちは分かる」と受け止めてもらえた部分もあったと思います。

でも、これが取引先との会議や初対面の相手だったら。

会社の代表として見られる立場で同じことをしていたら。

相手に与える印象も、会社への信頼も変わってしまっていたかもしれません。

そう考えると、あの日の私は通訳としてやってはいけないことをしてしまったのだと反省しています。

ただ、この出来事を通して改めて気づいたことがあります。

通訳は、言葉を知っているだけでは務まらない仕事です。

感情をコントロールすること。

どれだけ自分の考えがあっても、一歩引いて相手の言葉を預かること。

それもプロとして必要な技術なんだと、身をもって学びました。

正直、あの日の自分には悔しさが残っています。

でも、この失敗を経験したからこそ、次はもっと冷静に、もっと信頼される通訳になれる。

そう信じて、これからも一つひとつの会議に向き合っていきたいと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

いいなと思ったら応援しよう!