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朝顔の世話をサボりまくってたら史上最年少でノーベル賞取った小学生【短編コメディ】

小学校の花壇。うららかな春の日差しの中、クラスの生徒全員が一人一鉢の朝顔の前に並んでいた。

先生「今日から朝顔の観察が始まります。毎日水をあげて、観察日記を書いてね」
先生「それと──枯らした人は、退学ですからね」

先生の恐ろしい宣告に、クラスメイトたちは一斉にしゃがみ込み、慌てて自分の鉢に水をやり始めた。しかし、一人の少年だけは立ったまま動こうとしない。

クラスメイトA「お前、水やんないの?枯れたら退学だよ?」
少年「やんねー。毎日世話とかダサくね?植物なんか勝手に育つって」

少年は気怠げに観察日記を開くと、たった一行だけ文字を書き込んだ。
少年『5月12日。さぼった。以上。』

── 翌朝 ──

翌朝の登校時間。花壇にはすでに人だかりができ、騒然としていた。

クラスメイトA「おい、見ろよこれ!」
クラスメイトB「もう芽が出てるぞ!」

登校してきた少年は、「なんだよ朝から騒がしいな……」とぼやきながら人だかりを覗き込んだ。

少年「……は?」

他の生徒の鉢はまだ土だけだというのに、少年の鉢からだけ、青々とした立派な双葉が顔を出しているではないか。

少年「(ボソッと)……なんで俺のだけ。昨日一滴も水やってねーぞ……」
先生「少年くん!たった一晩で……どんなお世話したの!?」
少年「……ま、スパルタ教育、っすかね」
先生「まさか、極限まで水を断って生存本能を限界突破させたっていうの!?」
少年「……そんな感じです」

少年は周囲の騒ぎをよそに観察日記を開くと、『5月13日。さぼった。』とだけ書き込んでパタンと閉じた。

放課後。一人残った少年は、自分の鉢を忌々しそうに見下ろした。

少年「あーうぜぇ。俺は絶対世話してやらねーからな」

少年は飲みかけのオレナミンZを鉢の脇にドンッと置き捨てて帰路についた。こぼれた液体が土に染み込み、怪しく泡立っていることには気づきもしなかった。

── 翌日 ──

花壇は異様な光景に包まれていた。少年の鉢から、蛍光ブルーの二重螺旋を描く不気味な花が咲き乱れている。

クラスメイトA「なにこれ……朝顔じゃなくない?」
クラスメイトB「えぐ。なんか宇宙から来たやつじゃん」
少年「俺もそう思うわ」

少年は日記を取り出し『5月14日。なんかエグいのでた』と書き込んだ。

── 数ヶ月後・秋 ──

理科室。鉢を突き破らんばかりの勢いで咲き続ける巨大な朝顔の前に、少年と理科の先生が立っていた。

少年「……朝顔って一年草だよな。あれから一日も世話してないのになんなんだこれ……」
理科の先生「少年。お前の朝顔、既存の品種と全く違う。学会に出したい」
少年(心の声)『「世話サボりました」で論文にしていいわけねーだろ』

理科の先生は、少年の制止も聞かずにスマートフォンで朝顔の写真をパシャリと撮影し、SNSへと投稿した。

少年「ちょっ、勝手に拡散すんなよ!」

先生が投稿ボタンを押した直後のことだった。

スマホ「ピコン! ピピピピピピピピピピ!!!!!」
理科の先生「おお!? 投稿した瞬間から通知が止まらん!一瞬で「いいね」48万件!?」
少年「……即バズってんじゃん」

── 翌日 ──

小学校の校門前には、黒いスーツに身を包んだ怪しげな研究者たちが待ち構えていた。

研究者A「結論から言う。新種だ。君の名前を取って「少年アサガオ」と名付けた」
少年(心の声)『サボってただけなのに学名に俺の名前入った!』

研究者A「少年くん、論文にする。土壌の配合比率は?光の管理プロトコルは?」
少年「(冷や汗)プロトコル…?…えっと…」
少年「…直感、です」
研究者A「……!」
研究者A「ストレス応答を感覚的に読み取っているのか。天才的な観察眼だ!」
少年「いや全く何も見てねぇよ」

── その週末 ──

少年の自室。床には植物学の専門書が山のように積まれている。

少年「……なんかまずいことになってきた。嘘がバレたら即退学…やるしかねぇ」

必死に勉強する少年の姿を、窓の外から隣のおばさんが目撃していた。

隣のおばさん「あらあら、毎晩2時まで偉いわね。町内会の皆さんに知らせましょう」

翌朝。少年が玄関を開けると、ドアの前にはうず高く積まれた差し入れの山があった。その中には地方新聞が一部混ざっており、一面にはこう踊っている。

新聞見出し『天才小学生、独学で植物学を研究──地元の誇り』
少年(心の声)『おばさんの口コミ力ヤバすぎだろ……』

── さらに数日後 ──

小学校の校庭。まるで祭りのように、海外の有名大学など5つの横断幕が張られ、教授たちが熾烈なスカウト合戦を繰り広げていた。

教授A「少年くん!うちの大学に飛び級で来てくれ!」
教授C「プリーズ!カモン!MIT!」
少年(心の声)『おい、俺まだ小学生だぞ』
教授A「ぜひ栽培記録である観察日記を見せてもらいたい」
少年(心の声)『あの全ページ「さぼった」とか書いてる怪文書…!出したら一発アウトだろ!』
少年「……引っ越しの時になくしました」

── 3年後 ──

少年の自室。中学生になった少年は、だらだらとゲームをしていた。壁には各国政府からの感謝状が所狭しと貼られている。

少年「 あー平和だわー。」
少年「最近は世間も俺のこと忘れてくれたし、勉強なんかとっくに辞めたし。」

つけっぱなしのテレビから、ニュースの声が流れてきた。

テレビ「速報です。「少年式怠け農法」により、世界の農業用水が90%削減。砂漠の作物収穫量は400%増加し、世界の食糧危機は完全に終息しました!」
少年「……えらいことになってるぞこれ」

すると、スマートフォンが唐突に鳴った。

少年「……ん? 知らない番号…。もしもし」
電話の声「ノーベル委員会です。少年さん、おめでとうございます。ノーベル賞受賞者に選ばれました」
少年「……は? ノーベル賞……?」
少年(心の声)『いやいやいや。サボってただけだぞ俺』

少年は無言で電話を切ると、激しく焦り始めた。

少年「もう限界だ。これ以上ウソつき通したら絶対ヤバいことになる!」
少年「よし……決めた。授賞式のスピーチで、全部バラそう」

── ノーベル賞授賞式 ──

ストックホルムの巨大なホール。スピーチ台に立つ少年の手には、ボロボロになった一冊の観察日記が握られていた。

少年「俺、朝顔の世話……一回もしてません。ただ、サボってただけです」

ざわめく会場。少年は構わず、背後の巨大スクリーンに日記の中身を映し出した。

スクリーン映像『5月12日。さぼった。』『5月13日。さぼった。』『5月14日。さぼったらエグイのでた。』

全ページに渡って適当な感想しか書かれていない怪文書に、会場はどよめきに包まれた。しかしその時、一人の教授が立ち上がった。

教授A「……これだ。水分ゼロ、肥料ゼロ。この極限状態を維持したのだ」
教授B「「さぼった」という記述による完全無干渉の証明!」
教授C「さらには「エグイのでた」という常識外れの事態すら冷静に記す圧倒的な観察眼!」
国連事務総長「人類が忘れていた自然のメカニズムを証明する、最も純粋な記録です!」

会場全体が立ち上がり、割れんばかりのスタンディングオベーションが巻き起こった。拍手はいつまでも鳴り止まない。

少年(心の声)『……なんか認められたー』

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