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【LINEスタンプ】「売れるはず」と思って量産しまくってみたら大撃沈したシリーズ作品を振り返ってみた話

毎度、rorosukeです。LINEスタンプ作ってますか?

今回は、自分が作って「全く売れなかった」スタンプシリーズを振り返って、何が悪かったのかを分析してみようかという企画です。

作っている時は、どれも本気で「これはいけるかも」と思っているわけです。しかし、出してみると見事にスルー。1回でも売れてくれれば……という思いでしたが、結果はまったくの無反応。これはキツい!

ただ、失敗作にも、失敗作なりの学びがあるはずです。

そこで今回は、「スタンプをシリーズ化する意義」と、「シリーズ化が裏目に出てしまう理由」を、実際に出してみて箸にも棒にも掛からなかった失敗作を晒しつつ考察してみます。



シリーズ化はなぜ必要か

そもそも、シリーズ化はなぜ必要なのか。どうしてシリーズ化したほうがいいと考えられるのか。まずはそこから整理します。

スタンプは、単発で大ヒットを狙うより、裾野を広げて総量を稼ぐ方が成立しやすいビジネスだろうと思います。これは、いわゆるロングテール理論に近い構造です。

ロングテール理論は、もともとオンライン書店やネット配信のような市場で語られた考え方です。売れ筋商品、いわゆるヘッドだけでなく、個々には少量しか売れない商品、いわゆるテールを無数に揃えることで、テール全体の合計が無視できない売上を生む、という理論です。

1つの作品で頂点を目指すより、似たテーマで何十個も作品を並べておく方が、検索に引っかかる回数も、ユーザーの目に触れる回数も増えます。また、1つ気に入ったスタンプがあると、同じようなスタンプが欲しくなることがありますし、それが進むとコレクション買いにつながる可能性もあります。

最終的には、相乗効果によって全体的にランキングが押し上げられたり、シリーズでサジェストされる機会が増えたりします。場合によっては、一時的に売上が跳ねるスパイクが起きる可能性もあります。

これが、ついシリーズ化したくなる理由です。



シリーズ化には前提条件がある

ただし、ここには大きな落とし穴があります。

ロングテール理論は、「裾野を広げれば何でも売れる」という理論ではありません。正しくは、「需要のある裾野を取りこぼさずに並べることで、合計として売上になる」という考え方です。

そもそも需要がない場所をいくら掘っても、意味がありません。つまり、売れないシリーズは、いくら増産したところで、リソースの無駄遣いになります。

これは、景色を想像するとわかりやすいです。

まだ誰も注目していない土地があります。そこに、目立たせるための建物を作ります。建物の高さは、人気が出てくると自然に高くなっていくものだとします。

最初から低い建物をたくさん並べても、あまり意味がありません。まずは、1つでも人気が出そうな建物を作る必要があります。その建物に少し人気が出てきたら、両脇に同じコンセプトの建物を増築します。これを繰り返して、最終的に小高い山を築き上げます。

では、こういう状況にもっていくにはどうしたらいいか。

ここで効いてくるのが、リーンスタートアップ的な考え方です。

リーンスタートアップでは、最初から完成形の製品を作り込むのではなく、最小限の検証可能な単位、つまりMVPを市場に出し、そこで得られる反応を見てから、次の投資判断をします。

LINEスタンプに置き換えるなら、

「まず、1〜2個出してみて、初動を見る」
「初動で反応があったものだけ、シリーズ化によって育てていく」

という順番です。

ここで不安になるのは、「反応があったのかなかったのか、よくわからない」という点です。もしくは、「1つ売れたら、それは反応があったと言えるのか」という問題です。

右も左もわからず、1つ2つ売れて一喜一憂している段階だと、そもそも伸びる作品がどれなのか判断しにくいものです。

しかし、当たる作品は、リリース直後の初動から閲覧数やダウンロード数の伸び方が違います。主な特徴は次のとおりです。

  • すぐ売れる

  • 繰り返し売れる

  • その後も一定のベースラインを保って売れる

何日も経ってから、ぽろっと1つ売れるものは、強い反応があったとは言いにくいです。また、1回売れてそれきりのものも同じです。

一時的な売上のスパイクだけで判断するのも危険です。たまたま1件売れた、たまたま数日だけ閲覧が伸びた、ということはあります。その後、売上が元の水準に戻っていくなら、それは平均回帰の範囲内かもしれません。

大事なのは、偶然の1回ではなく、「この作品には明らかに反応がある」と言えるだけのシグナルがあるかどうかです。

私はこれを「鉱脈を発見する」と言っています。当たりを見つけるのは、金鉱脈を見つけるのと同じことだと思っています。簡単には見つからないけれど、見つけたら、そのあたりを掘ればまとめて得られる。そういうイメージです。

シリーズ化するなら、こうしたシグナルを見極める必要があります。このシグナルを無視してシリーズ化しても、需要のない裾野を広げるだけの作業になってしまいます。

そこでクリエイターとして気を付けたいのが、「思い入れ」です。

自分で作ったキャラクターは、それがAI生成であろうとも、愛着が出てきます。もっといえば、好きになってしまいます。そうなると、「なんとかこのキャラクターを広めたい」という本末転倒な思考になっていきます。

これは誰にでも起きることで、私もこれを繰り返してしまっています。

今回紹介するシリーズは、まさにこの「反応を待たずにシリーズ化してしまった」パターンと言えます。

「同じキャラクターで量を作れば、どれかが当たるはず」
「時流に乗ったシリーズを作れば絶対当たる」

これは一見、合理的な考え方ではあります。しかし、どこかで俯瞰的に見て、初動が弱く、ベースラインも上がらないなら止める、という判断をしたほうがいいのかもしれません。

注意しておきたいのは、ネットでは、あるとき突然火が付くこともあり得るという点です。また、プレミアムになって注目されるチャンスもあります。ただしこれは、宝くじを当てるようなものであり、マーケット理論の範疇外だと考えておいた方がいいように思います。



撃沈シリーズ1. 毎日使える仕事用・敬語ビジネスマン

AIに、仕事で使えるスタンプがねらい目と聞いたので、作ってみました。

毎日使える仕事用のほか、休日オフ編、家族サービス編など4件を、初めてシリーズ展開してみました。

「それ、AIで良くない?」など、少し時流に乗せたワードも盛り込んでみたりしました。

しかし、そもそもビジネスマンスタンプというジャンル自体が飽和しているのだと思います。少しばかり特徴を持たせたところで、焼け石に水。完全に埋もれて終わりました。

初動もなく、その後のベースラインもゼロのまま。いまだに1つも売れていません。

撃沈シリーズ2. 女子高生の日常スタンプ

次に、やっぱり可愛いキャラがいいだろうと思ったのと、AIから日常使いできるものがよいというアドバイスを受けていたので、それで作ったスタンプです。

キャラクターとしては、あまり特徴はありません。ただ、その方が多くの人にリーチできるのではないか、という考えもありました。

シリーズ化にあたっては、日常会話編から、学校生活編、ドキドキ恋愛編、友達との会話編、バレンタインデー編など、シーンを変えて9件も展開してみました。

結果、ピクリともきませんでした。

「特徴がない方が広く使える」という考え方自体は間違いではないと思います。ただ、広く使えるものほど競合も多く、よほど絵柄や言葉に引きがないと、初動の段階で埋もれてしまうのだと感じました。

それと、すでにお気づきの方もいるかと思いますが、AIは鵜呑みにしない方がいいです(笑)

撃沈シリーズ3. しっぽカエルの日常スタンプ

「やっぱりオリジナルキャラクターだな」と思ってそれにも挑戦してみました。

他のAIで作ったカエルと似てしまわないように、「しっぽのあるカエル」にしました。

キャラクターが気に入ったこともあり、日本の日常会話編以外に、台湾版、タイ版といった海外展開にも挑戦がてら12件も作ってみました。

そればかりではなく、桜の季節だったので、さらに花見用として6件追加し、計18件ものスタンプを作ってしまいました。

結果、作った当時には1つも売れませんでした。実は最近、1つだけ「タイ語版」売れましたが、日本語版は売上ゼロ。

これはまさに、思い入れでシリーズ化してしまった例です。

撃沈シリーズ4. フリマでの個人間取引連絡女子版

ニッチなジャンルにも挑戦してみました。

最近フリマサイトを利用することが多かったので、フリマでのやり取りで使えるスタンプがあったらおもしろいのではないか、という発想です。

「フリマをやっている人は多いし、これは意外と需要があるのでは」と思って、フリマ・副業系スタンプを4件シリーズ展開してみました。

しかし、結果的には「ニッチ」ではあっても、「需要」がありませんでした。

いまだに1件も売れていません。

ここで学んだのは、「ニッチ=売れる」ではないということです。ニッチでも、実際に買いたい人がいて、なおかつLINEスタンプとして使う場面がないと意味がありません。

このシリーズも初動はなく、ベースラインもゼロのままでした。

撃沈シリーズ5. オトナのトイレの花子さん

夏だ、ホラーだ、と思いついたのと、「花子さん」って知名度が高いのに自由に使える数少ないIPであることを目ざとく見つけて、8件もシリーズ展開してしまいました。

ホラー物は血しぶきなど、コンプラに引っ掛かりそうな題材だと思うのですが、意外と審査は通ってくれて、一部リジェクトはありつつも公開できました。

注意したのは、テレビシリーズなどに似すぎないこと。そこで「大人」路線にしてみました。しかし、そもそもキャラクターとしての魅力があまりなかったようで、1つも売れませんでした。

目の付け所は良かったと信じたいのですが、結果的には残念無念です!

これも、アイデアの面白さと市場の反応は別物だという例です。自分では「これはいける」と思っていても、初動が出なければ、そこでいったん立ち止まるべきだったかと反省です。

撃沈シリーズ6. 日本の猫の甘える図鑑

AIで猫を描いていたら可愛かったので、うっかり7件もシリーズ展開してしまいました。

猫という人気モチーフなので、分母が多いとはいえ、少しは反応があるかと思っていました。しかし、購入0件です。

手描き風のゆるい絵柄で、セリフなし。確かにアピール性はほとんどありません。

さらに、猫スタンプという分野には本格派の強い作品が大量にあります。そこに、明確な差別化なしで入っていったのは、さすがに無謀。これまた反省しかありません。

人気ジャンルに入れば売れる、というわけではありません。むしろ人気ジャンルほど競争が激しく、初動で目立てなければ、そのまま埋もれてしまうのは当然でした。



まとめ:反応なしにシリーズ化するべからず

上記のスタンプを振り返って改めて思うのは、最初の1〜2個で反応があるかどうか確認せずにシリーズ展開してしまった、という共通点です。

ロングテール理論は、需要がある裾野を広げることで成立する理論です。需要の有無を確かめる前に裾野を広げても、そりゃあ空振りが量産されるだけってことですね。

私の中には、見通しもなく「裾野を広げれば少しは当たるかも……」というぬるい考えがあったと思います。しかし、世の中甘くありません。

当たるシリーズは、最初の数個を出した時点で、はっきりした初動があります。すぐ売れますし、定期的に売れます。そして、売上のベースラインが少しずつ上がっていきます。

逆に、たまたま1回売れただけのものを「これは当たりかも」と考えるのは危険です。単発のスパイクは、時間が経つと平均回帰によって元の水準に戻ることがあります。

次に新しいシリーズを作るときは、いきなり量産せず、まずは小さく出して反応を見る。

そして、反応があったものだけを伸ばす。

今後に活かしていきたいと思うばかりです。

以上!




用語解説

本記事で用いている用語の解説です。

スパイク(spike)

元々は統計学・データ分析の用語で、グラフ上で突出した数値を指します。Web解析・株価分析・マーケティング分析など、どの分野でも使われる汎用語です。

この記事では、LINEスタンプの売上や閲覧数が一時的に大きく跳ねる現象を指して使っています。

初動

出版・音楽・映像業界でよく使われる言葉です。「初動売上」「初動部数」のように、発売直後の売れ行きを指す日本の小売・エンタメ業界の伝統的な用語です。

この記事では、LINEスタンプを公開した直後の閲覧数や売上の反応を指しています。

ベースライン(baseline)

統計学・科学実験・エンジニアリングなど、幅広い分野で「基準となる水準」を指す一般用語です。

この記事では、たまたま売れた1件ではなく、継続的にどれくらい売れているかという、売上の基本水準を指しています。

平均回帰(regression to the mean)

統計学の正式な専門用語です。元々は19世紀の統計学者ゴルトンが提唱した概念で、極端に高い値や低い値が、時間が経つにつれて平均的な水準に戻っていく傾向を指します。

この記事では、一時的に売上や閲覧数が伸びても、それが本当の需要ではない場合、やがて元の水準に戻っていく現象として使っています。

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