14章|人生をデザインマネジメントする|14−3| 実践編 ── 人生を「試作」する4つのワーク
このnoteは、「問いからはじめる”デザインマネジメント”」として、1冊の本をつくるためのnoteです。1つずつのnoteでも伝わる様にと書いていますが、他の記事であったり、なんでこんな事やっているの?と興味を持っていただけたら、こちらをお読みください。
前回のScene 2では、人生をデザインするための4つのキャリア理論を学びました。
(※このScene 3から読み始めた方は、まずはScene 2の「プロティアン・キャリア」「計画された偶然」「ナラティブ・アイデンティティ」「Designing Your Life」に目を通すことをおすすめします)
キャリアに「正解」はありません。
過去の経験の意味は、いつでも書き換えることができます。
そして未来は、頭の中だけで悩むものではなく、小さく「試作」しながら確かめていくものです。
この最終章のScene 3では、本を閉じたあとすぐに実践できる「人生をデザインする4つのワーク」を紹介します。
これまで全14章を通して学んできた「デザインマネジメント」の集大成として、最後はあなた自身の人生**を題材に、手を動かしてみましょう。
ワーク① 過去をデザインする:ナラティブの書き換え
まずは「過去」の整理からです。
ナラティブ・アイデンティティの理論で学んだように、起きた事実そのものは変えられなくても、その意味づけはいつでも変えることができます。
ここでは、あなたの過去の「失敗」や「寄り道」を、未来の強みに変えるワークを行います。
<STEP 1:事実を書き出す>
これまでの学生生活や人生の中で、
「失敗したな」
「無駄な時間だったな」
「コンプレックスだな」
と思っている出来事を、1つか2つ、紙に書き出してみてください。
(例:第一志望の大学に落ちた、部活でレギュラーになれなかった、人間関係で揉めてサークルを辞めた、など)
<STEP 2:意味を書き換える(リデンプション)>
その出来事に対して、
「でも、あの経験があったからこそ……」
という接続詞をつけて、今の自分につながる意味を考えてみてください。
最初はうまく言葉にならなくてもかまいません。いったん仮置きでもいいので、教訓や価値観を見つけにいくことが大切です。
「第一志望に落ちて今の大学に来た。でも、あの経験があったからこそ、学歴などの『看板』ではなく、自分が本当に好きな『インテリア』という中身で勝負しようと腹をくくることができた。」
「サークルを辞めて孤独な時期があった。でも、あの経験があったからこそ、チームの人間関係の難しさを知り、『誰かが無理をしない仕組み』に興味を持つようになった。」
この「意味づけの書き換え」が、これから先の見えない人生を歩むための、あなた自身の軸(コンパス)になっていきます。
ワーク② 未来をデザインする:オデッセイ計画(3つの未来)
過去を書き換えて自分の軸が少し見えてきたら、次はその軸を持ったまま「未来」を描いてみましょう。
ここでは、『Designing Your Life』で提唱されている「オデッセイ計画(Odyssey Plan)」というワークを行います。
「将来の夢は1つに絞らなければならない」
そんな思い込みをいったん外して、まったく違う3つの未来を並行して妄想してみます。
以下の3つのパターンで、これからの5年間を書いてみてください。
【プラン1】今の延長線上にある未来
今あなたがイメージしている、あるいは準備している、もっとも現実的な進路です。
(例:設計事務所に就職して経験を積み、3年目に小さなプロジェクトのメイン担当になる)
【プラン2】プラン1が突然消滅したときの未来
もし明日、プラン1の業界がAIに代替されたり、その仕事自体が世の中からなくなってしまったら、あなたは何をして生きていきますか。
(例:実家の空き家を改装して、地域の人と留学生が集まるシェアハウス兼カフェを運営する)
【プラン3】お金や世間体を一切気にしなくていい未来
もし一生食べていけるだけのお金がすでにあり、誰からも笑われないとしたら、本当は何をやってみたいですか。
(例:長野の山奥に引っ越して、土いじりをしながら子ども向けのアート教室を開く)
<ポイント>
どれが正解かを決める必要はありません。
大切なのは、「自分には、まったく違う人生を楽しむ可能性が複数ある」と気づくことです。
特にプラン2やプラン3には、あなたが普段はしまい込んでいる価値観や好奇心が表れやすくなります。
そこに、あなたらしい人生のヒントが隠れています。
ワーク③ 現在をデザインする:人生の最初のプロトタイプ
未来の可能性を広げることができたら、最後はそれを「現在」の行動に落とし込みます。
デザイン思考の鉄則は、「小さく試す(プロトタイピング)」ことです。
描いた未来に向かって、
いきなり転職する。
いきなり退学して起業する。
そんなハイリスクな行動をとる必要はありません。
プラン1、2、3のいずれか、あるいはその要素を組み合わせたものについて、「明日できる、一番小さくて、お金がかからず、痛くない実験」
を1つだけ決めてください。
「カフェをやりたい」なら: いきなり物件を探すのではなく、今週末、自分が理想とするカフェに行き、店長に「どうやってこの店を始めたんですか?」とインタビューしてみる。
「動画で発信してみたい」なら: いきなり機材を買うのではなく、スマホで1分だけ語った動画を撮り、親しい友人3人だけに見せて反応や違和感を集めてみる。
「新しいチームの形を試したい」なら: いきなりリーダーに立候補するのではなく、次回の就活のグループワークやバイト先のミーティングで、自分から「今日って何が決まったらゴールですか?」と問いを1つだけ投げてみる。
これが、あなたの「人生のプロトタイプ」です。
結果がうまくいくかどうかよりも、まず動いてみることが大切です。
行動することで、必ず何かしらの反応や出会いが生まれます。
その偶然を観察し、振り返り、次の試作につなげていく。
この繰り返しこそが、「計画された偶然(Planned Happenstance)」を育てるサイクルなのです。
ワーク④ 共創をデザインする:他者のプロトタイプに「乗っかる」
ここまで一人で考えてきた内容を、最後は「チームの対話」に開いてみましょう。
自分の人生をデザインすることは、一人だけで完結するものではありません。むしろ、他者との関わりの中でこそ加速していきます。
<STEP 1:痛くない実験をシェアする>
3〜4人のグループになり、ワーク③で考えた
「明日できる、痛くない実験(人生のプロトタイプ)」
を一人ずつ発表します。
このとき、聞く側は第3章で学んだ「傾聴」を意識してください。
すぐに評価したり、正解を与えたりするのではなく、まずは相手の話をそのまま受け取ります。
<STEP 2:「それ、面白そう!」で乗っかる>
全員の発表が終わったら、他の人の実験に対して
「それ、面白そう」
「私も一緒にやってみたい」
と思えるものを1つ見つけて、全力で「乗っかる提案」をしてみてください。
「カフェの店長にインタビューするなら、私もついて行っていい? 実は私もカフェに興味があって」
「1分の語り動画を撮るなら、私が最初の観客をやるよ。違和感があったらフィードバックする」
「就活のグループワークで問いを投げる練習、明日のお昼休みに私を相手に一回リハーサルしてみない?」
<ポイント>
デザインマネジメントの真骨頂は、「共創」です。
自分のプロトタイプに他者が乗っかってくれることで、
一人では怖かった最初の一歩が、急に「楽しい実験」に変わることがあります。
逆に、誰かのプロトタイプに乗っかることも、あなた自身の人生に新しい偶然を呼び込む強力なアクションになります。
人生は、自分ひとりで設計するものでもあり、誰かと一緒に育てていくものでもあるのです。
おわりに:不確実な世界を、あなた自身の物語で生きていくために
全14章にわたる長い旅も、ここで終わりです。
ここまで一緒に歩いてきてくれて、本当にありがとうございました。
「デザインマネジメント」という言葉は、最初は少し難しく聞こえたかもしれません。
自分とは関係のない、ビジネスの専門用語のように感じた人もいたと思います。
でも、ここまで読んできたあなたなら、もうわかるはずです。
私たちが学んできたのは、単なる経営のノウハウでも、効率化のテクニックでもありませんでした。
それは、「人」への眼差しです。
思い込みのメガネを外して、事実を観察すること。
「こんなのがあったら最高だよね」と未来を妄想すること。
未完成のプロトタイプを見せて、違和感を集めること。
そして、自分自身のモヤモヤの中にある大切な価値観に気づくこと。
この本を読み終えたからといって、明日から人生が劇的に変わるわけではありません。
人間関係でモヤモヤする日もあるでしょう。
自分の能力に落ち込む日もあるでしょう。
先の見えない未来に、不安になることもきっとあると思います。
でも、それでいいのです。
不安定であることは、あなたが新しいステージに向かおうとしている証でもあります。
その迷いや葛藤こそが、あなただけの物語をつくる大切な素材になるからです。
もう、誰かが決めた「正解のキャリア」を探し続けなくて大丈夫です。
完璧な自分を演じて、ひとりで抱え込まなくても大丈夫です。
もし明日、何かに迷い、立ち止まりそうになったら、そっとこの本を思い出してください。
そして、自分自身に問いかけてみてください。
「このモヤモヤの奥には、私が本当に大切にしたいどんな願いが隠れているんだろう?」
「これを一緒に面白がってくれる仲間は、誰だろう?」
問いを止めない限り、あなたの人生のデザインは止まりません。
さあ、本を閉じて、あなたの日常に戻りましょう。
そして、どんなに小さくても、不格好でもかまいません。
あなたの人生の、次のプロトタイプを動かしてみてください。
その小さな一歩から始まる、あなただけの不確実で美しい物語を、私は心から応援しています。
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