12章|物語と発信をデザインする|12−3| 【実践】自分のナラティブを発信してみよう
このnoteは、「問いからはじめる”デザインマネジメント”」として、1冊の本をつくるためのnoteです。1つずつのnoteでも伝わる様にと書いていますが、他の記事であったり、なんでこんな事やっているの?と興味を持っていただけたら、こちらをお読みください。
Scene 1で「発信する理由」に気づき、Scene 2で「共感を生む理論」を学びました。
このScene 3では、実際にあなたのプロジェクトや日々の学びを「ナラティブ」に変換し、世の中に発信する一歩を踏み出すワークショップを行います。
「まだ人に自慢できるような完成品がないから…」と躊躇する必要はありません。
完成品(What)ではなく、あなたのプロセス(How)や想い(Why/Who)を発信することこそが、未来の仲間や企業からの「信頼の事前払い」になるのです。
【個人ワーク】YWTで1週間を振り返り、ナラティブの種を見つける
いきなり「物語(ナラティブ)を書いて」と言われると難しく感じるかもしれません。そこで、まずは「YWT(やったこと・わかったこと・次にやること)」というシンプルなフレームワークを使って、この1週間の自分の活動を振り返ってみましょう。
Y(やったこと / 事実):この1週間で取り組んだ課題、読んだ本、参加したプロジェクトなど。
W(わかったこと / 意味づけ):それをやってみて気づいたこと、失敗して学んだこと。
T(次にやること / 問い):その気づきを踏まえて、来週はどうするか。
まずは箇条書きで構いません。短く文字に起こしてみましょう。
(YWTのメモ例)
Y(やった):設計課題のエスキスで、先生から「人がいない」と指摘され図面が白紙に戻った。
W(わかった):自分は「かっこいい形」ばかり気にして、「誰がどう使うか」が抜けていた。
T(次やる):形を描く前に、その場所を使う人の「1日のスケジュール」を書き出してみる。
【個人ワーク】YWTに「Who」と「Why」を乗せてナラティブにする
YWTで書き出したメモは、すでにナラティブの「種」になっています(Y=観察、W=意味づけ、T=問い)。
これに、Scene 2で学んだ「Who(等身大の自分・届けたい誰か)」と「Why(自分の価値観や想い)」を意識して少し肉付けし、InstagramやX(旧Twitter)に投稿できる100〜300字の文章に整えてみましょう。
(YWTから変換したナラティブの例)
今週の設計課題のエスキスで、先生から「この空間にいる人の顔が見えない」と指摘されて図面が白紙に戻った。
悔しかったけれど、自分でも薄々気づいていた。私は「かっこいい形(What)」を作ることばかり考えていて、「誰(Who)がどう過ごす場所か」という視点がすっぽり抜けていたのだ。
まずは形を描くのをやめて、この場所に集まる人の「1日のスケジュール」を書き出してみようと思う。空間に体温を宿らせるには、何から始めるのがいいのだろう?
【グループワーク】他者の視点でナラティブを「アレンジ」する
個人ワークで書いたのナラティブを、3〜4人のグループで読み合ってみましょう。
このとき、聞く側は単なる読者や評価者になるのではなく、客観的な視点を持つ「編集者(共創者)」として、その人のナラティブを装飾・アレンジしてあげてください。
自分自身では「単なる失敗だ」「うまく書けない」と思っていても、他者から客観的に見ると「そこにあなたの本当の価値観(Why)が隠れている!」と気づくことがよくあります。
「この『悔しかった』という感情の部分、もっと強調した方が人に刺さるよ!」
「客観的に聞くと、あなたの本当の『Who(届けたい相手)』は〇〇なんじゃない?」
「この『わかったこと』、別の言葉でこんな風に言い換えるともっと伝わりやすいかも」
このように、他者の視点を入れてナラティブを磨き上げるプロセス自体が、すでに一つの「共創」です。
実際にやってみると、「完成した完璧な図面」を見せられた時よりも、「失敗や葛藤の種(プロセス)」を開示してくれた時の方が、周りの人は「こうしたらもっと良くなる!」と自然に口出し(アレンジ)したくなることに気づくはずです。
これが、ナラティブが持つ「参加できる余白」の力なのです。
【実践ワーク】トレーニング用のアカウントを作って発信してみよう
グループワークを通して、自分のナラティブに他者の視点(編集)が入ることで、思いがけない価値が引き出されることを体感できたと思います。
さて、ここからが本番です。
この講義をきっかけに、あなた自身の「学びのプロセス」を発信するSNSアカウント(Instagramやnoteなど)を立ち上げてみませんか?
プライベートの遊びのアカウントとは別に、「クリエイター・実務者としての自分」を育てるためのトレーニング用アカウントです。
発信するのは、自分自身のプロセスでもいいですし、今回のワークのように「クラスメイトやチームメンバーの頑張り・葛藤を取材して意味づけしたもの」でも構いません(※他者のことを書く場合は、必ず本人の公開OKをもらいましょう)。
載せる写真(What):完成したパースだけでなく、作っている途中の模型、うまくいかずに白紙になった図面、誰かがつぶやいた弱音や気づき。
キャプションの型:事実(Y)+ 自分または他者視点で見出した意味づけ(W)+ 読者への問い(T)
最初は誰からも「いいね」がつかないかもしれません。でも、それで構いません。
発信とは、誰かに評価されるためのものではなく、「自分の学びを言語化し、定着させるためのツール」だからです。
「意味づけの発信」が、デザイナーの最強の実践になる
この「プロセスを発信する」というトレーニングは、実は皆さんのキャリアにおいて計り知れない「得」をもたらします。
デザイナーとしての高度な実践になる
デザインとは本来、自分よがりな表現ではなく「クライアントやユーザーの想い(ナラティブ)を汲み取り、形にして社会に届けること」です。日常のプロセスや、友人の葛藤を取材し、その価値を言語化してSNSで発信することは、そのままプロのデザイナーに求められる「ヒアリング力」と「編集力」の実践トレーニングになります。「プロセスを語れる人」は就活で無双する
就職活動の面接で、「私はこんなにすごいです」と完成品(What)だけをアピールする学生はたくさんいます。しかし、「この課題ではこういう葛藤があって、私はそれをこんな風に意味づけして乗り越えました(あるいは、チームメンバーを支援しました)」と、ナラティブを主役にして語れる人は圧倒的に少なく、企業から「この人がチームにいれば組織が良くなる(共創できる)」と高く評価されます。生きたポートフォリオになる
自分個人の完成品だけを並べたポートフォリオよりも、「こんな試行錯誤がありました」とプロセスが詰まったアカウントのURLを一つ添えるだけで、あなたの「思考の深さ」と「共創する力」を証明する最強の武器になります。
今日、グループワークで体験した「ナラティブの編集」。それを今度は、SNSという開かれた場で実践してみましょう。自分や他者の物語を引き出し、意味づけできる人は、どんなプロジェクトでも求められる存在になります。
今日の問い
今日から運用する「自分の学びを発信するトレーニング用アカウント」。そのプロフィール(自己紹介)欄には、どんな「Who(私は誰で)」と「Why(何のためにデザインを学んでいるか)」を書きますか? 簡潔な言葉で表現してみましょう。
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