創作落語「日本土産」
本日はいっぱいのお運び、誠にありがとう存じます。
えー、日本のお土産ってぇのは海外で喜ばれる物らしいんですな。
特に化粧品やらお菓子やら…
メイドインジャパンってぇのは高品質で名を馳せているわけでございますけれども…
中には受け入れられない物もあるとか…
意外なのは「松茸」でして…
松茸ってぇと日本じゃあ超高級品だ。
ですが、どうも欧米の方々の口には合わないようですな………
コンコンコン!コンコンコン!
父「ダニエル、おいダニエル!起きとくれよ!」
子「なんだい、ダディ。騒々しいね全く。
あたしゃ昨日日本から帰ってきたんだ!
時差ボケで眠くってしょうがないんだよ!
日本じゃあこんなモーニングコールありませんでしたよ?
『Mr.ダニエル様、
おはようございますです。朝で御座います。
ご機嫌いかがで御座いますですか?』
と来たもんだ。
それがなんだい?
『Daniel!Wake Up!Harry Up! 』
日本の刑務所だってもっとマシな起こし方するってぇもんですよ?」
父「朝から良く喋るねぇあんたは!
いやね、お前さんが昨日の夜遅く帰ってきたのは知ってますよ?
まずはおかえりのハグをさせとくれよ?
えぇ?日本旅行は随分楽しそうだったみたいじゃないか?
ただね、お土産買いすぎじゃないのかい?
リビングの半分占領しちゃってるじゃないか?
ウチを改装してSUSHI屋でも始めようって腹積もりじゃないだろうね?」
子「そんなつもりはないさダディ。
ただ日本は素晴らしいもので溢れているんだ!
気に入った物を全部買ってたらあの量になっちまったんだよ。
勿論ダディもマミィも気に入るはずさ!」
一行、リビングに向かいますと言ってた通りの有り様だ。
ダニエルは目を輝かせて段ボールをバリバリ破き始めた。
父「母さんが帰ってくる前に片付けなさいよ?こんなの見たらテレンス・フレッチャーの如く怒り狂うぜ?」
子「ほら見てごらんなさいよ。ダディ?
小さい鎧兜だ。精巧だろう?」
父「ほう、これは確かに…
だがしかし…なんだいこれは?
なんで周りにお金がくくりつけてあるんだい?」
子「それは日本人の友達も『分からない』と言ってた。
縁起物なんだ。景気が良くて気持ちがいいやなぁ!」
父「お前さん、鎧は良いけどもねぇ…
武器が無いんじゃあしょうがないじゃないか?サムライソードは通販番組で売ってるナイフセットより切れるって噂ですよ?」
子「そんなの飛行機に持ち込める訳ないだろう?」
父「なーに、少し袖の下渡せば大丈夫だろう?馬鹿だね、この子は。正直者は損をする世の中なんだから、もう少し小狡く生きないと…」
子「馬鹿はお前さんだろう?
どこに息子にワイロしろなんて言う親がいるんだい!?
大体ねぇ?日本ではワイロなんて通用しませんよ?
皆さん、世のため人のために仕事してるんだから。」
父「政治家もかい?」
子「それを聞いたら友達は苦い顔してたけどね…」
父「どこの国も変わらないねえ…
だけども清貧を尊ぶ国民性なのは分かりましたよ。
このご時世に立派なこったねぇ。
ダニエル、他には無いのかい?」
子「これなんかどうだい、ダディ?」
父「どれどれ!?…くさっ!なんだこれ!?くっさ!
ひどいじゃないか!ダニエル!
しかしねえ…分かったぞ!これは魔除けだろう?この匂いで悪魔を追い払うってぇ訳だね?
日本では『ジュジュツ』が流行ってるそうじゃないか、ええ!
間違いない!これは魔除けだね。」
子「これは腐った豆だ。」
父「これは腐った豆じゃないか!ダニエル!
見て分かるさ!糸引いちゃってるんだもの!
おい…何してる?やめろダニエル!そんなもの食っちゃあ…」
子「こりゃYummyだね。」
父「今すぐ吐き出すんだよ!oh…Jesus…
早くお医者を呼ばないとね…
クソッタレ!いくら入院費が掛かると…」
子「安心してよダディ。
これは納豆っていってね?
日本ではポピュラーな食べ物さ!
さっき腐ってるなんて言ったがこれは発酵なんだ。
ヘルシーフードなんだよ、ダディ!食べてみとくれよ!」
父「成程な…息子がそこまで言うなら…
ハムッ…
ダニエル…これは中々イケるよ。
匂いも何だがクセになるじゃないか、ええ?
ただ、味がアジア人の顔くらい薄いからねぇ…マヨネーズとバターでも入れるってぇのも良いんじゃないかい?」
子「日本ではここにソイソースとマスタードを入れてよくかき混ぜてからズルズルっといくのが粋ってもんだそうですよ?」
父「ソイソースよりBBQソースの方が味が濃くてうまいはずだけどねぇ。
ところでダニエル?
さっきから気になってたんだが、その木箱はなんだい?随分と仰々しいじゃないか?」
子「これかい?こいつは友達から貰ったんですがね、まだ中身を見ちゃいないんですよ。
どうやら超高級な食材らしいんですぜ。」
父「ほう…それは楽しみじゃないか。
どれ早く開けとくれよ、ええ。
どれどれ…
って!また臭いじゃないか!?
いい加減にしとくれよ!
日本は綺麗な国なんじゃないのかい?
どうして臭いものばっか食べるんだ!
お前さん、その友達に苛められてたんだろう!?ええ、そうに違いありませんよ!
今から大使館に乗り込んで関税を倍に…」
子「何馬鹿言ってるんだい。
これはね、松茸っていう高級なキノコなんですよ。
匂いはね、やや独特だけれども。
どれ、焼いて食べてみようじゃないか?
軽く塩でも振ってね…
おや、随分うまそうですよほら?」
父「まあ…食感は良いけどもね。
けど匂いが気になるなぁ。
チリソースでも掛ければマシになるんじゃあないか?」
子「いい加減にしとくんなさいよ。
日本人はね?舌が繊細なの!
ダディみたいに味が濃ければ美味しいと思う人達じゃないんだよ!?」
父「だったらねぇ!
ラーメンとかスキヤキとかもっとトラディショナルなもの買ってきなさいよ!
大体なんだい!?
さっきから臭い物ばっか食わせて!
こんなのねぇ!我が国じゃ犬も食わねえってんですよ!
しかし…しかしだ!
ダニエル、するってぇとこの松茸…
日本じゃあ高く売れる訳だな?
早速松茸を遺伝子組み換えして大量生産して…」
子「べらんめえ!さっきから聞いてりゃこのこんちくしょうが!
松茸は天然物に価値があんでぃ!
日本じゃあ苦労して獲れる物に価値があんでぃ!
何でもかんでも合理的、合理的で動かさないのが日本の良さなんでぃ!
分かる!?
それが"ワビサビ"!You Know!?」
父「かー--!てんでダメだね!
商いが下手くそで嫌んなっちまう。
効率的に行かなきゃあこの大消費時代乗り切れないんじゃあないですかい!?
だがね?
この松茸も…匂いはともかく形が気に入った。そうだろう?なぁ?
まるで…その…アレみたい……じゃないか?」
ダディが何かモゴモゴ言っているとマミィが帰ってきたようです。
母「あら!?ダニエル?帰ってたのかい!?
こんなに散らかしてこの子はホントに…
ただいまのハグをしてくれなきゃあ許しませんよ!
って、何だい?すごく良い香りじゃないか?」
子「マミィ!これは松茸っていう日本のキノコさね!
マミィも食べてごらんなさいよ!」
母「あら、すごく美味しそうだ。
うん、うん。こりゃ絶品だね。
味も香りも最高だ!
ありがとうよ、わたしゃ幸せもんだ。」
父「お前……これうまいってかい?
臭くないのかい!?」
母「あんたみたいなバカ舌と一緒にしないどくれよ。」
父「そ、そうか…。
いやね、オイラもうまいと思ってたんだぜ?
この松茸最高だよな!?
それにな!このフォルム!
その…なんだ?オイラの……ほら!
"アレ"みたいだろぉ!?
なぁ!?こんな反っちゃってよぉ!」
母「なーに言ってんだい。
あんたのは味も香りも"黒トリュフ"
でしょうが…」
お後がよろしいようで
