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還魂紙(漉き返し紙)~和紙に見る、いのちを生かしきる知恵~

梅雨明けも間近でしょうか。

暑い日が続いていますね。

強い陽ざしの中でも、木陰に入ると風が通り、

ふっと心も身体もゆるむような心地よさがあります。

昔の日本の夏の暮らしにも、

自然の力を上手に取り入れながら涼を得る知恵がありました。

簾(すだれ)や葭簀(よしず)を掛け、打ち水をして、

風の通り道をつくる。

自然の力をすべて遮断するのではなく、

上手につきあいながら暮らしていく。

そんな日本人の感性は、紙の使い方にも表れているように思います。




紙もまた、いのちを生かしきる

今では、紙は身近にあり、

使い終われば簡単に捨ててしまうこともあります。

ですが、紙が貴重だった時代、

一枚の紙は最後まで大切に使われていました。

まだ書けるところがあれば裏も使い、

役目を終えた紙は、襖や屏風の下張りなど、

別の用途に使われることもありました。

そして、古くなった紙は集められ、

再び水にほどかれ、新しい紙へと漉き返されました。


江戸時代には古紙を集める人、

それを扱う問屋、漉き返す職人なども存在し、

紙が再び暮らしの中へ戻っていく仕組みがありました。


一枚の紙を、最後まで生かしきる。

自然からいただき、大切に使い、

また新しい姿へと生まれ変わらせる。

そんな循環が、昔の日本の暮らしの中にはありました。




還魂紙(漉き返し紙)

一度使われた和紙を、もう一度水にほどき、

漉き直した紙を「漉き返し紙」といいます。

古くは「宿紙」などとも呼ばれ、

墨の色が十分に抜けず、

薄い鼠色になる紙は「薄墨紙」と呼ばれることもありました。

そして、漉き返された紙には、

「反魂紙(はんごんし)」

「還魂紙(かんこんし)」

という呼び名もあります。

なんとも美しい名前だなと思います。

使い終えた紙が、水の中でもう一度ほどかれ、

繊維へと戻り、新しい紙へ生まれ変わっていく。

まるで、紙のいのちをもう一度呼び戻すような名前ですね。

平安時代には、清和天皇の女御・藤原多美子が

天皇の崩御後、生前に送られた手紙を漉き返し、

その紙に法華経を書き写して供養したという伝承も残されています。

大切な人が書いた文字。

その紙を捨てるのではなく、もう一度紙へ還し、祈りを込める。

紙を単なる「物」としてだけではなく、

そこに宿る想いやつながりまで大切にする。

そんな日本人の心を感じます。



私も、漉き返し紙を作ってみました



書いた半紙を水にほどき、

家でもできる紙漉きで再生紙を作ってみました。^^

墨の香りを感じながら漉いた紙は、やさしい鼠色になりました。

白くするために漂白剤などを使わなくても、

この色のままで十分味わいがあります。

「薄墨紙」という昔の呼び名を思い出すと、

この鼠色も、ますます愛おしく感じます。^^

書道半紙だけではありません。

和綴じ帖を作ったときに出た和紙の端紙を漉き返し、

紅茶で染めてみると、ミルクティーのような、やさしい色に。^^



赤い和紙の端紙を漉き返すと、

今度はいちごのシャーベットのような色になりました。(#^^#)


 

一度役目を終えた紙なのに、

もう一度漉いてみると、

それぞれに違う表情を持った、新しい紙になります。

再生されたから、元の紙より劣るのではなく、

新しい個性を持って、もう一度生まれる。

漉き返しをしながら、そんなことを感じました。




自然と調和する、循環型の素材

人工的な素材を加えず、

自然素材を中心につくられた紙は、

水にほどくと再び繊維へと戻っていきます。

そして、その繊維をもう一度漉くことで、

新しい紙へと生まれ変わることができます。

もちろん、実際の再生には

紙の加工や混ぜられた素材によって違いがあります。

ですが、日本の伝統的な手漉き和紙が持つ

「漉き返す」という知恵には、

これからの暮らしを考える大切なヒントがあるように思います。

自然からいただく。

大切に使う。

役目を終えたら、もう一度生かす。

新しいものを次々につくるだけではなく、

今あるもののいのちを、最後まで生かしていく。

それは、今でいう「循環型社会」という言葉が生まれる

ずっと前から、日本の暮らしの中にあった知恵でした。



未来の地球文明へ

今、地球では、限りある資源をどのように使い、

自然とどのように共に生きていくのかが問われています。

新しい技術も、もちろん大切です。

でも、ときには昔の暮らしに目を向けてみると、

そこには、未来へつながる知恵が静かに残されていることがあります。

自然からいただき、

大切に使い、

役目を終えたら、また循環の中へ還していく。

和紙は、昔の素材ではなく、

これからの地球の暮らしを考える

ヒントを持った素材なのかもしれません。

一枚の紙を、最後まで生かしきる。

「還魂紙」という美しい名前に触れながら、

そんな日本人の和の心を、未来へつないでいけたらと思います。^^


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