たまらなく愛おしいもの
窓から注ぐ日差しが、
そっと寄り添う午後。
私は深く、深く、息を吸った。
こんなにも愛おしい空気が、他にあるだろうか。
私の胸の上で眠る、小さなぬくもり。
そのぬくもりもさることながら、
そこから放たれる強烈な臭いが、
私の心を掴んで離さない。
今日はまた一段と濃厚だ。
汗なのか、ヨダレなのか。
生々しく訴えかける臭いの中毒性は恐ろしい。
私は何度も、何度も、息を吸う。
そのいつか消えてしまう記憶を、
脳裏に焼き付けるために。
(あとがき)
2歳6ヶ月になるダウン症の息子は、未だに赤ちゃん臭がプンプンします。こんなにも母性本能を惹きつけるものが、他にあるでしょうか。息子はとっくに卒乳しているのに、赤ちゃん臭とは何なのでしょう。4歳の娘の赤ちゃん臭はいつの間にかすっかりなくなってしまいました。
こんなにも長い間、赤ちゃん臭に包まれている日々を、幸せと言わずしてなんと言うのか。ダウン症だから、発達が心配だから、そんなことはどうでもいいと、息子の赤ちゃん臭が教えてくれます。いつまでもこの臭いに浸り続けたい。すっかり中毒の母です。
なにかいつもと違う感じで書いてみたくなりました。たまにはホッと一息、優しい気持ちになりたい。
