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肥満、それは立春の季語

これは体重95キロの女が、医療とお金と仕事とメンタルの間で揺れながら、脂肪と向き合う話。

肥満がニュースになる時代

文春オンラインの記事に195キログラムの漫才師のインタビューがあった。(記事はこちらから)
ママタルトの大鶴肥満氏だ。
全文引用すると面倒なのでかいつまむと
『注射式の糖尿病の薬を医師に勧められて、「それは病気の人が使うものだから」と拒否したら「お前がそうやろがい!」と言われた』みたいな記事。

5/5に配信された、全3部作で結構読み応えがあるインタビュー記事。大鶴肥満さんのフアンのTwitterユーザーが三部目を読んで「善意の心で断ってて草」みたいなことを引用してたため、目にした。

それを見るちょっと前から、私は私の体重に疑問を持っていた。

成人女性が、文化的に暮らすには95キロは多すぎる

疑問も何も、事実。つまりはそういうことである。ケツがデカく、太ももがデカく、はらがでかい。くびもなんか、赤ちゃんの腕みたいにむちっと横線が入り、そこに埃と汗がたまりこむ。
ローランドの前に新生児と私を並べたら、乳臭いか汗臭いかの二つに分けるだろう。汗臭い方が私。

ということで行ってきたよ。肥満外来。

以下、予約フォームに書いたことを記述していく。

太った理由を思いつく限り書いた。

  • 精神科に行って、〇〇を服用してから食欲が爆発して、一年で20キロふとった。

  • 〇〇を飲まなくなってからも食欲異常が止まらなくて、10キロ増えた。

  • 精神病罹患前から現在、30キログラム増えた!

  • 元は60キロほどだった。

痩せたい理由を思いつくままに書いた。

  • 生理が重いが、太ってたままだと婦人科治療ができないと言われた。

  • 立ち仕事をつづけたい。腰を一度痛めている。もう絶対あんな思いしたくない。

理由としてあげたのはこういう、必要条件なかんじだった。
なぜなら、美容痩身行ってくれと言われても金がないので。

  • 『入る服がない、あってもことごとく高いか、sheinとかいうことごとくペラいプラスサイズ服しかない』

  • 『骨格診断行きたいけど、美容の人に、肉ばっかで骨格ないじゃんて思われたくない』

  • 『着飾った友人の隣に相応しいアバターが欲しい』

とかは言わなかった。心よりも体、個人より社会の理由づけをしなければ、保険が適用されないと思ったから。まぁ、高度肥満な時点でこんな理由は必要なかったのだが。

初診は、いつでもどきどき

院内も綺麗なもので、受付のお姉さんたちも痩せてた。ほんとうに、綺麗!場違いじゃねえかなと髪をいじり、高度肥満が場違いになる肥満外来ってなんだ?!て思った。胸を張る。ジャージのジッパーがびっと音立てる。

焦燥感、肥満にマンジャロ、既視感

第一声は覚えてない。しかし、ヒョロ長くて邦画で天才ハッカーをしてそうな男性医師に事前問診で書いたことを確認された後、「マンジャロを検討してくれ」等を言われたことを覚えてる。
大鶴肥満より100キロ少ない私が、である。

どっちだ!!
いや明確に、肥満だろ。

せめぎ合ってた。BMI36.8 高度肥満だ。わかってる。マンジャロを打つのが手っ取り早いのはわかるが……。

Q、まずはコストの話

ーーマンジャロって続けなきゃダメですよね?何円かかりますか。

まずは聞いた。
大事なことだ。
「マンジャロ自体は糖尿病患者用の薬、糖尿病患者なら保険適応される。また大学病院だと糖尿病患者じゃなくても保険適応される」
私はクリニックの綺麗なパソコン画面を眺めた。
「マンジャロの値段は、クリニックごとに決めていいものとされている。自費で打つ場合、1万から2万が普通だが〜」
どこかのサイトを開いて表を表示する。mgごとに値段が変わり、初期ならこの値段と示したのが1万5000円からだった。5000円を切り落とすなダボと思いながら話を聞いていた。ただまぁ、クリニックごとに値段を決めるってのは聞いたことある話だった。精神科心療内科の診断書なんか特にそうだったから。

Q、何年続けたらいいか

およそ2万だとして、それを12ヶ月続けりゃ24万だ。それを、何年やるのか。なお私は衝動性が高く全然金を持ってない。貯金ない、家ない、賃貸暮らしのアルバイターである。
「まずはマンジャロが保険適応になるかどうか、糖尿病になってないかを調べましょう」
話をそらす、と言うよりかは、話したいなと思ったテンプレートを消費してからじゃないと話したくない、と言う意志を感じた。
医者は説明をしとかないと後々大変だからしかたがない。
「まずマンジャロか、もしくはゼップバウンドを打って食欲を落とした食生活をして、そのあとマンジャロなしでマンジャロ中の食生活を続けれたら痩せます」
で、そのためには医者の監修のもと、マンジャロをやめれるようになるまで通う。何年かかるかどうかは結局わかんなかった。私にも、先生にも。

Q、副作用はあるのか

「副作用が完全にない薬なんてないですよ。でしょう」
その言葉には深く頷いた。私の体重増加は薬が原因だったから。
「マンジャロは副作用でおかしくなっても保証がありません。でも、マンジャロは治験してあるから、安心していいです。ゼップバウンドは副作用でどうにかなっても国から保証が出るけど、ゼップバウンド自体が高いのでお勧めしません。ウゴービィという弱い薬もありますが…」
おい、聞いてないことを喋るな。不安要素を増やすな。なんだその話。

まずは試しに

試しに打ってみましょうと言うわけではなくて、
「糖尿病かどうかを血液検査で確認しましょう」と言われた。ふぅん。ヘモグロビンエーワンシーだっけ?と思いながら頷いて、そこで後悔した。
看護師がみんなみんな綺麗で若い女の人しかいなかった。ベテランがいないということである。

採血、針が私に4回刺さった。4回採血したわけじゃない。アンプルは一つ。私に穴は四つ。レンコンみたいになるかと思った。

2回目の診療。増える穴。

1度目の採血の結果を、聞きに行った。すると、肝臓だけがおかしくなっていた。腫瘍があるか、炎症を起こしているか、最悪の想定をして立ち回る姿は鬱の時の私みたいにみえた。
「女性なら〜〜の可能性も…」
聞き取れない早口に、うおwwとする間もなく、外部に血を検査してもらうため採血が決まった。
「肝臓に悪性腫瘍があったら別の大きな病院で外科をしなきゃダメだ」
だから、腫瘍ないかどうか、エコーで確認する。

そう言われて私は母の妊娠した時のお腹をアンパンマンのおもちゃのバーコードスキャナーでずっと弄ってたごっこ遊びを思い出した。
私って、肥満でエコー検査するんだ。子供産む時にお腹にするものがエコーだとばかり思ってた!

今の私に子を生む余裕なんぞないが。

エコー、わけいってもわけいっても白い何か。

エコー写真見ても何もわからんくないか?が第一印象である。なんなら、朝ごはんをしっかり食べてきたから特に。丸い妊娠28年ほどの腹が、ゼリーでてかてかになる。
「ここ、脾臓がデカくて、肝臓が脂肪肝」
いわれてみれば、そうかも。と思う程度で、エコー写真の見方なんて知らないからただ頷くだけだ。
頷いてるうちに、暗い個室でぬらぬらになった腹をティッシュで拭き取った。

どうなんよ。マンジャロ!

結局はどうなんだろう。マンジャロを打っていい基準値ではある。
しかし日本の法律的にはマンジャロを肥満の解消にはまだ使わせてない。
姉妹薬品のゼップバウンドは肥満も対象のため副作用が出た場合助成金?補助?らしいものが降りるが、マンジャロは違う。
マンジャロで痩せるのは心臓病の薬で勃起してるのと同じだ。インターネットの男女論から引用させていただいた。エッ!そうなの?バイアグラってそうなんだ!?でも保険適用なんすよね?不思議メカニズム。
使用後のデータが、何年後のやつも取れてないから、安全を保証できるとも限らない。
が、高度肥満であり続けることの方がよっぽど不健康だというのが見解である。

打つの?!打たないの?!

聞かれてはないが、通院3回目は、診察室で話せるのはそういう話ではあった。医者は一貫して、肥満外来でできる範囲を大幅に超えている。マンジャロをきっかけにするしか方法がないと結論づけていた。

私の決断ーー必殺!先延ばし

新薬というのは10年立っててもまあ不安がある。
とくに、メンタルクリニックに通ってる身からすれば「鬱になりやすいぞ〜」なんてまことしやかにネットで囁かれてるわけだから。

うちの職場はシフト制だ。年中無休に近いレストランだから、体調やメンタルをくずしてももそう易々と休めるわけじゃあない。
そこで!
「マンジャロ打つので毎週火曜におやすみくださぁい!副作用?まだうってないからわかりませぇん!」
と言えるかどうか。

ただでさえ、私の働く店では他人の食生活を聞き出した後、「www冷凍ブロッコリーwww素パスタwwwお土産たくさん持って帰れよぉ、かわいそうに!」と面白おかしく吹聴して回るオジサンがいるのだ。馬鹿正直にマンジャロのことをシフト担当に話したら、ぜったい、笑われながらへっぴり腰のスクワットをさせられるに決まっている。

そもそも、5月6月中にたくさん肥満外来に行ったけど、メンタルクリニックは月一回だけで、まだ来院してないし……。

一旦主治医さんと話してみて、それから決めようと思います。消え入りそうな声でそう言って、後にしました。
料金表も、一応でもらったけどちゃっかり二万円からにしてた。うーん。かんがえちゃう。

はじのろか。5/5〜6/16


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