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seraji
桃を、ひとつ煮るだけの夜 - コンポートと、白い器の上に咲く季節 -
こんにちは、ルーシーです。
八百屋さんの店先に桃が並びはじめました。ぽってりと熟したやわらかい果実をひとつだけ持ち帰って、夜に小さなコンポートをつくることにしました。
桃をきれいに洗ってぐるりと包丁を入れ、種に沿ってそっと半分にひらきます。果肉からふわっと甘い香りが立ちのぼった瞬間、もうそれだけで夜のキッチンが幸せになりました。皮ごと、ひたひたの水とお砂糖、それからレモンを少しだけ。それを小さな鍋でコトコトと、十分くらい煮るだけ。
ガスの火を弱火にすると、鍋のなかで桃の皮がすこしずつほどけて、ピンク色のシロップに変わっていきます。お台所が淡い桃色の香りで、ふんわりと満たされる時間。材料は4つしかないのに、こんなにも夜が豊かになる料理が世の中にはあるんですよね。
煮あがった桃の皮はつるりとひと撫でで脱げていきました。うすいピンク色のシロップに浸かったぷりんとした果肉を、白い小皿にそっと盛りつけます。シロップを上からとろりとかけて、冷蔵庫で冷やしておきます。
夜更けに冷たくなったコンポートをひとくち。鼻に抜ける香りは、果物そのもののはなやかさよりもすこし柔らかく、奥行きのある煮た桃の香り。スプーンでつぶれていく果肉の感触が、舌の上でもう季節そのものでした。
桃ひとつ、お砂糖、レモン、水。それだけで、いつもの夜がすこしだけお祝いのような夜になる。旬の果物ってそれだけで、いちばんの贅沢なんですよね。
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