オーバーツーリズム・少子化・外国人労働者──「日本文化ファースト」で考える共生のデザイン
近年の日本社会には、同時に進行している三つの大きな課題があります。
ひとつは、オーバーツーリズム。
外国人観光客がコロナ禍以前の水準を上回る勢いで戻ってきた中、観光地が過密化し、地域の暮らしやインフラに深刻な負担がかかっています。
ふたつ目は、少子高齢化による労働力不足と地方の衰退。
全国各地で働き手が足りず、サービス業も福祉も限界に近づいています。
そして三つ目が、外国人労働者との共生のあり方です。
人手不足を補う存在として期待される一方、制度も受け入れ意識も十分に整っていないのが現状です。
これら三つの課題は、それぞれ別個の問題に見えて、実は深くつながっています。
私は、制度設計次第で、三つの課題は互いに補完し合い、共に解決しうると考えています。
1. 人気観光地はもう限界──観光公害と人手不足
たとえば、京都。観光地として世界的に知られるこの街では、外国人観光客の回復と共に、地元住民の不満や疲弊も目立つようになりました。
観光バスが通学路をふさぐ
宿泊施設が民泊に転用され、家賃が高騰
文化財周辺では、マナー違反や騒音、ごみの問題も
それでも、観光業の現場には人手不足が深刻にのしかかっています。
清掃員が確保できないために部屋数を減らす旅館、フロントスタッフが足りずチェックインに長蛇の列ができるホテル──。
もはや「観光客を呼べば収益が増える」という単純な構造ではありません。
ここで不可欠なのが、外国人労働者の受け入れ強化です。
実際、ベトナムやネパール、フィリピンなどから来た若者たちが、すでに宿泊業の一部を支えています。
ただし、その多くは短期滞在の技能実習生や留学生アルバイトであり、長期的な人材育成や地域への定着にはつながりにくいのが課題です。
2. 地方都市には「空き」がある──人と制度を呼び込む仕組みを
一方で、日本には「人がいない」地域が無数にあります。
私は四国でお遍路をめぐったとき、また宮崎県の延岡市などを訪れたとき、こうした光景を繰り返し目にしました。
・昼間なのにシャッターが閉じた商店街
・草が生い茂る空き地に残る、閉鎖されたスーパーやホテルの廃屋
・高齢者ばかりの街角で、パチンコ店だけが活気づいている
日本人が減り続けるなか、これらの地域を「住める場所」「働ける場所」として再生するには、外部からの人材を受け入れる制度的な枠組みが不可欠です。
日本人が減り続けるなか、これらの地域を「住める場所」「働ける場所」として再生するには、外部からの人材を受け入れる制度的な枠組みが不可欠です。
とくに、観光業や福祉、飲食店やコンビニエンスストアといった産業は、すでに外国人なしでは回らない段階に入っています。
地方は地価が安く、生活コストも低く、住宅は余っている。
日本文化に関心を持ち、日本で働きたいと願う外国人にとって、実は理想的な「第二のふるさと」になるポテンシャルがあります。
3. 「日本文化ファースト」という視点で制度を見直す
外国人労働者を拡大すべきというと、「移民国家になってしまうのか」という懸念も聞こえてきます。
ですが私は、国籍ではなく文化への共感を軸にするべきだと考えています。
ここで提案したいのが、「日本文化ファースト」という視点です。
これは、「日本人が一番」という意味ではなく、
「日本のマナー・習慣・社会規範を理解し、尊重する意思を持つ人を歓迎する」という姿勢を制度の中心に置こうという考えです。
そのためには以下のような具体的な制度設計が必要です。
①国家間での協定とビザの戦略的緩和
技能実習制度のような一方的な枠組みではなく、文化的な親和性を持つ国と協定を結び、観光業や介護などの分野に就労ビザを緩和。
文化研修や語学学習の機会を含めることで、短期ではなく中長期的な共生の基盤を築きます。
②地方定住支援と自治体の役割強化
空き家の提供、低家賃住宅、保育所の優先利用、日本語教室の設置など、生活基盤を整える仕組みを自治体単位で展開。
地元住民との交流イベントやボランティア活動なども、共生のきっかけになります。
③法的ルールと秩序維持の明文化
共生には信頼が不可欠です。そのためにも、一定の犯罪(暴力、窃盗、薬物など)を犯した場合は「即退去」といった明確なルールを設け、治安への不安を払拭します。
④投資型の土地購入への制限
一部の中国人富裕層による別荘購入や土地投機が、日本各地で実態のない“空き資産”を増やしています。
観光地や地方都市の健全な住環境を守るためにも、不在所有への課税強化や規制の導入が必要です。
4. 三つの課題は、分けてはいけない
オーバーツーリズム、少子高齢化、外国人労働者──
これらの問題は、今の日本ではすべて同時に起きていることです。
それぞれ個別に対策を打っていても、根本的な解決には至りません。
むしろ、これらを統合的にとらえ、制度として結びつけることが、持続可能な社会への道になります。
たとえば:
地方に外国人労働者が住み着く
観光地の労働力が安定し、住民との摩擦が減る
地域経済が活性化し、空き家が再利用される
子育てや地域活動に参加することで、文化的にも根づく
このような「良い循環」をつくるためには、制度の設計者の側が三つの課題を同時に扱う視点を持つことが必要です。
おわりに──“日本文化ファースト”という希望のかたち
最近、「日本人ファースト」という言葉を選挙活動などで耳にするようになりました。その背景には、急速なグローバル化や社会の変化に対する不安もあるのだと思います。
けれども、これからの日本に必要なのは、国籍で線引きをすることではなく、文化の共感を軸にした共生の枠組みです。
つまり、「日本文化ファースト」。
日本のルールを守り、マナーを尊重し、地域に貢献する意思のある人々を、国籍に関係なく歓迎し、共に生きていく。
そうした制度と社会意識が整えば、外国人も日本社会にとってのかけがえのない一員となり得ます。
三つの課題を切り離さず、つなげて設計することで、日本の観光も、地域も、そして未来の労働力も、前向きに変えていけるはずです。
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