商工会の経営指導員⑮ 商店街を揺るがす最終攻撃【#創作大賞2025#お仕事小説部門】
三浦の協力を得た悠斗は、桜川商店街の再開発計画の詳細を調べ始めた。
資料を読み込んでいくと、次第に驚くべき事実が浮かび上がってきた。
「再開発計画の決定は、数年前に極秘裏に進められ、商店街の店舗オーナーには正式な通達がなされていなかった。土地を強制買収する計画まである……!」
「しかも、この計画書には特定の企業の名前が載ってる。『東海ディベロップメント』……!?」
「この会社、聞いたことないけど……?」
悠斗はすぐにネットで調べた。
「……こいつら、いわゆる"都市開発の名を借りた投資会社"だ!」
「土地を安く買い叩いて、ショッピングモールやオフィスビルを建て、地元商店を完全に消し去る……!」
秋山の顔がこわばった。
「つまり、私たちの商店街は、彼らにとって“邪魔”な存在だったってこと?」
悠斗は、書類を机に叩きつけた。
「そうだ! だからこそ、僕たちを追い出そうとしてるんだ!」
「放火や脅迫は、やつらの計画を邪魔されたくないから仕掛けたんだ……!」
「これを公にすれば、すべてひっくり返せる!」
しかし、三浦は腕を組みながら、深刻な顔で悠斗を諭すように口を開いた。
「これを発表するだけじゃダメだ。確実に証拠を押さえ、計画を完全に潰す手を打たなきゃならねぇ。しかも、やつらがこのまま黙ってるとも思えねぇ。」
一方、沈黙の中、巣を刺激された毒蜂のように、黒い影が静かに蠢き出していた。
深夜——
重たい金属が揺れるような音が、商店街の静寂を破いた。
松田屋のシャッターが、バールのようなものでこじ開けられていた。
完全に破壊されたわけではない。だが、無理やりこじ開けられた跡が生々しく残る。
ガラス戸の一部が割れ、破片が店内に散らばっていた。
誰かが侵入し、棚を乱し、商品を床にばらまいていった痕跡があった。
盗まれたものはなかった——むしろ、それが恐ろしかった。
奪うための侵入ではない。
それは、無言の宣戦布告だった。
整然と並んでいた空間が無造作に蹂躙された跡だけが、それを物語っていた。
翌朝。
警察による現場検証に、悠斗も立ち会っていた。
刑事の質問に応じながらも、胸の奥に言い知れぬざわつきが広がっていく。
「これは……ただの嫌がらせじゃない」
悠斗は低くつぶやいた。
「誰かが、僕たちの計画を、本気で潰しにかかってる……!」
そのとき——
「森田くん!」
秋山が走ってきた。顔色を失っている。
「どうしたんですか?」
「……市役所が、突然“耐震診断のため”って理由で、商店街の営業を一時停止するって通知してきた」
「……今、このタイミングで!?」
「そう。何の前触れもなく、急に。書面一枚で、来週から一斉に検査開始だって」
「こんなこと、……明らかにおかしい」
悠斗は、唇を噛みしめ、静かに拳を握り締めた。
抑えようのない怒りと、迫りくる理不尽な力の気配が、背後から忍び寄ってくるのを感じていた。
「森田くん、私に考えがあるわ。」
