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商工会の経営指導員⑪        ついに、桜川マルシェ開幕!【#創作大賞2025#お仕事小説部門】

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市役所の職員たちは、騒然とした現場を静かに見渡していた。

一時は中止命令も辞さない構えだったが——
三浦誠司が無言のまま立ち去ったことで、その空気は一変していた。

「……正式な許可はまだ下りていませんが、現時点で安全上の問題が確認されない限り、我々は静観することにします」

そう口にした担当者の目は、どこか敗北を認めるような揺らぎを見せていた。
職員たちは深くため息をつき、無言のまま会場を後にした。

「やった……!!」
秋山は思わず、こぼれ落ちる涙を袖でぬぐった。

隣で悠斗も、小さく拳を握りしめる。
そして——

「桜川マルシェ、開幕だ!!」
ついに響き渡った宣言の声。

その瞬間、商店街中に歓声が沸き起こった。
まるで空気が弾けるように、子どもたちの笑い声、店主たちの呼び込み、屋台の焼ける匂いと蒸気が一気にあたりを包み込む。

松田屋では、名物の特製おまんじゅうが次々と売れ、
「もっと買っておけばよかった!」と笑う客たちが列を作る。

その間をぬうように、航太が元気に走り回っていた。
「次のおまんじゅう、こっち持ってくねー!」
小さな体で蒸籠を抱え、汗をにじませながらも、どこか誇らしげな表情を浮かべていた。

田中八百屋の店先では、朝採れの野菜を買い求める人々が途切れることなく押し寄せ、
「おいおい、補充が追いつかねぇぞ!」と田中が汗だくで笑っていた。

その隣では、あかりが一生懸命に手伝っていた。
「きゅうりはこの箱だよ! トマトはここ!」と、子どもとは思えない手際のよさで並べ替え、客にも元気に挨拶を返している。

店主たちの顔には、久しぶりに見る活気と誇りが宿っていた。

「見てよ、あれ……!」
「ほんとに、商店街が生き返ってる……!」

秋山は涙をこらえながら笑い、悠斗は胸いっぱいにその光景を焼きつけた。

これが——俺たちの商店街の未来だ。
再び、人が集まり、笑い合い、支え合う。
かつて失われた時間が、ようやく取り戻されようとしていた。


だが——その希望の絶頂は、長くは続かなかった。


「おい、森田!!」

騒がしい人波の中、田中茂の怒鳴り声が突き刺さるように響いた。
ただならぬ気配に、悠斗はすぐに走り寄る。

「どうしたんですか!?」

田中は額に脂汗を浮かべながら、焦燥と怒りを隠せない顔で叫んだ。
「……倉庫が……! うちの店の裏の倉庫が、放火された!!」

「なっ……!?」

瞬間、悠斗の背筋を冷たい何かが這い上がる。
空気が凍りついたような静寂。
遠くで何かが爆ぜる音がした。

#創作大賞2025 #お仕事小説部門

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