古代文字「卜」甲骨文字.神託の文字.オラクル〜神と古代人とのQ&A〜

古代文字「卜」
獣骨や亀版を灼いて、そのひびわれによって、吉凶を卜う(うらな・う)ことをいう。卜はそのひびわれの形。
『字統』の「卜」の字源について白川静先生は、「「伝」に「卜は予ふるなり」という。卜するという行為は、神によって承認されることを期待するものであり、卜いの本質は、自己の行為について、神の承認をうることにある。占卜はいわばその手続きに過ぎない」と説かれています。
世界には様々な文字がありますが、それらの中でも漢字はユニークな文字です。どこがユニークかというと、一文字一文字に「形」と「音」と「意味」を持っている点。
漢字のもともとの起源は諸説あり、現代の文字に連なる系譜もいくつもあるようですが、私は一般的にいう「漢字のルーツの古代文字」を中心に作品にしています。
古代の文字学者の白川静先生によると、漢字の起源は殷王朝時代の甲骨文字。殷王朝は、紀元前1800年ごろから約二百数十年の間、黄河中流域に栄えていたと言われています。
殷代の遺跡「殷墟」は今では世界文化遺産に指定されています。
殷王朝では、王が政をするにあたって、"卜占(せんぼく)"によって神にその神意を問い、その吉凶によってものごとを決めていたようです。
当時はまだ原始的な農耕社会。
収穫のタイミングから隣村への出陣にいたるまであらゆることを卜う。この神とのQ&Aのような占卜に用いられていた特殊な文字が「甲骨文字」あるいは「甲骨文」です。
「甲骨文字」と呼ばれるのは、その卜いが、亀の腹甲や牛の肩骨の「甲骨」を用いて行われたことによります。
また、卜いに用いられた文字なので「卜辞」(ぼくじ)と呼ばれることもあります。さらに、神の意志をうけたということで「契文」とか「神託文字」とも表現されることもあります。「契文」の英訳、「オラクル」です。なんだかカッコいいですね。

©️Hoshi no Hikari
この殷王朝の卜いに用いられた文字や、その後の「金文」(青銅器に鋳込まれた文字)や「石文」(石に刻まれた文字)など、おおよそ古代の文字全般が「古代文字」と呼ばれています。
「古代文字」には、文字が意味する対象となるものをそのままリアルに!?象った「絵文字」のような字形の文字が多いのですが、これらは特に「象形文字」「図象文字」と呼ばれることもあります。
私は古代の文字の中でも「象形文字」「図象文字」が大好きです。「象形文字」「図象文字」には、森羅万象、自然や人を含む生き物などが多く、その文字が意味する存在の特徴が字形に強調されていたり、実際より可愛くなっていたり…3500年以上も昔の人々が残した文字を通して、原始的な古代の風景が垣間見れるような気がします。
