見出し画像

橋の上の友【風まかせ文芸部】

中学校から坂を下ると、橋がある。
あの頃、部活が終わると、亜希子と一緒に帰るのが私のルーティンだった。
そして、この橋は、私たちの“公式おしゃべりステーション”だ。
橋に着いたあと、私は川沿いを歩き、亜希子は橋を渡る。
あの時代、携帯なんてなかったから、ここで30分以上話さないと、家に着いた瞬間、誰とも会話できない呪いが発動する。

何を話していたのか思い出してみる。
クラスメイトの噂話、先生の悪口、親の愚痴、漫画の話――内容はくだらない。
でも橋の上では、私たちが世界を支配していた。
テレビの収録でもないのに、まるで一つのトーク番組のように。
もちろん笑い声は自前で、心の底から笑い、ストレスフリーで家に帰った。

今、こんなふうに無防備に話せる人はほとんどいない。
子育て中も、仕事中も、橋の上でキャッチボールするような笑いはできない。
でも橋の上の声は、今も胸の奥で残響している。
「橋、もう一本作ってくれよ」と心の中でつぶやきながら、今日も娘のためにママチャリで坂を下っていく。

いいなと思ったら応援しよう!