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『私は食べることが生き甲斐です😋』食事を通じて、もう一度“自分らしさ”を取り戻すまで【PTパパの心に残る利用者様#1】

🌱はじめに

『私は食べることが生き甲斐です』

『美味しい物を最後まで自分で食べたいです』

『また味噌汁が飲める日が来るなんて幸せです』

これは、これまで私がリハビリで関わった利用者さんから聞いた言葉です。

どの言葉にも共通しているのは、
**「食べることを大切にしたい」**という思い。

今度、NSママが職場で嚥下についての勉強会を開催することになりました。

NSママが嚥下の勉強をしている姿をそばで見ているうちに、私自身も、これまで嚥下に関わった印象的な利用者さんのことを思い出しました。

今回は、理学療法士として利用者さんの「食べたい」という思いを叶えるために、私がどのように関わり、そして悪戦苦闘したのか。

一人の利用者さんとのリハビリを通して、紹介していきたいと思います。

👵利用者さんについて

今回、私が関わった利用者さんを簡単に紹介します。

80代の女性。

パーキンソン病の既往がありました。

若い頃は会社を経営されていたそうで、とても芯の強い方。

誰に対しても丁寧に接してくださり、いつも周囲への気遣いを忘れない。

趣味はお茶や舞踊。

立ち振る舞いにも品があり、「素敵な方だな」と感じることが多くありました。

そして何より、リハビリに対してとても意欲的。

私たちが行うリハビリだけでなく、リハビリ以外の時間にも自主的にトレーニングに取り組まれていました。

「少しでも良くなりたい」

そんな思いが、日々の姿から伝わってくる方でした。

簡単に言いますと……

ものすごくいい人です。笑

🏥パーキンソン病について

ここで、簡単にパーキンソン病について説明します。

パーキンソン病は、脳内の神経伝達物質であるドーパミンが減少することで、身体の動きなどにさまざまな影響が出る病気です。

主な症状として、

・手足の震え
・身体のこわばり
・姿勢を保ちにくくなる
・動作がゆっくりになったり、動き始めにくくなったりする

などがあります。

また、身体の動きだけではありません。

表情が乏しくなったり、声が小さくなったり、話しにくくなったりすることもあります。

今回関わった利用者さんも、特に身体のこわばりが強く、思うように身体を動かしにくいという特徴がありました。

そのため、移動するときには歩行器が必要でした。

そして、もう一つ気になっていたのが「食事」です。

声が出しにくくなっていたことに加えて、嚥下に関わる動きにも影響がみられ、食事中にムセることが増えてきていました。

🙏ファーストコンタクト

その方を初めて担当することになりました。

80代とご高齢ではありましたが、認知機能はしっかりされており、とても芯のある方でした。

初めてお話ししたときから、

『少しでも身体を良くしたいです』

『パーキンソン病という病気との付き合い方を教えてください』

と話されました。

その前向きな姿勢には、私の方が圧倒されるくらいでした。

パーキンソン病という自分の病気をしっかり理解されている。

だからこそ、病気になる前の自分と、今の自分の身体とのギャップに、きっと大きな悩みを抱えているのではないか。

そんなことを感じました。

そして何より、この方は本当に真剣にリハビリに向き合ってくださる。

もちろん、私もいつも真剣にリハビリをしています。

でも、

「この人には、より一層全力で向き合わないといけない」

そう思わせてくれる利用者さんでした。

🍽️私は食べる事が大好きです

「リハビリとは?」と聞かれると、
専門職ではない方は「身体の機能を治すこと」を想像されるかもしれません。

もちろん、それもリハビリの大切な役割です。

でも、私はリハビリをするとき、

「その人が尊厳を取り戻し、再び自分らしく生きるために、理学療法士としてどう関わっていくか」

ということを大切にしています。

では、その方にとっての「自分らしさ」とは何なのか。

リハビリを続けていく中で、ふと本音が出る瞬間がありました。

『私は食べることが大好きで、仕事のモチベーションでした』

そう、ぽつりと話されたのです。

若い頃は会社を経営され、仕事をバリバリこなされていた方。

そんな方にとって、仕事を頑張る原動力の一つが「食べること」だった。

美味しいものを食べる。

それを楽しみに仕事を頑張る。

そんな当たり前だった日常が、病気によって少しずつ変わってきている。

そう考えると、この方にとっての一番の願いは、

「もう一度、自分の口で美味しいものを食べること」

なのではないかと思いました。

🌱尊厳を再び取り戻す

嚥下機能が低下していくと、食事の形態も少しずつ変わっていきます。

つまり、私たちが当たり前に食べている「食べ物の形」が、段々となくなっていくのです。

例えば白米。

ご飯

軟らかいご飯

お粥

お粥ゼリー

このように、嚥下の状態に合わせて形態が変わっていきます。

実際に私たちも試食をすることがあります。

最終段階のお粥ゼリーを食べてみると、

「これ、元はお米だったの?」

と思ってしまうくらい、普段食べているご飯とは別物に感じます。

副食も同じです。

嚥下の状態によっては、最終的にミキサーにかけて、どろどろの状態になります。

料理の形はほとんどなくなり、何を食べているのか、色で判断するような状態になることもあります。

その方が当時食べていたのは、

主食はお粥ゼリー。
副食はブロック状の食事。

食べることが大好きで、食事を楽しみにされていた方にとって、

「これが自分の食べたかった食事なのだろうか」

そう思ってしまうような状態でした。

もちろん、安全に食べるためには必要な食事形態です。

命を守るためには、とても大切なことです。

でも私は、そこで一つの疑問を持ちました。

「安全に食べられること」と「その人らしく食べられること」。

この2つを、なんとか両立できないだろうか。

食事をただ「栄養を摂るためのもの」にするのではなく、

もう一度、

「美味しいものを食べる楽しみ」を取り戻してもらえないだろうか。

そこから、私のリハビリが始まりました。

💪理学療法士として

まずは、食事をしているときの姿勢を細かく分析することから始めました。

・頚部の位置
・体幹の位置
・足底がしっかり床に接地しているか

など、一つひとつ確認していきます。

できるだけリラックスして、余計な力が入らない姿勢を一緒に探していきました。

次に、食事動作を評価しました。

・一回にすくう量は適切か
・飲み込みをしっかり行えているか
・食べるペースはどうか

などを確認し、できるだけムセを起こしにくい食べ方をお伝えしました。

そして、嚥下機能については、系列病院のST(言語聴覚士)に評価を依頼しました。

食事形態ごとに嚥下の状態などを確認していただき、現在の嚥下能力で、どのような形態なら安全に摂取できるのかを細かく評価していただきました。

一通り状態を把握したところで、次は嚥下機能や身体機能に対するアプローチを行うことにしました。

幸い、この方はとても勤勉で、リハビリに対する意欲も高い方でした。

そのため、リハビリの時間には、普段の生活の中でも実践できる方法を一つひとつ丁寧にお伝えしました。

また、リハビリの時間だけではなく、普段のケアにも目を向けました。

食事前には口腔体操を行うよう、他の職員にも協力してもらい、チームで取り組みました。

すると、少しずつではありますが、

食事中のムセが減ってきました。

そして毎月行っていたSTによる評価でも、少しずつ変化が見られるようになりました。

なんと、

食事形態を少しずつ、形のあるものへ戻していくことができたのです。

「お粥ゼリー」だった主食が、少しずつ変わっていく。

それは私たちにとって小さな変化でも、

「美味しいものを食べたい」

と願っていたこの方にとっては、とても大きな一歩でした。

🍚わたしは美味しい物が食べたいです

リハビリを始めてから、3ヶ月ほどが経ちました。

少しずつムセも減り、毎月のSTによる評価でも変化が見られるようになってきました。

そこで私は、STに思い切って相談しました。

『主食を軟らかいご飯にできませんか?』

『副食は、調理した形が分かるような刻み食でいけませんか?』

STの方は、とても悩みながら答えてくれました。

『嚥下機能としては、やはり今のところお粥とブロックが安全なのですが……』

それが、専門職としての評価でした。

安全に食べられることを考えれば、無理をすることはできません。

でも、

「もう一度、形のある美味しいものを食べたい」

という本人の思い。

そして、その思いをなんとか叶えてあげたいという私の気持ち。

何度も相談を重ねた結果、条件付きではありましたが、食事形態を変更する許可をいただくことができました。

主食は、軟らかいご飯。

副食は、料理の形が分かる刻み食。

誤嚥を防ぐために、餡をかけるなどの工夫も加えました。

STさん、本当にありがとうございました🥲

そして、新しい食事が始まりました。

久しぶりに目の前に並んだ、料理の形が分かる食事。

それを見た利用者さんは、涙を流されました。

そして、

『もう一度、形のあるご飯を食べることができて嬉しいです』

と話されました。

その言葉を聞いたとき、

「この人が取り戻したかったのは、食事の形だけではなかったんだ」

そんなことを感じました。

食べること。

それは、栄養を摂るためだけではありません。

楽しみであり、生きる喜びであり、
その人らしく生きるための大切な時間でもある。

その後も、嚥下訓練を毎日コツコツと続けました。

そして最終的には……

漬物まで食べられるようになりました。

ちなみに、その漬物は施設で育てたキュウリを使ったもの。

**塩昆布とごま油で和える、NSママのレシピです。**😂

まさか、NSママのレシピがここで登場するとは思いませんでした。笑

でも、この一皿を食べられるようになったことは、私にとっても、とても嬉しい出来事でした。

🌱あとがき

その利用者さんから、以前こんな言葉をいただいたことがあります。

『病気になって、できないことが増えたけど、リハビリを頑張って、一つ取り戻せたことが自信になりました』

その言葉を聞いたとき、私はとても嬉しくなりました。

食事をもう一度楽しめるようになったこと。

それは、単に「食事形態が変わった」ということだけではなかったのだと思います。

「自分もまだできる」

そんな自信につながったのではないでしょうか。

そして、その方は次の目標を教えてくれました。

『筋肉って貯金、つまり貯筋できるのですよ』

『私は100歳まで自分の足で歩きたいです。そのために、今から貯筋をしていきます』

そう言って、今でも毎日マシントレーニングに励まれています。

ちなみに……

毎朝5時に起床して、スクワットを30回されているそうです。

80代ですよ?😂

本当にすごい。

「この人、すごいな」

私は心から尊敬しています♪

今回のリハビリを通して、私自身も改めて感じました。

リハビリは、できなくなった機能をただ取り戻すだけではない。

その人が「自分らしく生きたい」と思える気持ちを、もう一度取り戻すこと。

そして、その先にある「やりたいこと」や「生きたい未来」を、一緒に考えていくこと。

それも、理学療法士として大切な仕事なのだと思います。

「美味しいものを食べたい」

そんな一言から始まった今回のリハビリ。

私にとっても、忘れられない大切な経験になりました。

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