一生懸命な世話人が、結果的に利用者を傷つける…グループホーム管理者のための世話人指導とマニュアル
グループホームの世話人を採用するとき、管理者なら一度は思ったことがあるはずです。
「なかなか、いい人が来ない」
障害福祉の仕事は、専門性の高い仕事です。
本来であれば、相応の知識や経験を持つ人材が担うべきものです。
しかし現実には、未経験者や他職種からの転職者にも門戸を開かなければ、人が集まりません。
資格や経験を問えば問うほど、応募は減っていく。
それがグループホームの世話人採用の実情です。
だからといって、支援の質を下げるわけにはいかない。
未経験であっても、他職種から来た人であっても、その人たちと一緒に、利用者の生活を支えていかなければならない。
そういった状況の中でも、一生懸命な人はいます。
利用者のことを真剣に考えて、誠実に仕事をしようとする人が、確かにいます。
しかし、そういった一生懸命な人が、陥りやすい“罠”があります。

よかれと思った、その判断が始まりだった
実例1 親目線のしつけ
知的障害のある若い利用者に対して、起きやすいパターンです。
そもそも、障害者グループホームを利用する方は、社会生活や家庭生活に困難を抱えているから、ここで暮らしています。
できないことがあったり、他者とうまくやれないことがあるのは、あって当然です。
しかし世話人は、利用者を見るうちに「この人のために何かしてあげたい」と感じ始めます。
食事の作法を教えたい、
生活習慣を整えてあげたい。
その気持ち自体は、自然なものです。
ところが気づけば、声かけは指導になり、指導はしつけになっていきます。
「それはダメ」
「ちゃんとしなさい」
いつのまにか世話人は、指導者であり、親になっている。
ここで立ち止まって考えてほしいのです。
グループホームは、彼らの住まいの場です。
指導や訓練の場ではない。
もしここが指導の場になってしまったら、彼らはいったいどこに逃げればいいのか。
自分の居場所を、どこに求めればいいのか。
住まいの場である以上、利用者には自分のペースで暮らす権利があります。
その権利を、善意が侵害している。
指導が行き過ぎた結果、利用者が逆上し、世話人への暴力事件に発展した例があります。
利用者の障害特性への無理解と、世話人の軽はずみな言動が重なった結果です。
世話人は被害者になりましたが、そこに至る過程に問題があったことは、否定できません。
実例2 友達感覚の付き合い
統合失調症が安定している利用者や、見た目に障害がわかりにくい利用者に対して、特に起きやすいパターンです。
「普通に話せる」
「冗談も通じる」
「一緒にいて楽しい」
世話人はそう感じて、自然と距離を縮めていきます。
友達のように接することが、その人への誠実さだと思い込む。
しかし考えてみてください。
精神疾患を抱える方の多くは、これまでの人生で人間関係がうまくいかなかった経験を持っています。
そんな中で、世話人が友達のように接してくれる。
利用者にとって、それは嬉しいことです。
だから、関係はどんどん深まっていきます。
問題はその先にあります。
多くの利用者は、こういった友達関係をこじらせてきた経緯を持つ方が少なくありません。
その関係の作り方のまま、世話人も同じ構造に入っていく。
まったく同じ構造で、利用者をまた傷つける結果になります。
距離が縮まると、世話人は事業者に無断で利用者と個人的な約束を交わすようになります。
「今度一緒に〇〇しよう」
「いつでも相談に乗るよ」
悪気はありません。
しかし、その約束が守られなかったとき、関係は一気に崩れます。
そのとき、世話人が言い出すことがあります。
「約束を守らない利用者が悪い」と。
本末転倒も、いいところです。
そもそも事業者の関与なしに、支援者が利用者と個人的な約束をすること自体が、越えてはならない一線です。
その先に、さらに深刻な事態が待っていることもあります。
こんな例があります。
関係が崩れた利用者が警察に通報する。
悪意のある嘘や誇張が含まれていても、通報者が障害者であることから事態は一気に大ごとになります。
世話人の軽はずみな行動が、取り返しのつかない結末を招く。
どちらも悲劇です。
実例3 特別な関係への発展、そして性的搾取という構造
実例2の延長線上にあります。
そして、これも相当多い。
馴れ合いの関係は、やがて特別な感情を生むことがあります。
支援者が利用者に、あるいは利用者が支援者に、恋愛感情を持つケースは、現場では珍しくありません。
実際に関係を持ってしまってから、利用者が警察に通報した事例があります。
事件にはなりませんでしたが、世話人は解雇に近い形での自主退職、利用者も自主退去という結末になっています。
双方にとって、取り返しのつかない事態です。
ここで、一段深く考えてほしいことがあります。
教師と教え子の恋愛が社会問題になるのは、教え子が未成年だからです。
しかし問題の本質は、年齢ではありません。
立場の非対称性です。一方が支援する側、もう一方が支援を受ける側。
この関係に、対等な同意など成立しません。
障害者グループホームにおける世話人と利用者の関係も、構造は同じです。
利用者の多くは、自己防衛が困難な社会的弱者です。
そういった方に対して、支援者という立場を持つ人間が関係を持つことは、立場を利用して相手の弱みに付け込んだ性的搾取という構造に見えかねません。
たとえ「誘われた」としても、です。
これは職業倫理の問題です。
医師が患者に手を出さないのと、同じ話です。
利用者に手を出すなど、支援者としてあり得ない。
この一線を、管理者は世話人に対して、明確に言葉で伝えなければなりません。
3つの実例に共通すること
3つの実例の根っこは、同じです。
障害への無理解と、不勉強。
非常勤パートとして働く世話人に、専門家と同等の知識を最初から求めるのは難しい。
それはわかっています。
でも、知識がないまま現場に入れば、人は自分の人生経験をもとに判断します。
「自分だったらこうされたい」
「こうするのが普通だ」
その自己判断が、支援の場に持ち込まれる。
悪意はない。
善意です。
よかれと思っている。
だから、厄介なのです。
一生懸命な人が、そういった罠に陥らずに仕事をしていけるようにするには、どうすればいいか。
今日はそのためのツールと方法を紹介します。
あわせて、どのホームでも転用が利き、初任者研修にも使える、世話人業務マニュアルをPDFで添付しています。
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