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障害者グループホームの収支シミュレーション、4棟目から収益化という幻想。

「グループホームは、4棟目から収益化できる。」

障害福祉の業界にいると、この言葉をよく耳にする。
開所支援コンサルのセミナー、参入を勧めるブログ、フランチャイズの説明会。
どこに行っても、似たような収支シミュレーションを見かける。

右肩上がりのグラフ。
棟数が増えるたびに膨らんでいく黒字の数字。
「管理者・サビ管の人件費は固定だから、棟数を増やせば増やすほど効率がいい。」
「さらに兼務を活用すれば、人件費をさらに抑制できる。」

聞いていると、なるほどと思ってしまう。

先日、知り合いの管理者から連絡があった。
「1棟だけじゃ、まったく採算が合わない。どうすればいいんだろう。」
その言葉を聞いて、僕はあのシミュレーションのことを思い浮かべる。

1棟目の赤字は、最初から織り込み済みのはずだった。
でも現実は、シミュレーション通りには進まない。

なぜか。
今日はこのあたりのことを、書いていこうと思う。

まず、よくあるシミュレーションを作ってみた。

※以下の数字はあくまで概算です。地域・物件・利用者の障害支援区分によって大きく異なります。

<前提条件>

  • 利用者1人あたりの月額報酬:約20万円(障害支援区分2〜4想定)

  • 管理者・サビ管の月額給与:各30万円

  • 世話人(夜勤):1回2万円×30日=月60万円 ・利用者の家賃

  • 食費・光熱水費は利用者負担のため収支はゼロとする

  • 1住居当たりの利用者数:5名とした。

  • 介護包括型を想定。

※サービス管理責任者1人が担当できる利用者は最大30名のため、6棟30名がひとつの上限の目安となる。

2棟目から黒字に転換し、6棟目には月180万円の黒字。
管理者・サビ管の人件費60万円は固定のまま、棟数が増えるほど効率が上がっていく。

さらに、管理者とサビ管は兼務が可能だ。
兼務にすれば人件費は60万円が30万円に圧縮される。
そうなると1棟目からの赤字幅も縮小し、黒字転換も早まる計算になる。

なるほど、確かにそう見える。
夢のある数字だ。

でも、この計算には穴だらけだ。

落とし穴① 満床前提という楽観、そして物件費用という重荷。

このシミュレーションは、最初から満床という前提で成り立っている。
現実には、開設から満床になるまで半年から1年かかることも珍しくない。
その間の赤字が、これには見えない。

空室が1人出るだけで、月20万円の売上が消える。
5名定員で2名空室なら、売上は100万円から60万円に落ちる。
人件費は変わらないまま、赤字は一気に膨らむ。

さらに見落とされがちなのが、物件費用の重さだ。
「利用者の家賃は利用者負担」というのは事実だが、それは入居者がいる場合の話だ。
空室期間中の家賃は、全額事業者の負担になる。
満床になるまでの半年〜1年、物件の家賃を払い続けながら赤字を垂れ流す。

1棟目が安定する前に2棟目を開設し、2棟目が安定する前に3棟目を開設する。
多棟展開を急ぐほど、この空室リスクが積み重なっていく。

落とし穴② 初期投資が抜けている

この安直なシミュレーションには初期投資が存在してない。

リフォーム費用だけで1棟あたり300〜400万円は最低限かかる。
・バリアフリー対応(段差解消・手すり設置)
・各居室のプライバシー確保のための間仕切り
・消防設備(後述)
・エアコン全室設置:50〜80万円

家具・家電・備品で50〜100万円。
敷金・礼金で家賃数ヶ月分。
開設準備の人件費・研修費で50万円。

1棟あたり500〜600万円の初期投資を、6棟分用意するとなると3,000万円超だ。
これを何年で回収するかという計算が、このシミュレーションでは見えない。

落とし穴③ 消防法という見えない罠。

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