たくさん泣いた、娘を先生はずっと見ていてくれた。
長女が幼稚園の年中、5歳くらいのころのお話です。
長女の担任の先生は、新卒とは思えないほどしっかりした先生でした。
アイドルのようにかわいらしく、園児のお父さんたちの間にもファンが多かった先生。でも、ただ優しいだけではありません。
子どもたちにも保護者にも、いけないことはいけないと、きちんと伝えてくれる先生でした。
やんちゃな男の子が悪さをすると、
「〇〇くん、トイレに流しちゃうよ!」
なんて、少しびっくりするような言葉が飛び出すことも。
優しい雰囲気のお母さんたちの間では、
「少し厳しすぎるんじゃない?」
そんな話が出ることもありました。
でも私は、子どもたちのことをよく見て、必要なことはしっかり伝えてくれる先生なのだと思っていました。
保護者面談で伝えられたこと
ある日の保護者面談。
先生は、長女の良いところをいくつか話してくれたあと、少し困っていることも教えてくれました。
長女は、お友達と追いかけっこをしていて捕まると、機嫌が悪くなって泣いてしまうことがありました。
そして、一度泣いてしまうと、そのあとは気持ちを切り替えられず、お友達と遊べなくなってしまう。
先生は、そのことをきちんと伝えてくれました。
私は家に帰ってから長女と話しました。
「捕まったからって泣いてしまうと、そのあと、お友達と遊べなくなっちゃうよ」
「追いかけっこは、捕まることも遊びの一つなんだよ」
「捕まることも、一緒に楽しめたらいいね」
すぐに変わったわけではありません。
でも、先生がきちんと伝えてくれたことで、長女も少しずつ理解していきました。
時間はかかりましたが、その後は追いかけっこも、お友達と一緒に楽しめるようになりました。
先生が、良いところだけではなく、長女に必要なことをきちんと伝えてくれたこと。
あのとき、しっかり話してもらえてよかったと思っています。
楽しんでいたダンスサークル
長女は年少のころから、近所の公民館で活動しているダンスサークルに入っていました。
お友達の紹介がきっかけでした。
長女には、少し怖がりなところや、マイペースなところがありました。
幼稚園以外にもお友達をつくれる場所があったらいいな。
もともと、「お母さんと一緒」のような踊りを、お友達と踊ることが好きだったので、楽しんでくれたらいいな。
そんな思いで入会しました。
まだ年少でしたが、長女はダンスをとても楽しんでいました。
一つ上の学年のお姉さんたちと一緒に踊ったり、おしゃべりをしたり。
毎週のレッスンを楽しみにしていたのです。
ところが、発表会が近づくと、保護者のお母さんたちの雰囲気が一変しました。
それまで和やかだった空気が、急にピリッとしたのです。
サークルのほとんどの子は長女より一つ上の学年で、入会した時期も一年以上早い子たちでした。
長女はダンスの移動になると、いつも同じところで迷ってしまいました。
「次は、どこに移動するんだろう?」
分からなくなって立ち止まったり、泣いてしまったりするのです。
家でも何度も動画を見ながら練習しました。
長女と一緒に、何度も何度も確認しました。
それでも、家で練習するのと、みんなと一緒に踊るレッスンでは違ったようで、なかなかうまくできませんでした。
「このままじゃ困る!」
ある日、ダンスサークルの“裏ボス”のようなお母さんに呼び止められました。
長女も、私の隣にいました。
「〇〇ちゃん、このままじゃだめだよ」
「ちゃんとしてもらわないと、こちらが困る」
そう言われました。
長女も、その場の空気や、自分のことを言われていることが分かったのでしょう。
その日は、たくさん泣きました。
もう、続けるのは無理かな。
そう思うくらい泣いていました。
私は、長女に楽しんでほしくて、このサークルに入れました。
こんなに泣いてまで、続ける必要があるのだろうか。
公民館で活動している、気軽に参加できるダンスサークルです。
そこまで真剣にならなければいけないのだろうか。
長女のことを思うと悲しくなり、あんな言い方をしたお母さんに腹も立ちました。
私は講師の先生に、
「発表会には参加せず、辞める方向で考えたいです」
と話しました。
すると先生は、こう言ってくれました。
「ここは本格的なダンススクールではなく、公民館でやっている趣味の会です」
「まだ幼稚園生です」
「間違えても、途中で泣いてしまっても、それは見ている人にとって、かわいい出来事ですよ」
「だから、そう言わずに、発表会に参加してみてほしいです」
先生がそう言ってくれるなら。
そう思い、長女の気持ちも確認して、もう少し続けてみることにしました。
自分なりの方法を見つけた長女
とはいえ、あんなに泣いたあとです。
発表会までに、長女は大丈夫だろうか。
心配しながら見守っていました。
すると長女は、自分なりの方法を見つけていました。
移動するときに、自分がついていくお友達のすぐそばにぴったりくっつく。
その子を見失わないように、出番前の待機時間にも、ずっとその子の姿を目で追っていました。
「この子についていけばいい」
長女なりに考え、工夫していたのだと思います。
そして迎えた発表会。
長女は、一度も立ち止まることなく、泣くこともなく、最後まで踊りきることができました。
私たち夫婦は、本当に驚きました。
あんなに泣いて、私たちの話も耳に入らないほどだったのに。
よく気持ちを立て直したね。
自分で方法を見つけて、最後まで頑張ったね。
それまで私たちが気づいていなかった、長女のすごいところ。
長女の「根性」のようなものを見た気がしました。
「これは、親しか知らない、この子のすごいところなのかもしれない」
私は、そんなふうに思いました。
先生は、気づいていてくれた
でも、最初にお話しした、年中のときの担任の先生は違いました。
先生は、私たちが驚いた長女の一面に、気づいていてくれたのです。
その年にいただいた先生からの年賀状には、こんな言葉が書かれていました。
「〇〇ちゃんは、たくさん泣く。
でも、たくさん泣いてから、もっと頑張れる!
そんな〇〇ちゃんを応援してるよ」
その言葉を読んだとき、主人と私は驚きました。
私たち親しか知らないと思っていた長女の一面を、先生はちゃんと見ていてくれた。
たくさん泣くことだけではなく、そのあとに、もっと頑張れるところまで見てくれていた。
先生は、長女の困っているところを、きちんと伝えてくれました。
そして、長女の良いところや、強いところも、しっかり見つけてくれていました。
子どものことを毎日見てくれている先生は、親がまだ気づいていない一面を知っていることがあるのかもしれません。
たくさん泣いて、たくさん悩んで。
それでも、自分なりの方法を見つけて、もう一度頑張る。
あのころの長女の根性は、今も健在です。
そして、長女のそんな一面に気づき、応援してくれた先生に、素晴らしい先生に担任をしていただけたことを、今でも感謝しています。
